THE F1RST TIMES

COLUMN

2022.05.25

幾田りらが一瞬のきらめきを刻む『THE FIRST TAKE』。想いを手渡すような絶品の「スパークル」

TEXT BY 森朋之

■繊細な感情の移り変わりをリアルに感じさせる歌

『THE FIRST TAKE』第218回には、シンガーソングライターであり、YOASOBIのボーカルikuraとしても活躍している幾田りらが登場。純粋で切ない片想いをテーマにした「スパークル」を今回だけのオリジナルアレンジで披露した。

YOASOBIのボーカリストとして瞬く間に知名度を高めたikuraこと幾田りらは、YOASOBI結成以前からシンガーソングライターとして活動していた。幼少期をアメリカで過ごした彼女は、音楽好きの両親の影響でディズニー音楽などに触れていたという。帰国後、テイラー・スウィフトを好きになったことをきっかけに、歌、ギター、曲作りを始め(最初のオリジナル曲は、小学校6年生のとき、友達のために書いたという)、自らのキャリアを歩み出した。

YOASOBIがブレイクしたあとも、ソロ活動を継続。Netflix映画『フェイフェイと月の冒険』の日本語版エンド・クレジット・ソング「ロケット・トゥ・ザ・ムーン〜信じた世界へ〜」や、『THE FIRST TAKE』でのパフォーマンスも話題となった“milet×Aimer×幾田りら”名義の「おもかげ(produced by Vaundy)」の歌唱、さらに自作曲「ヒカリ」「Answer」「ロマンスの約束」のリリースなど、活動の幅を大きく広げてきた。

また、現在放送中のドラマ『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』(TBS)主題歌「レンズ」の切なくて愛らしい歌声からも、シンガーソングライターとしての彼女の資質の高さを感じ取ってもらえるだろう。

今回の『THE FIRST TAKE』で披露された「スパークル」は、幾田りらがABEMAオリジナル恋愛番組『今日、好きになりました。蜜柑編』の主題歌として書き下ろした楽曲。“片想いの一瞬の煌めきを愛せる瞬間がありますように”という願いを込めて作られたミディアムチューンだ。

青いチャイニーズ風の衣装をまとった彼女は、両手を胸に置き、目を閉じたままフーッと深く息を吐き出す。「お願いします」という声を合図にピアノが鳴り、“煌めいて消えてった/ひとひらの恋の結末は”というフレーズによって、楽曲の世界観を生々しく描き出していく。一瞬で聴く者を惹きつけ、歌詞に込めた想い──片想いの切なさ、美しさ、儚さ、そして、きらめきを手渡すようなボーカルはまさに絶品。歌にグッと入り込む集中力、表情と手の動きによって、“好き”というピュアな想いを感じさせるパフォーマンスも印象的だ。

歌の感情がピークに達したのは、“君が好き それだけが/嘘のない私の気持ちで”というライン。口元を映し出す映像と生々しいエモーションを響かせる声が重なる瞬間は、間違いなく、今回のパフォーマンスのハイライトだったと思う。彼女のボーカルの機微を的確に捉え、ドラマチックな音像へと導くバンドサウンドも素晴らしい。

歌い終わった際、少しホッとしたような表情を浮かべた幾田りら。プレミア公開直後から、「言葉ひとつひとつがキラキラしていてほんとに素敵。頭の中に歌詞を散りばめられているようで本当に心地がいい」「一発録りでの表情が『歌を歌いに来る』だけじゃなくて、これまでのりらちゃんの人生観を全てぶつけにきた感じが伝わってすっごいかっこよかった」といった感動のコメントが数多く寄せられた。

以前、インタビューした際に彼女は「YOASOBIが非日常だとすれば、幾田りらは手が届く範囲のことを歌いたいなって。そこを伸ばしていくことで、自分の良さがさらに出せるんじゃないか」と語っていた。人を好きになったときの心の揺れ、その中にある一瞬のきらめきを映し出した「スパークル」は、そんな彼女の音楽観がダイレクトに示された楽曲と言えるだろう。繊細な感情の移り変わりをリアルに感じさせる彼女の歌は、観る者の思い出と結びつき、大切な人のことを想起させたはず。その瞬間に生まれるセンチメンタルな情感こそが、この楽曲の魅力であり、“シンガーソングライター・幾田りら”の真骨頂なのだと思う。



YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』
https://www.youtube.com/channel/UC9zY_E8mcAo_Oq772LEZq8Q
幾田りら OFFICIAL YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCztEY6czNyJKjRWMwuur9bg