毎月火曜日に東京・下北沢BASEMENTBARで開催されているライブイベント『月刊キャノンボール』。注目のアーティストが一堂に会し、それぞれの現在地を鮮烈なライブで刻む同イベントの8月25日公演には、akailull、z²、Nemurimachi、夜と私のことが出演した。
心に残るメロディーを響かせるバンド、甘さと鋭さを併せ持つソロアーティスト、日常に寄り添うようなポップサウンド、そしてフロアの温度を一気に引き上げるライブパフォーマンス。個性の異なる4組がつないだステージは、観客一人ひとりの感情を揺らしながら、下北沢の夜を濃密に彩っていった。
■akailull

ライブの幕を開けたのは、時(Vo)、kousei(Dr)、Yugo Ozaki(Gu)の3人により構成されるロックバンド、akailull。今年の4月から活動を開始し、早くも洗練されたサウンドを響かせている。
一曲目、「Skycrawl」のドラムとギターが織りなすエモーショナルな音色によって会場を包み、感傷的な空気で満たしたあと、続く「Hallelujah」では明るいサウンドで一転、「トップバッター、akailullです。よろしく!」という笑顔の挨拶とともに、さらに場を引き込んだ。
新曲「幸福天国団地」では、時がステージ上をダイナミックに動き回り、間奏中も観客の視線を離さない。「最初からクライマックスでいく」と力強く語ったいっぽう、「これ夢かな? 夢じゃないな」と感極まる場面も見せた。
翌日にリリースを控えていた新曲「lenda」では、言葉一つひとつに感情を込め、丁寧に歌い上げる。ラストの「Innocent」では観客にマイクを向け、ともに歌声を重ねた。曲の終わりには、フロアとともに拳を突き上げる。目の前で繰り広げられたのは、センチメンタルさと力強さが交差する、青春の一場面のようなステージだった。
▼セットリスト
M1.Skycrawl
M2.Halleluiah
M3.幸福天国団地
M4.花を添えて
M5.lenda
M6.Innocent
■z²
続いて、ピンクのライトに照らされて登場したのはz²。ボーカルと作詞作曲をこなし、英語も流暢に喋ることができる、インターネットでも人気が高いソロアーティストだ。キュートなイントロと少女のような歌声で「O₂」が始まると、空間は一気に甘いムードへと変化した。じっとステージを見つめる人、力いっぱい歌声を重ねる人。その反応からは、彼女を熱心に支持するファンの存在が伝わってくる。
「レッツゴー!」と可愛らしく呼びかけ、客席に手を振る姿はアイドルのようだが、全楽曲に一貫して床を震わせるほどの重低音が、ステージに“キュート”より“クール”な輪郭を与えていたのが印象的だった。
「人前で歌う理由は変わっていく。最初は苦しさをバネにしていたけど、今は誰かに共感してほしい」「誰かひとりでも分かってくれたら」と、歌うことへの思いを語ったz²。その言葉に真剣に耳を傾けるファンの表情を見ていると、彼女の音楽を受け取る人は、すでにこの場所に確かにいるのだと感じさせられた。最後の「4H」を終えると、z²は「ありがとう」と深々と頭を下げる。ステージを去るその瞬間まで、ファンは手を振り続けていた。
▼セットリスト
M1.O₂
M2.村人S
M3.Day×dream
M4.来世
M5.瞬きの時
M6.クリスタルゾンビ
M7.一生終わらない夢を見てて
M8.未練は天使
M9.4H
■Nemurimachi
バンド名にふさわしい青い光に包まれ、軽快に登場したNemurimachi。たてべ なお(Vo)、コミナミ(Gu)、Hack-Key(Ba)からなる3人組ユニットであり、粋なMVと共に多くの楽曲を発表している彼らは、現在SNSでも注目を集めている。「Amefuri Tokyo」「ドライブ・マイ・マイン」とテンポの良いナンバーを続け、早くもフロアの空気をつかんでいく。MCでは、たてべ なおが少し緊張した様子を見せながらも、「まだまだ楽しんでいきましょー!」と明るく呼びかけた。
「たしか、夏」は、乾いた質感のピアノイントロからスタート。観客は一斉に手拍子を重ね、体全体でリズムを受け止めていた。思わず手を打ちたくなるような楽曲の数々に、フロアのあちこちで自然と身体が揺れる。
メンバー全員が作曲を手がけ、毎月新曲を発表しているNemurimachi。この日も新曲「空がどうとか」を披露した。きめ細かな音の粒で組み立てられた演奏と伸びやかな歌声に、客席には思わず笑顔がこぼれる。一曲ごとに丁寧に「ありがとう」を届けながら、最後は人気曲「降る星のアスター」へ。複雑なメロディーを鮮やかに歌い上げ、ステージを締めくくった。
▼セットリスト
M1.Amefuri Tokyo
M2.ドライブ・マイ・マイン
M3.ホシノモノリス
M4.たしか、夏
M5.Night Shift
M6.空がどうとか
M7.降る星のアスター
■夜と私のこと

最後を飾ったのは、夜と私のこと。繊細な高音からラップまで歌い上げるSheimi(Vo)と、卓越した音楽センスを持つK4nji(P)による、日韓音楽ユニットだ。堂々と登場したふたりを前に、すでに高まっていたフロアの熱気は「革命前夜」の始まりとともに最高潮へと達した。赤いライトが空間を染め上げるなか、「いける? 全然聞こえない!」と煽るSheimiからは、圧倒的な“主人公感”が放たれていた。
「ナードエンドヒーロー」では客席にモッシュが起こり、ステージからダイブする観客も現れるほどの熱狂に。フロアの隅々まで手が上がり、誰もがライブの一部になっていた。続く「長い夜」「クラーケン」で一度熱を落ち着かせると、「ドリームイズマイン」で再び興奮を呼び起こす。「天井突き破れる?」という呼びかけに応えるように、ほぼ全員が一斉にジャンプした。
MCでは共演者へのリスペクトを示しながら、「『月刊キャノンボール』で、BASEMENTBARで、そしてみんなの前でよかった」と語ったSheimi。最後はバンド名を冠した「夜と私のこと」を届け、ステージは幕を閉じたかに思われた。しかし、熱の冷めないフロアからアンコールの声が上がり、再び「ナードエンドヒーロー」を披露。夜の終わりにふさわしい、盛大なクライマックスとなった。
▼セットリスト
M1.革命前夜
M2.ナードエンドヒーロー
M3.長い夜
M4.クラーケン
M5.ドリームイズマイン
M6.心臓
M7.夜と私のこと
4組がそれぞれ異なる色で会場を照らした『月刊キャノンボール』。楽曲に耳を澄ませる瞬間も、拳を突き上げ、跳びはねる瞬間も、そこには出演者と観客が同じ時間をつくり上げるライブハウスならではの熱があった。
新しい楽曲や言葉、そして出会いが生まれ続ける下北沢BASEMENTBAR。次の『月刊キャノンボール』では、どんな景色が待っているのだろうか。
■イベント情報
『月刊キャノンボール vol.87』
2026年9月29日(火)
@下北沢BASEMENTBAR
OPEN/START 18:30/19:00
一般 ¥2,000+1D
学生 ¥1,000+1D
出演:human doll、Honma Kana、Nanach、WOos、Ayumu Nimura
※チケットの取り置きは各出演者までお願いします。
TEXT BY 梅山麗未
PHOTO BY 石川雄斗

