■作家活動20周年を記念し、アニプレックス作品とコラボレーションした初ライブ
9月23日、澤野弘之の作曲家活動20周年を記念したライブ『澤野弘之 20th Anniversary Concert×Aniplex』が東京国際フォーラム ホールAで開催された。オーケストラとバンドを従えたスタイルのライブはこれまでも行われてきたが、今回は澤野がキャリアの中で劇伴を手がけてきたアニプレックス作品とのコラボレーションライブとなっていたのが最大の特徴。ライブ中には演出としてアニメ作品の映像が贅沢に盛り込まれることで、より没入感のあるめくるめくステージが展開されることとなった。
■ボーカルをフィーチャーした楽曲を積極的に劇伴に用いる作曲家・澤野弘之の大きな個性
ゲストシンガーであるLaco(EOW)によるオペラのようなボーカリゼーションとオーケストラの演奏が重なり合って幕を開けたライブ。盛大な拍手に導かれて澤野弘之がステージに現れ、深々とお辞儀をした後、ピアノの前に座るとTVアニメ『青の祓魔師』の「eXORCiST」から『青の祓魔師 劇場版』の「Battle Scars」の流れへ。雄大なオーケストレーションと力強いバンドサウンドが融合するサウンドはまさにオープニングに相応しいインパクトを与えると同時に、ボーカルをフィーチャーした楽曲を積極的に劇伴に用いるという作曲家・澤野弘之の大きな個性をまずしっかりとアピールする。その後、同じく「青の祓魔師」からインストの「U & Cloud」を披露すると、澤野が会場を埋め尽くしたオーディエンスに向けて最初の挨拶を届ける。
「お越しいただき、ありがとうございます。あっという間に作家活動20周年なんですけど、そんなタイミングでアニプレックス作品をフィーチャーする形でコラボできることを本当にうれしく、光栄に思っています。さすがに今日はアニプレックスという看板を背負っているので、僕のMCがひとつ一つの作品を台無しにするわけにはいかないので(笑)、ここからは音楽をバーッと通してお送りしていきたいと思っていますので、楽しんでいただけたらと」
■インスト曲を織り交ぜながら、個性の異なるゲストシンガーたちが次々と登場
澤野の言葉通り、以降は多彩なアニメ作品を彩ってきた名曲たちが次々と演奏される怒涛の展開になだれ込んでいく。「ギルティクラウン」の挿入歌「βισζ」でSennaRinが存在感のある歌声を響かせたかと思えば、感動的なミディアムナンバー「Release My Soul」ではAimee Blackschlegerが温かなボーカルで会場を包み込む。mizuki(UNIDOTS)は「キルラキル」の「Blumenkranz」と、澤野のピアノで始まった『アルドノア・ゼロ』の「aLIEz」を連続で表情豊かに歌唱。Aimee Blackschlegerによる「No differences」では、観客たちのクラップが楽曲に色を添える。インスト曲を織り交ぜながら、個性の異なるゲストシンガーたちが次々と登場し、景色をガラッと変貌させていくのが最高にスリリングで楽しい。TVアニメ『七つの大罪』の「Perfect Time」ではmpiとLacoによる男女ツインボーカルが会場を揺さぶる。オーケストラを有する編成ながら、バンドメインのサウンドに振り切ったTVアニメ『甲鉄城のカバネリ』の「Through My Blood」では、Elianaによる魂の叫びが聴き手の胸を撃ち抜く。TV人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』の「thunderBOLTfantasy」では、Benjaminとmpiの男性シンガーふたりが力強いボーカルで空間を心地よく支配していく。
LacoによるTVアニメ『86-エイティシックス-』の「THE ANSWER」では、アッパーなサウンドに合わせて会場が揺れ、クラップが鳴り渡る。映画『プロメア』の「ΛSHES」、そして『群青のファンファーレ』の「Roads to Ride」では、XAIが登場。アニメ作品の世界観、サウンドに寄り添うように剛柔使い分けた豊かな表現力を見せつけていく。TVアニメ『俺だけレベルアップな件』の「DARK ARIA」では同じくXAIが荘厳で伸びやかな歌声を響かせ、「REVIVƎЯ」では澤野の繊細なピアノタッチとSennaRinの切なげなボーカルが溶け合っていく。そのままSennaRinはアニメ『TO BE HERO X』の「KONTINUUM」に突入し、大興奮の渦を巻き起こしていった。
Benjaminのアグレッシブなラップが炸裂した『Fate/strange Fake』の「BITE DOWN」でクライマックスにふさわしい盛り上がりを巻き起こした後、澤野が最後にマイクを握る。
「ありがとうございます。あっという間に次の曲が最後になります。今日こうやって演奏してきて、あらためて様々な作品を通して有意義な音楽制作をやってこれたんだなと思います。関係者の皆さんに感謝しています。同時にその作品を通して僕の音楽を知ってくれた皆さん、そして今日このライブにお越しいただいている皆さんに心から感謝しています」
■本編ラストナンバーは、まだ音源化されていない「FsF-sABer」~「red」を披露
ラストナンバーとして選ばれたのは『Fate/strange Fake』から、まだ音源化されていない「FsF-sABer」~「red」。その雄大で感動的なメロディにLacoの歌声が折り重なることで生まれる感動に包まれながら、ライブはエンディングを迎えた。割れんばかりの拍手が巻き起こる中、スクリーンにこの日のセットリストや参加ミュージシャンたちのクレジットが流れていく。その映像が終わると…再びステージに澤野をはじめとする面々と、シンガーのRei(Newspeak)が登場。正真正銘のラストナンバーとして『TO BE HERO X』オープニングテーマとなる「INERTIA」が熱唱された。そんな粋なサプライズを仕掛けてくるのも実に澤野らしいところ。最大の興奮とハッピーなムードに満ちたまま、20周年の節目を祝う一夜は幕を閉じた。
■澤野弘之という才能がここから辿っていく未来を鮮やかに照らしたライブ
アニメ作品と劇伴が相互に絡み合うことで生まれる圧倒的なカタルシス。そこに豪華な生演奏と歌唱、そして照明効果が加わることで描き出されたこの日の光景はまさにライブだからこそ実現し得たもの。それは同時に澤野弘之という才能がここから辿っていく未来を鮮やかに照らしていたようにも思う。アニプレックス作品とともに辿った20年分の軌跡を胸に、澤野はここからも第一線を走り続けていってくれるはずだ。
TEXT BY もりひでゆき
PHOTO BY 西槇太一
澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex
2025年9月23日 東京国際フォーラム ホールA
セットリスト
澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex セットリスト
Information
『澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex』有料配信
9月23日(火・祝)に開催された『澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex』の有料配信がStagecrowdにて10月20日(月)に配信
【視聴チケット購入】
https://stagecrowd.live/SawanoHiroyuki_20th-Anniversary/
販売期間 2025年9月23日(火)19:00~2025年10月27日(月)20:00まで
澤野弘之 Official Site
https://www.sawanohiroyuki.com/








