■応援アンバサダー・乃木坂46の賀喜遥香と井上和が開会宣言
未来を担う若者たちによる“夢の祭典”が今年も行われた。10代アーティスト限定の音楽イベント『マイナビ 閃光ライオット2025 produced by SCHOOL OF LOCK!』が、Zepp DiverCity(Tokyo)にて8月7日に開催。司会進行は『SCHOOL OF LOCK!』のこもり校長こと小森隼(GENERATIONS)とアンジー教頭ことアンジェリーナ1/3のふたりが担当。さらにファイナル審査のスペシャルサポーターにも豪華メンツが顔を揃えた。OKAMOTO’Sのオカモトショウ、オカモトレイジ、シンガーソングライターのアイナ・ジ・エンド、GLIM SPANKYの松尾レミ、亀本寛貴、シンガーソングライターのsyudou、グランジ 遠山大輔(『SCHOOL OF LOCK!』元校長)の7人が務めた。それだけではない。今年の応援アンバサダーには乃木坂46の賀喜遥香と井上和が抜擢され、ふたりによる開会宣言にて幕を開けた。
■自由な音楽性、予想外の曲展開で観客を魅了しためっちゃ美人
さあ、応募総数3129組から勝ち抜いたファイナリスト9組の演奏がここから始まる。トップバッターは東京発オリジナルスタイルミクスチャーバンド、めっちゃ美人が登場。鍵盤、ベース、ドラムというギターレス編成でピアノ色の強いバンドかと思いきや、そこに収まり切れない自由な音楽性で観客の度肝を抜く。1曲目は声量あふれる声を響かせた後、「W.H.A.T」でスタート。シティポップ調のオシャレな演奏から徐々にテンションを上げ、アッパーに攻め立てる予想外の曲展開でフロアを翻弄。続くバラード「miss you」では裏声を活かしたソウルフルな歌声で魅了する。
1曲1曲ベクトルの違う曲調で楽しませてくれる彼ら。その究極の飛び道具ナンバーがラスト曲「まれびと」であった。和太鼓と横笛を用い、これまでのR&B/ソウルの文脈を逸脱した和的要素に面食らった人がほとんどではないだろうか。しかも人間椅子の「品川心中」のように落語調の語りパートを入れたりと、奇抜なアイデアを昇華した曲調に驚かされるばかり。ジャンルの振れ幅はもちろん、エンタメ性に優れたユニークな曲調で観客を沸かせた。演奏後、OKAMOTO’Sのオカモトショウは「自分たちも出場した当時、10代じゃないみたいって言われてましたが、その頃の俺たち以上に10代じゃないみたいなバイブスを持っている」とコメント。
■英語詞のエモーショナルロックで初期衝動を表現したCultboi
2組目のCultboi(カルトボーイ)は、女性ハイトーン・ボーカルを看板にした大阪発の4人組。オープニングは重松清の小説から引用した「疾走」で火蓋を切る。全編英語を貫いたエモーショナルロックで、まさに初期衝動炸裂の激走ぶり。それから一転、ポップな表情で迫る「呼吸の輪郭」へ。グルーヴィーなベース、ささくれ立ったギター、軽快なドラムといい、各プレイヤーの演奏にも耳を奪われる。その中でキャッチーなメロディを歌い上げる歌声も実に魅力的だった。
「このバンドを組んだのも閃光ライオットに出るためで、音楽をやって来れたのも閃光ライオットのおかげです」と告げ、「b612」をプレイ。静かな始まりからバンド・サウンドへと切り替わり、感情がグチャグチャになった歌声には嘘偽りないピュアな波動がビシビシと伝わってきた。演奏後、GLIM SPANKYの松尾レミは「4人の信じているものが一緒なんだなとストレートに感じました」とコメント。
■“等身大”で飾らない歌詞がオーディエンスに響いたハッピーセット
強烈な個性を叩きつけるふた組を終え、長野発のロックバンド、ハッピーセットが3組目として登場。現在は長野と東京引越し組と別れ、遠距離バンドというスタンスで活動している。初っ端の「記憶」から耳に突き刺さるハイトーン・ボイスを武器に、ギターはきめ細かなフレーズで曲調をカラフルに彩る。「決意表明」に入ると、「行けるか、閃光ライオット!」とフロアを煽る場面もあり、物怖じしない肝の座り具合で堂々たるステージを展開。
「遂にZeppのステージに立つことができました。去年、閃光ライオット3次審査で敗れて、この1年いろんなことがあり、バンドもギクシャクして…何を伝えたいのかわからなくなって。自分で選んだ道があなたにとって正しい道」とMCを挟み、「マージナル・マン」をプレイ。等身大の自分を受け入れるという歌詞が音に説得力をもたらし、強いメッセージとして観客にも届いたはずだ。演奏後、OKAMOTO’Sのオカモトレイジは「青春してるなあ」とコメント。
■13歳の衒いも背伸びもない思いを真っ直ぐ届けた中村旭
4組目は片平里菜のライブ映像を見て、小学3年生からギターを始めたという中村旭(ナカムラアサヒ)がアコギ一本でステージに立つ。彼女は岩手県宮古市出身の13歳(中学2年生)で、今回のファイナリスト9組の中で唯一のシンガーソングライターである。1曲目「フィクション」から歌声に惹きつけられた。衒いも背伸びもない、本心から汲み上げたような歌の重みに会場は静かな感動に包まれる。
「自分はキラキラしている人を見るのが怖くて。誰かの言いなりにならないと何もできない自分が嫌になって」と語ったあと、行き場のない思いを託した「あなたのせい」をプレイ。“もう何も分からないよ 全てあなたの優しさのせいだよ”と揺らぐ感情をまっすぐ歌い上げる。最後は「ステージの上では正直でいられる」というMCを挟み、思わず涙ぐんでしまう彼女。その流れから「私の歌」を披露。“あなたの歌を あなたの等身大の歌を/すぐそばで聴かせてよ/泣いてるだけじゃわからないから”と歌うパートには胸を激しく突かれる思いだった。演奏後、遠山大輔は「圧巻でした。心で思っていることがそのまま直結して現れている時間だったんだなと感激しました」とコメント。
前半4組を終え、ここでボカロステージの表彰式へ。10代のボカロP、242組の中からグランプリに選ばれたのは奏(カナデ)。事前に電話で受賞は伝えられており、今日のステージに本人も登場。受賞曲「Sch6ss」が会場で流れるや、観客が拍手してノッている光景に本人もひどく感動している様子だった。
■表情豊かな歌と動静の起伏激しいステージングで会場を揺らしたPRE
ここから後半戦に突入する。5組目は生活の隙間に隠れた心の機微を掬い上げる青柳創太のソロプロジェクトPREが、今回はPRE(with my friends)と銘打ったバンド編成でライブを行う。「八月の電車」が始まると、テンポチェンジで表情豊かに聴かせながら、大らかな歌心で観客の心を掴んでいく。ミドルテンポの「空中」に繋ぐと、メリハリの効いたバンド・サウンドが気持ちよく、フロアの熱気は上昇する一方だ。
「残り1曲ですが、みんなと踊りたいんですよ、言いたいのはそれくらい。みんなで楽しく体を揺らそう!」と呼びかけ、「さよならを云わせて」へ。骨太のベースが響く中、観客から自然発生的にハンドクラップが起き、その場で体を揺らす観客が増えていく。バンド・サウンドも後半になるにつれて激しさを増し、会場は俄然ヒートアップ!動静の起伏激しいステージングで観る者を焚き付ける渾身のパフォーマンスを魅せつけた。演奏後、GLIM SPANKYの亀本寛貴は「90年代後半の下北沢のような感じが、今すごく新鮮」とコメント。
■予定調和をぶち壊す破格のショーに耳目を奪われっぱなしの愛情ク裸部
高校の部活で“露出したくてしょうがない漢たち”が集まり、結成されたのが愛情ク裸部だ。6組目として出てきた彼らは、一度観たら忘れられないインパクトで観客を釘付けにする。「最低で最高の時間にしましょう!」と叫び、「チャック」でスタート。
演奏が始まると、歌詞に合わせて紙芝居まで披露する。そんな凝った演出とメンバー5人が上半身裸というコントラストが妙におかしい。フザけているのか、本気なのか。中途半端は寒いけれど、全身全霊のおフザけは大歓迎である。
「次の曲は世界中のお姉さんに!」と前置きし、「お姉さん」を披露。ド直球の歌詞に笑ってしまうが、本気の熱量がそれを凌駕する。好き嫌いは分かれそうだが、有無を言わせないエンタメパワーに圧倒されてしまう。ラストは「モテたい」で締め、ステージ最前にメンバー5人が並んで歌う場面もあり、予定調和をぶち壊す破格のショーに耳目を奪われっぱなしであった。演奏後、syudouは「もう最高でした!感想とか聴きながらまとめていたけど、途中で放棄して見てしまいました!」とコメント。
■爆発力と大きなスケール感で観客を包み込んだインタールード
7組目はリベンジに燃える大阪発のインタールードが、昨年に続き2年連続で出場。筆者は前回のライブも観たが、現場叩き上げの実力の高さは本物である。今日、このステージにかけるメンバーの気持ちを想像するだけで武者震いする。「応援してくれた人に恩返しをしたい。一番星になったところを見てほしい!」という力強い宣言とともに「sparkle」で演奏開始。1曲目からありったけのエモーションを叩きつけ、その勢いのまま「素直」をプレイ。全パートがスクラムを組み、一枚岩となって体当たりしてくる演奏力はさすがである。
「1年ぶりに帰って来ました。投票で選ばれた最後のひと組なんです。誰もひとりにしないと証明しに来ました!」と熱く語りかけ、「光であるように」を演奏。“ここでくらい泣いたっていいよ”、“あなたの光であるように”と聴き手に寄り添う歌詞を震えるような声で全力で歌う。その爆発力はこれまでになく大きなスケール感で観客を包み込んでいた。演奏後、遠山大輔は「ロック正面突破!という時間でした」とコメント。
■収拾のつかない感情と危機迫る歌声、情念迸るサウンドに引き込まれた物品販売
仙台発エキゾチックポップバンドの異名を取る、物品販売が8組目に登場。「タム責任」で幕を開け、手数の多いドラムに耳を奪われ、感情迸るロックチューンに観客もざわつく。それから「非・家族」に移ると、スラップ・ベースが火を噴き、ノリのいいサウンドで観客を揺さぶった。
「人がいちばん最初に忘れやすいのは声らしいんですよ。僕はこの声を残せる音楽が大好きです。残せるってずっと永遠を祈るみたいで…音楽や歌は消えないです、誰かが覚えている限り。僕の歌を今ここにいる誰かひとりでも覚えてくれたら。僕にとっての永遠を祈った曲です」と伝え、「アンチロック」をプレイ。収拾のつかない感情をそのまま吐き捨てる歌声は危機迫るものがあり、怒りや嘆きをガソリンにした情念迸るサウンドに心底シビれてしまった。演奏後、松尾レミは「ロックバンドのヒリヒリした危うさを持っている」とコメント。
■脳裏に映像が浮かんでくる哀切なメロディと美しい音色のAKAMONE
トリを飾る9組目は大阪豊中発のセンチメンタルギターロックバンド、AKAMONE。野元純太(Gt / Vo)がゆっくり歌い始め、「通り雨」からこのバンドならではの空気を瞬時に作り上げる。曲を聴いているだけで脳裏に映像が浮かんでくるようだ。バラード風の「本音を言えば」に進むと、男性ボーカルだけではなく、リズム隊ふたりの女性コーラスも加わり、哀切なメロディをさらに強化。ずっとこの音色に浸りたい、と思わせる美しさをアピールし続けた。
「悲しい歌で、寂しい歌で…だけど、この曲を歌っているとき、胸のいちばん深いところ、ちょっとだけ温かくなって。あなたにとってもそんなものでありますように」と告げ、「寂しくなるな」を披露。童謡に通じる親しみやすい歌メロは訴求力が高く、一語一音に気持ちを込めた演奏に会場から熱い拍手が起きていた。演奏後、アイナ・ジ・エンドは「声を楽器にしているような、冷静と情熱の間でいるのがプロで圧巻です!」とコメント。
■ゲストライブはUNISON SQUARE GARDEN
ファイナリスト9組のライブを終えると、ゲストライブの時間へ。「昼から9パターンの命がけをくらって僕も胸がいっぱいなんですけど、大の大人が一生懸命ライブをやるのを見ていただく時間です!」と挨拶し、UNISON SQUARE GARDENのショーが始まる。「傍若のカリスマ」から鉄壁のアンサンブルを突きつけ、観客は興奮のるつぼと化す。「オリオンをなぞる」、「場違いハミングバード」、「カオスが極まる」と続けた後、自身もバンドの大会に出場して2回戦で敗退した過去を告白。さらに「音楽に順位を付けるのはナンセンスだと思ってます、この場で言うのはごめんなさいだけど。自分たちだけの大事な音楽を、大事に歌い続けてくれたら。次は僕たちが19歳の時に作った曲を久しぶりにやります」と説明し、「箱庭ロックショー」をプレイ。会場が沸き上がる中、ラストは「シュガーソングとビターステップ」で鮮やかなフィニッシュを決める。
■グランプリ獲得のめっちゃ美人、ウィニングライブとして「cider」を披露
残すは審査結果を待つのみだ。異様な緊張感に包まれる中、「マイナビ Yell Song賞」はAKAMONEの「寂しくなるな」、加えて、どうしても表彰したいアーティストがいるということで急遽作られた「スペシャルサポーター特別賞」には中村旭が受賞。そして、『マイナビ 閃光ライオット2025』の栄えあるグランプリは1組目に演奏しためっちゃ美人が獲得!「UNISON SQUARE GARDENの後にやるのはやばいです」と言ったあと、ウィニングライブとして彼らは「cider」をこの場にいる観客と喜びを分かち合うように披露。「歌って!」とシンガロングを促し、ピースフルな一体感を作り上げ、グランプリ受賞者らしいパフォーマンスで場を完全掌握した。
今年のファイナリスト9組は誰もが個性的かつ実力派と言って過言ではないアーティストばかりが揃った。その中でめっちゃ美人が応募総数3129組の中から選ばれたのは、それなりの理由があるに違いない。演奏力はもちろんのこと、ジャンルに縛られない多彩なアプローチと耳目を引く奇抜なアイデアを盛り込み、多くの人たちの印象に深く残ったのではないだろうか。これからの飛躍に期待せずにはいられない。
TEXT BY 荒金良介
『マイナビ 閃光ライオット2025』
2025年8月7日 Zepp DiverCity(Tokyo)
セットリスト
めっちゃ美人
1.W.H.A.T
2.miss you
3.まれびと
Cultboi
1.疾走
2.呼吸の輪郭
3.b612
ハッピーセット
1.記憶
2.決意表明
3.マージナル・マン
中村旭
1.フィクション
2.あなたのせい
3.私の歌
PRE
1.八月の電車
2.空中
3.さよならを云わせて
愛情ク裸部
1.チャック
2.お姉さん
3.モテたい
インタールード
1.sparkle
2.素直
3.光であるように
物品販売
1.タム責任
2.非・家族
3.アンチロック
AKAMONE
1.通り雨
2.本音を言えば
3.寂しくなるな
<GUEST LIVE>
UNION SQUARE GARDEN
1. 傍若のカリスマ
2. オリオンをなぞる
3. 場違いハミングバード
4. カオスが極まる
5. 箱庭ロックショー
6. シュガーソングとビターステップ
『マイナビ 閃光ライオット 2025 produced by SCHOOL OF LOCK!』公式サイト
https://www.tfm.co.jp/lock/riot
































