THE F1RST TIMES

INTERVIEW

2021.09.07

BLUE ENCOUNTの新境地。誰もが心の中に飼うバケモノとは? 疾走感とともに炙り出した新作

BLUE ENCOUNTのニュー・シングル「囮囚」(“ばけもの”と読む)は、バンドの現在地を表すインパクト抜群の1曲に仕上がっている。その表題曲は「バッドパラドックス」に続き、日本テレビ系土曜ドラマ『ボイスII 110緊急指令室』主題歌に起用され、ドラマと楽曲の相性をとことん突き詰めたアグレッシブな曲調と言えるだろう。

一度覚えたら頭から離れない曲名同様に、ボーカル、歌詞、演奏面においても、これまでと制作方法を変えたアプローチにより、新たなブルエン像が見事に炙り出されている。飽くなき挑戦心と探究心を胸に、未来に突き進もうとする気概に満ち溢れた渾身のシングルについて、メンバー4人にじっくりと話を窺った。

INTERVIEW & TEXT BY 荒金良介
PHOTO BY 荻原大志

■この場所は絶対に守らなきゃいけないという気持ちに

──まずは今年4月17、18日に行った横浜アリーナ公演2デイズ(今作の初回生産限定盤にライブ音源10曲収録)の手応えから教えてもらえますか?

田邊駿一(以下、田邊):楽しかったですね。久々のワンマンがいきなりアリーナという贅沢さもありつつ、通常とは規模感も違うので自分たちの気持ちがあまり高ぶりすぎないように気をつけました。結局、本番は高ぶったんですけど(笑)。去年はライブが全然できなくて…ヘタしたら、ライブもサブスクになるんじゃないかと考えたし。

──ああ、配信ライブが主流になるだろうと?

田邊:はい。チケット買えばいつでも観れますみたいな。でもライブをやってみたら、ライブでしかありえないことがあるし、この場所は絶対に守らなきゃいけないという気持ちになりましたね。

──それはMCでも言われてましたね。江口さんは?

江口雄也(以下、江口):横浜アリーナはイベントで一度やったことがあり、それをすごく覚えていて、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。お客さんの顔もしっかり見えるので、いつかあの場所でワンマンをやりたいなと。このタイミングでそれが叶い、しかも2デイズやらせてもらえましたからね。上京して、ずっと神奈川に住んでいたので…それがプレッシャーにならずにうまく消化できたワンマンでした。これまでは思いが強すぎるワンマンだと、コケがちだったから。

──なるほど(笑)。

江口:地元でやったワンマン、初めてのZepp Tokyoのワンマンとか…力みすぎて、どうした? と思われることもありましたからね。でもあのアリーナでは悪いブルエンが出ずに、良いブルエンを出せたなと。そういう意味で成長を感じられた稀有なワンマンでした。

辻村勇太(以下、辻村):うん、ブルエンは硬いなりの伝え方もあるんだろうけど、しなやかになってきたなと。今はゴリッとやっても、またお客さんの受け取りも感じ方も違うと思うんですよ。

──ええ。送り手が肩に力が入れば、受け手も力が入りますからね。

辻村:そうなんですよ! 気負わずに、鞭のようにしなるときはしなり、緩めるところは緩めてというライブができたんじゃないかと。

高村佳秀(以下、高村):今3人が言ってくれたように、今までのガチガチで気合い入れすぎちゃったみたいな感じではなく、いい緊張感だけを持ってその日を迎えることができたから。僕は言葉を選ばずに言うと、無難にやろうじゃないけど、最低限のラインをキープしなきゃみたいなプレッシャーを感じることも多かったけど。横浜アリーナに関しては、自分が思っている以上のことができた2デイズでしたね。

──話を聞いていると、いつかまたフルキャパでやれたら最高ですね。

田邊:ほんとそうですね。フルキャパになったら、どんな景色になるんだろうと。今の段階でもステージから観る限り、遜色のない景色でしたからね。今ツアーでは小バコを回っていて、店長さんと話すんですけど、元に戻ったら地獄絵図になるんじゃないかと。

──もともと地獄絵図でしたからね。

辻村:ははははは。

田邊:そうなんですけど、それをエンターテインメントとして受け入れられるのかなと。

江口:空いている景色に慣れちゃうとね。

田邊:1曲1曲止めて、「大丈夫?」って聞いちゃうかもしれないですね(笑)。早く元の状態に戻ってほしいですけどね。

田邊駿一(Vo,Gu)

■タブーに迫るドラマって、少なくなっている気がする

──では、今作の話に移りたいんですが、「バッドパラドックス」に続き、今回の表題曲「囮囚」は日本テレビ系土曜ドラマ『ボイスII 110緊急指令室』の主題歌に再び決まりました。もともと田邊さんはこのドラマの原作が好きだったそうですね?

田邊:そうですね。だから、シーズン1のお話をいただいたときはビックリしました。僕は7つ上の姉の影響で、ドラマや映画が大好きで。ブルエンは今までドラマやアニメなどのタイアップもやらせてもらっていますけど、主題歌というフィルターを通した音楽の作り方も好きなので、今回もお話をいただけて光栄でした。

──このドラマのどの辺に田邊さんは惹かれるんですか?

田邊:ハリウッド映画もよく観るんですけど…映画のほうがなんでもやれるじゃないですか。内容によってはR指定にすればいいわけですからね。友達と映画に観に行った、ブラッド・ピット出演の『セブン』にはエグいシーンもあったし、『バトル・ロワイアル』も親に内緒で観に行ってましたからね。今はコンプライアンスも厳しくなり、ストーリーが面白いドラマはたくさんありますけど、タブーに迫るドラマって、少なくなっている気がするんです。刑事ドラマでも血の描写を控えたり、前回お話をいただいたときにも「このドラマはタブーを超えていきます」とプロデューサーさんの意思表示があったので、「それなら僕らも全力でサスペンスにこだわって曲を書きます」と。今回のシーズン2もそうですけど、待ったなしの描写というか、必要不可欠な暴力描写にテレビが挑戦している。そこにドラマ、映画ファンとして胸が熱くなるんですよね。そこがシーズン1、2の大好きなところです。

──何かに挑戦していく、そのスタンスに心を奪われると?

田邊:そうですね。時としてただの反骨のカッコつけで終わることもあるなか、そうじゃなく、今できることの範囲内でやっているんですよ。本当に倫理を犯していたら、すぐにアウトですからね。今できるなかでみんなが喜ぶをことをやるクリエイターの皆さんは尊敬しますね。

江口雄也(Gu)

■やり切ってから考えるスタンスに変われた

──少し振り返ると、「バッドパラドックス」を発表したタイミングは、自分たちがカッコ良いと思う音楽を突き詰めた『SICK(S)』を出した後でしたよね。

田邊:あのときは初めてプロデューサーの玉井(健二)さんとご一緒しましたからね。ただ、「バッドパラドックス」は『SICK(S)』の前からあった曲なんです。僕らの引き出しにいろんなものがあるけど…ドラマをきっかけにいろんな方に聴いてもらえて、ブルエンが加速するきっかけになりました。そういう意味でも勇気を出して、あの曲を発表して良かったし、玉井さんが、僕らが思いつかない音像まで探してくれたので、それも挑戦でしたからね。それ以降、ブルエンの楽曲制作も変わったんですよ。何事も試さなきゃいけないなと。

──それほど劇的な変化があったと。

田邊:今までは試す前からやめよう、という感じでしたからね。そうじゃなく、やり切ってから考えるスタンスに変われたんです。

──その流れで言うと、「囮囚」は曲名、歌詞、曲調を含めて、攻め攻めの楽曲に仕上がりましたね。インパクト抜群であり、ちょっと驚きました。

田邊:よくこれが通ったなと思うくらい詰め込みました。サウンドディレクターに板井(直樹)さんに入ってもらい、ウワモノはセルフ・プロデュースだったので、玉井さんイズムを受け継いだ状態でやれましたからね。今年の制作はこの曲だけだったので、費やせる時間もたくさんあったんです。今回はプリプロも辻村の家でやっているんですよ。

■初めてDTMで作った

──あっ、そうなんですか。

田邊:今まではスタジオで作って、エンジニアさんを入れて、ああでもないこうでもないとスタジオワークで作っていたんですけど。今回はプリプロは全部、辻村の家でやって、仮歌もそこで録りました。

辻村:僕はほぼエンジニア的な立ち位置でしたね。

田邊:だからこそ浮かんだアイデアもあるし、ウワモノの音も辻村から「これはどう?」と提示してくれて、それに対して僕が足したり引いたりしたので、家ワークが多かったですね。初めてDTMで作ったので、自分たちでも大丈夫かなと思ったけど、大丈夫でしたね。頭の中を表現するには限界がありますから、いろんなサンプルを含めて、音像がさらに広がったのは大きな経験でした。

──ブルエンはDTM自体が初めての試みだったとはちょっと衝撃です(笑)。

田邊:ずっとアナログでしたからね。メロディラインも辻村の家でさらに良くなったし、アイデアもどんどん膨らんできました。

──そうなると、「囮囚」はDTMでがっちり作り込んだ初めての曲ですか?

田邊:そうなんですよ。

辻村:ちょこちょこデモではやっていたけど、それを軸にリリースまでというのはこれまでなかったです。

田邊:とはいえ、この曲を含めて3曲候補があったんです。ただ、デモの段階からこの曲は光ってました。

──楽曲自体は主題歌のオファーを受けて作ったんですか? あるいは、元ネタみたいな素材から作り上げて?

田邊:元ネタのサビはあったけど、お話をいただいてからAメロ、Bメロのくだりを作ったし、歌詞もそうですね。横浜アリーナのワンマンが終わって、すぐに曲作りに入りました。

──「バッドパラドックス」とはいい意味でまたタイプの違う曲調ですよね。

田邊:続編を作る気はまったくなかったんです。候補が3曲あるなかでほかにスローなバラードや、がっつり8ビートな曲もあり…バラードは僕の中で最後までこれにしたいと悩みましたね。

辻村勇太(Ba)

■人間が持っている善は弱さにつけ込まれたら悪になる

──結果的に「囮囚」を選んだ決め手は何だったんですか?

田邊:疾走感ですかね。今回は正義と悪の表裏一体だったり、人間が持っている善は弱さにつけ込まれたら悪になるとか、自分のテーマと制作チームのテーマが合致したんです。「囮囚」はメッセージもドラマのテーマに合っていたし、自分も歌って気持ち良かったんですよね。そもそも『Q.E.D』の頃に人の憎々しい部分を書いていたし、その延長線上で…自分も加害者であり、被害者なのかもしれないと思いながら、日々生きるというテーマがあったから。歌詞も書きやすかったですね。

──イントロから引き込まれました。ギターリフが鳴り響いたあと、祭り囃子みたいなドラムのリズムも面白いですね。

高村:ああいう細かなフレーズは辻村の家で“これ試したらどう?”って、“それいいじゃん”って。実験に近い感覚で曲を作ったんです。スタジオだけでやっていたら、ああいう形になれなかったと思いますね。

辻村:僕はクラブ系の音楽も好きなので、トラップを入れていたんですよ。そのハットを抽出して、それをよっちゃん(高村)に渡したら、ああいう形になりましたからね。

──ギターのアプローチに関してはいかがですか?

江口:イントロは田邊がデモの段階で入れてくれていたし、世界観が出来上がってましたからね。それを軸にフレーズ展開させました。辻村の家である程度デモが出来上がった状態で聴いて、シーケンス系のウワモノも入っていたので、今まで以上に建設的なフレーズの作り方ができたなと。田邊のギター、高村のドラムしかない状態で、僕と辻村が同時作業でお互いに考えたアレンジをドッキングさせたんですよ。それからどれを足して、どれを引こうという話し合いもできたので、より細かい部分まで練って作業できましたね。

高村:こうしたらこういうふうに応えてくれるだろう、という共通認識が増えてきたから。フレーズ作りも困らなかったですね。

──田邊さんの歌声や歌詞もはっきり聴こえつつ、演奏もがっちりと攻めているので、そのバランスも最高だなと。

田邊:聴きどころはたくさんあると思います。

高村:ミックスだけだよね、大変だったのは。

江口:そこは課題だったね。自分たちである程度全部を作り込んで、ミックスすることも初めてだったので、ゴールに向かうまでの道のりは大変でした。課題は残ったけど、それは次に活かせたらいいなと。

高村佳秀(Dr)

■悪も何かに囚われて悪になっている

──ちなみにこの曲名はどのタイミングで決めたんですか?

田邊:全部書き終えたあとですね。Aメロの仮歌詞は決まっていて、“張り詰められた蜘蛛の巣に”という内容だから、「スパイダー」という仮の曲名は決まっていたんです。このドラマには宿敵がいて、現実世界に生きている僕たちも敵がいるよねって。そいつらになんと名づけるかなと。囮(おとり)、囚われる…囮に囚われる、なんか良さそうだなと。まさに今回のテーマはいろんな人の弱みにつけ込み、善から悪に変えて、悪人にしてしまうようなドラマだから。“化”、“人”がそれぞれ四角の囲いに入っている漢字を眺めたときに、悪も何かに囚われて悪になっているから、これだ! と思ったんですよ。読み方がわからないかもしれないけど、それぐらいがいいよねって。言葉遊びの延長で、新たに言葉を作ろうと。

──いろんな意味が込められているんですね。緻密な曲調と考え抜かれた曲名が見事にマッチしていると思います。

田邊:うまくハマりましたね。

■この曲は言葉の力勝負みたいなところはありますね

──“あなたは囮囚(ばけもの)”と歌詞の中でも明言してますからね。

田邊:そこは迷った1行だったんですよ。被害者というのは、それがきっかけで加害者になる可能もあるのかなと考えたので、結局みんな心に中にバケモノを飼っているんだろうなと。だから、その歌詞は曲名をつけたあとに書きました。ここはいいフレーズになったなと。

高村:他にも当て字の歌詞が多いし、今までもそういう曲はあったけど、それがどんどん極まってきたなと。そのワクワク感もあり、より考える余白もあるから、自分の頭で思考する時間もできるので、詩みたいな要素が強まってきたなと。

辻村:全体的に四谷怪談みたいな(笑)。妖怪が出てくる物語みたいな雰囲気がありつつ、音は現代的ですからね。その組み合わせも面白いなと。

江口:田邊が表現したいことをどう歌詞に落とし込むかが大事ですからね。この歌詞も田邊が思うドラマの内容と、今のご時世に対して思うことが合わさって出たのかなと。

田邊:この曲は言葉の力勝負みたいなところはありますね。しっかりハイハットの4つ打ちの音に歌が絡まって、ちゃんとグルーヴが生まれるように考えました。今回は言葉の響きや意味を含めて、ここまで緻密に計算したのは初めてです。感情の勢いを表現しつつ、それだけに終わらない歌になったと思います。

──そして、カップリングは「ポラリス(Slushii Remix)」が収録されてますが、これも原曲からガラッと雰囲気が変わってますよね。

田邊:Slushiiさんにやってもらい、「ポラリス」が持っている憂いの部分にフォーカスを当ててくれたんだなと。具体的なリクエストはお伝えしていなかったのですが、見事に楽曲が持っている力とその奥にある悲しい部分を表現してくれた。思っていたリミックスのイメージとは違ったので新鮮でした。

■日本人には作れないアレンジ。ワールドワイドな「ポラリス」に

──冒頭の歌い出しも違うし、曲調もEDM色の強いサウンドに変貌してます。

辻村:そうですね。使っているサンプルがマシュメロ、スクリレックスを思わせる音ですし、日本人には作れないアレンジで、ワールドワイドな「ポラリス」になったと思います。

──今作を聴き、ここからまたブルエンは進化していくんだろうな、という音源になりましたね。

田邊:そうですね。こういう新しい扉もあったんだなと思うし、それでいつものやり方に戻ったときにまた面白いものができると思うんですよ。どんどん可能性を広げていければいいなと。


プロフィール

BLUE ENCOUNT
ブルーエンカウント/田邊駿一(Vo,Gu)、江口雄也(Gu)、辻村勇太(Ba)、高村佳秀(Dr)による、熊本発、都内在住4人組のエモーショナルロックバンド。
2014年9月にEP「TIMELESS ROOKIE」でメジャーデビュー。
2015年1月にリリースした1stシングル「もっと光を」は、新人ながら全国35局でのパワープレイを獲得。同年5月には人気のテレビ東京系アニメ『銀魂(第3期)』のオープニングテーマとなるシングル「DAY×DAY」をリリース。7月に1stフルアルバム『≒』をリリース。
2016年10月には日本武道館ワンマン公演を大成功に収め、メジャーデビュー5周年、バンド結成15周年となる2019年6月に渾身のミニ・アルバム『SICK(S)』リリースし、バンド史上初のホールツアーを成功させた。
2021年4月17日&18日には初の横浜アリーナ単独公演を開催。


リリース情報

2021.09.08 ON SALE
SINGLE「囮囚(ばけもの)」

初回生産限定盤

通常盤


ライブ情報

『BLUE ENCOUNT tour 2021 〜Q.E.D : INITIALIZE〜』
09/09(木) Zepp Osaka Bayside
09/10(金) Zepp Osaka Bayside
09/15(水) Zepp Fukuoka
09/16(木) Zepp Fukuoka
09/23(木) サッポロ ファクトリーホール
09/27(月) Zepp Tokyo
09/28(火) Zepp Tokyo
10/02(土) 新潟LOTS
10/09(土) BLUE LIVE広島
10/10(日) 高松festhalle
10/18(月) Zepp Nagoya
10/19(火) Zepp Nagoya
10/24(日) SENDAI GIGS
10/26(火) KT Zepp Yokohama
10/27(水) KT Zepp Yokohama


BLUE ENCOUNT OFFICIAL SITE
https://blueencount.jp

BLUE ENCOUNT YouTubeチャンネル
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BLUE ENCOUNT OFFICIAL Twitter
https://twitter.com/BLUEN_official/