7coが10月16日に東京・渋谷WWWにて初ワンマンライブ『7co 1st ONEMAN LIVE “夢中人”』を開催した。
■ステージを彩っていたのは、芦田菜名子のハンドメイドによる装飾
独創的なポップネスを感じさせるサウンド、何気ない日常に彩りを与えてくれる歌詞、楽曲の世界観を際立たせる映像、そして、ステージとフロアの心地よい繋がりを生み出す、自然体でエモーショナルなボーカル。初めてのワンマンライブで7coは、アーティストとしてのスタイルを的確かつ奔放に表現してみせた。
ボーカル・芦田菜名子と音楽プロデューサー・RYUJAによる音楽プロジェクト、7co。ヒップホップ、R&Bなどの幅広い要素をカラフルなポップミュージックに結びつける音楽性、共感性の高い歌詞と表現力豊かなボーカルで注目を集め、2025年にはSpotify「RADAR: Early Noise 2025」に選出。さらに楽曲「0.0000%」が中国QQ Music J-POP週間チャートで1位を獲得し、韓国でのイベントに出演するなど海外へ活動の幅を拡大してきた。
2026年には「Shazam Fast Forward 2026」に国内唯一のアーティストとして選出。今夏には配信シングル「猫じゃらし」でメジャーデビューを果たし、『SUMMER SONIC 2026』に出演するなど、加速度的に注目度を高めている。
渋谷WWWで開催された初ワンマンのタイトルは『7co 1st ONEMAN LIVE “夢中人”』。ステージを彩っていたのは、芦田菜名子のハンドメイドによる装飾。“夢中人の本体が舞台に埋まっている”というコンセプトのもと、ステージの奥には夢中人の触覚が見えている。大きなスクリーンには“夢中人”のアイコンが映し出され、しっかりと世界観を作り出していた。
そして「いつからだろう。なにかに夢中になることが少しだけ難しくなったのは」という言葉が聴こえてくる。ただひとつのことに心を奪われ、夢中になることを忘れかけていた世界に“夢中人”は現れた。ライブのテーマに繋がるアナウンスが行われたのち、サポートのDJとギタリストがステージに上がり、SE的なサウンドを鳴らす。さらに芦田が登場し、大きな拍手が巻き起こる。
3人でインストを奏で(芦田はPCを操作)、「東京の皆さん、楽しんでいけますか? Clap!」という呼びかけとともに1曲目の「ZIDANDA」へ。リズミックなフロウと切ないメロディが響き合い、“地団駄ダンス踊る”“よりどりみどりの幸せ掴みましょう”というフレーズが放たれると、幅広い年齢層の観客が気持ちよさそうに揺れ始める。スクリーンには心臓をモチーフにした映像が投影されている。
片想いソング「さつきちゃん」では、リリックビデオが映し出される。イントロが始まった瞬間に歓声が起きた「Yellow.」でも歌詞をデザインしたムービーが投影され、“はいはいハイHigh灰になって”というラインに合わせてオーディエンスが腕を上げる。映像と楽曲が生み出すケミストリー、DJ×ギター×歌によるアンサンブルを軸にライブは進行していく。
この日の最初のピークは「何の曲が始まるかわかりますよね?」という言葉に導かれた「0.0000%」。“彼”がバイト先の女とイチャイチャしてて、私が風邪をひいたときも飲みに行ってしまう。なのでこちらから別れを切り出したら、なぜか彼がヨリを戻そうとしてきてウザい…というストーリーを軽快なビートとともに描き出していく。「一緒に歌ってください“ヘンタイ”!」「ヘンタイ!」のコール&レスポンスもめちゃくちゃ楽しい。
心地よいR&Bグルーヴとともに“なかなかうまいこといかない人生だけど、君と一緒ならたぶんイージーモード”という歌が広がった「piece of cake」を披露したあと、最初のMC。
「人生初のワンマンライブです。こんなにたくさんの人たちと一緒に楽しい時間を過ごせるなんて本当に光栄です。ありがとうございます!」と少し照れたように話しかける。さらに「素敵な夜を一緒に作っていきましょう!」という言葉から「恋愛後遺症」へ。軽やかなギターカッティングと“いつからだろう 私じゃないのなんでよ”というラインが響き、フロアからはハンドクラップが自然発生。最後のサビではシンガロングが起こり、ナチュラルな一体感を演出してみせた。
ここからは7coの色彩豊かな音楽世界を体感できるタームへ。蝶々をモチーフにした映像としなやかなビート、イヤなことがあり過ぎる日々を丸ごと肯定するようなリリックがひとつになった「Beautiful Days」。8ビット風のムービー、和的なエキゾチズムをたたえたトラックによって観客のダンス欲を引き上げた「WABISABI」(APPLE PIE Remix)、そして、夜の都会をシューティングした映像とともに披露された人気曲「Lonely night」では、孤独を抱えながら“それでも踊っていたい”という欲望を映し出す。
リリックの内容はとても現実的で、ときにシリアスな感情が滲むのだが、洗練されたトラックとメロディによってほどよく中和され、耳心地の良さと中毒性を併せ持ったポップミュージックとして機能する。7coの音楽的なスタンスをダイレクトに体感できたことも、このライブの大きな収穫。「今日はちょっと懐かしめの曲もやってるんですけど、みんなが歌ってくれてるのがすごくうれしいです」と感慨深そうに語る芦田の表情も心に残った。
「大切だった人が急にいなくなったときに作った曲です」と紹介されたのは、「soup」。圧倒的な悲しみと喪失感のなかで、“冷めない距離でいて…”と願うこの曲から伝わってきたのは、彼女の歌の素晴らしさ。言葉とグルーヴを結びつけながら、歌詞に込めたストーリーや感情をしっかりと伝えるボーカルこそが7coの軸なのだと改めて実感することができた。
台湾のシンガー・王ADENをフィーチャーした「ちょうどいい(feels just right)feat. 王ADEN」は、7co流のラブバラード。“コミュニケーションLike 坂元裕二”というパンチライン、芦田が自ら監督したMVの映像を含め、7coのセンスが存分に発揮された楽曲と言えるだろう。
別れた恋人と“君が嫌いなトマト”を重ねた「TOMATO」、ライブ初披露となる最新曲「sayonara radio feat. Oceanfromtheblue」からライブは後半へ。
■本編ラストの「真夏のパンクリアス」では大合唱が
スーツが似合う“貴方”のことを探してしまう、危うくてラブリーな恋心を綴った「貴方観測日和」はシンプルな4つ打ちをベースにしたダンスチューン。「クラップ足りない!」という煽りによって、オーディエンスがさらに強く手を叩き、体を揺らし始める。さらに“貴方とアタシ/似たもの同士だから”というアカペラから始まり、観客の歓声を引き出した「あっちゅうま」から本編ラストの「真夏のパンクリアス」へ。
別れた恋人に向けた思いを極上のダンストラックへと昇華したこの曲によって、ライブはクライマックスへと向かう。“パンクリアス(us)”の大合唱は、この日のライブの充実ぶりをはっきりと証明していた。
鳴り止まない手拍子と歓声に導かれ、芦田とサポートメンバーが再びステージへ。
「私は口下手で、目を合わせるのも下手なんですけど、伝わってたらいいなと思います。今日は本当にありがとう!」というMCから始まったアンコールの1曲目は「Unmellow」。憂いを帯びたメロディと滑らかなグルーヴが共鳴し、シックで切ないムードを生み出す。耳心地の良さと凛とした感情を併せ持ったボーカルがとにかく気持ちいい。
続いては初のアニメタイアップ曲(TVアニメ『正反対な君と僕』2期オープニングテーマ)にしてメジャーデビューシングル「猫じゃらし」。7coのポップセンスが炸裂した楽曲によって、会場全体がナチュラルな高揚感で包み込まれた。
ラストは代表曲のひとつ「stay tune」。ソフィスティケイトされたトラックとともに放たれる“いいんだよ 泣いていいんだよ/生きんの難しいだろ”というラインに胸を掴まれ、曲中で放たれた「東京、最高だったよ。ありがとう!」という感謝の言葉が飛び込んでくる。音楽によって気分を共有し、ちょっとだけポジティブなムーブを呼び込む。この効果もまた、7coのライブの魅力なのだろう。
何かに夢中になることで、シリアスな日常は少しずつ色づき、いつか花を咲かせるはず。この日のライブ全体に流れていたのは、そんな切実なメッセージだった。それはもちろん7coの音楽的スタイルとも繋がっているし、さらに言えば、ポップミュージック本来の役割そのものだと思う。
TEXT BY 森朋之
PHOTO BY 船津晃一朗
■【画像】初ワンマンライブ『7co 1st ONEMAN LIVE “夢中人”』の様子
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