作詞作曲・編曲・歌唱・トラックメイク・ドラム演奏までこなす、2024年に始動したソロプロジェクトアーティスト・FUJIBASEが『kand production Night vol.2』に登場。1stフルアルバム『新東京市音頭』のデジタルリリース(※発売日は7月16日)直前、リリースに先駆けて楽曲を披露する場となった本ステージはまさに圧倒的だった。
■FUJIBASE(フジベース)とは?
FUJIBASEの存在を知ったきっかけは、楽曲「NEON TOKYO」だった。
まず聴こえてくるのは、エフェクトされたボーカルによる“暗がりの中 見えない世界 ずっと探した気がした”というフレーズ。さらに厚みのあるベースラインと強靭なキック、憂いと解放感を同時に感じさせてくれるメロディラインが加わり、一気に楽曲の世界に誘われた。サウンドメイクやソングライティングの素晴らしさはもちろんだが、何よりもその歌声に魅了されてしまった。
2003年生まれの男性アーティストによるソロプロジェクト、FUJIBASE。2024年に活動をスタートさせ、サブスクに公開した“Demo Sketch”(ラフなデモ音源)によって早耳の音楽リスナーの注目を集めた。まったくのノンプロモーションながら「NEON TOKYO」はSpotifyで10万以上の再生を記録。海外のプレイリスターからの反応も上々だという。
そんななか1stフルアルバム『新東京市音頭』のデジタルリリースを控えるFUJIBASEが、リリースに先駆けて登場したのが『kand production Night vol.2』である。
■“『新東京市音頭』リリース前夜祭”のような気持ちで臨んだステージ
20時40分にスタートしたライブは「NEON TOKYO」から始まり、3人のミュージシャン(ドラム、ベース、ギター)とともに登場したFUJIBASEが声を発した瞬間、会場の雰囲気が一変。豊かな声量と鋭利なグルーヴを兼ね備えたボーカリゼーションによって、瞬く間にその場を掌握してみせた。スケール感と近未来的なイメージをもたらすバンドサウンドも気持ちいい。
「7月16日に1stアルバムが出るんですけど、今日はリリースの前夜祭みたいなところもあって。お祭りなんで、皆さん好きなように騒いでいってください!」という言葉通り、この日のセットリストはすべてアルバム『新東京市音頭』の収録曲で構成。
まずは「Plastic Humanity」。強靭にしてしなやかなバウンドサウンド、尖った手触りと心地よい解放感を併せ持ったボーカルが響き合い、観客のテンションをさらに引き上げていく。
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ヘビィロック直系のベースライン、シャープなギターフレーズ、激しいシャウトを交えた歌声がぶつかり合う「COPY and PASTE」ではハンドマイクに持ち替え、まるで楽曲そのものをぶつけるようなパフォーマンスを披露。「みんな、飛べる?」と煽ると、観客は一斉にジャンプ。ライブ活動をはじめてまだ間もないはずだが、一体感を生み出すセンスは既にかなりのレベルだ。
そして「talking to myself」へ。シンプルに抑制された8ビートのベース&ドラムからはじまり、徐々に高揚感を増していく。
@fujibase_jp “talking to myself” 作曲しました!感想聞かせて!🎧️ #デモ音源公開 #新曲制作中 #シンガーソングライター #FUJIBASE#citypop
激情を抑え、淡々と紡がれるリリックは曲名通り、“自分に話しかける”姿を映し出す。そこで歌われているのは、創作という名の孤独。ライブにおいても、自らの感情を刻んだ歌詞を真っ直ぐに届けたい──そんな思いがはっきりと伝わってきた。
■「僕は音楽をぶつけるためにやってます。音楽に救われた人間だから」
「普段、デモ(音源)ばかり出してるからさ。2月に初めてシングル出して、今3曲出てて、アルバムのリリースも決まってて。めっちゃアーティストっぽくなってるなって実感してます。でも、こんなもんじゃないんで。FUJIBASE、これからどんどん突き進んでいくんで、ついてきてください」
決意表明にも似たMCを挟み、ライブは早くも後半へ。1stシングル「smoke and mirrors」は、静寂と高揚のコントラストが際立つナンバー。オーディエンスはさらに激しく身体を揺らし、手を挙げながらステージに向かってパワーを返す。そこにあったのは音楽を介した純粋なコミュニケーションだ。
煌びやかなシンセのリフ、ドープなベースライン、推進力に溢れたドラム、軽快なギターカッティングが一つになった「GAME OVER」では、FUJIBASEの優れたポップネスを体感することができた。ダンスミュージックとしての機能を備えているのも、この楽曲の大きな魅力だろう。さらにエキゾチックな音像と旋律が印象的なアッパーチューン「Freedom」へ。濃密なエモーションを放つボーカルがとにかく強烈。歌詞のテーマは、自由という名の束縛。“Let’s keep dancing like we might just get there(訳:あの場所にたどり着けるように踊り続けよう)”というラインとともに踊りまくるオーディエンスの姿も強く心に残った。
「今日ここに来てくれた人たちはわかると思うけど、僕は音楽をぶつけるためにやってます。音楽に救われた人間だから。こうやってみんなに届けられることがめちゃくちゃ嬉しいし、まだまだここから、リリースして、ライブもやってバンバン活動していって。FUJIBASEは未来しかないアーティストだと思っています」と語りかけた後、「FUJIBASEの活動の始まりの曲」と紹介された「NEON TOKYO」を再びプレイ。オープニングを遥かに上回る興奮のなか、ライブは終了した。
約35分のステージだったが、そのインパクトは鮮烈。もちろん粗削りなところもあるが、“多彩な楽曲のパワーをダイレクトに伝える”“その場所、その瞬間にしかない興奮を生み出す”という点において、本当に魅力的なライブだったと思う。音と歌を直接ぶつけるようなパフォーマンス、そこに込められたエネジーにも心を打たれた。トレンドやマーケティングではなく、彼自身の内側にあるものを音楽という形にして、それを直接届ける。そんな真っ当な姿勢もまた、FUJIBASEの求心力につながっているのだろう。
アルバム『新東京市音頭』によって、FUJIBASEの音楽はさらに幅広いリスナーに届くはず。ここからはじまるストーリーを多くの音楽ファンとともに共有したいと思う。
TEXT BY 森朋之
PHOTO BY 木下航
■セットリスト
『kand production Night vol.2』
2025年7月11日@Spotify O-nest
【FUJIBASE】
01.NEON TOKYO
02.Plastic Humanity
03.COPY and PASTE
04.Talking to myself
05.smoke and mirrors
06.GAME OVER
07.Freedom
08.NEON TOKYO
■リリース情報
2025.07.16 ON SALE
ALBUM『新東京市音頭』


