THE F1RST TIMES

INTERVIEW

2021.10.14

くじらと歌い手・相沢による「悪者」スペシャル対談。ふたりの関係性が見えてくる、制作裏話

10月6日に「悪者」をCDリリースし、活躍の場を広げつつある新世代クリエイター、くじら。その実像に迫るインタビュー特集の第2回では、「悪者 feat. 相沢」で歌唱を担当した歌い手・相沢との対談が実現した。

ボカロPと歌い手というよりも、むしろシンプルに友達同士だというふたり。その関係性から、「悪者」という曲の背景、そして音楽や歌に対しての向き合い方まで、フランクに語り合ってもらった。

【特集第一回】
注目の新世代クリエイター、くじらに迫る。「悪者」発表の今に至る、彼の音楽原体験について

INTERVIEW & TEXT BY 柴那典

■ふたりの関係は、なんでも話せる友達

──くじらさんが「悪者」という曲を作ることになったきっかけを改めて聞かせてください。

くじら:2020年の頭頃に相沢さんから連絡をもらって、Twitterも相互フォローで年齢も近いので仲良くなったんです。それからLINEでいろいろ話していくうちに「一緒に曲をやりたいね」という話になって。相沢さんの声に合うメロディの曲をイメージして作っていきました。

──「悪者」は相沢さんが歌ったバージョンとくじらさんが歌ったバージョンの2曲が発表されましたが、そうすることも最初からイメージしていましたか?

くじら:そこは想定してなかったです。いい曲が出来たし、自分も歌いたいなとは思いましたが、そもそもは相沢さんのために作りました。

──結果的に自分も歌うことになったのは?

くじら:相沢さんとお互いの生活や恋愛観についての話をしていくなかで、似ている部分があると感じたので、そういうものを脚色して曲を作ろうというところから「悪者」という曲についてのお話を思いついて。それが男女の話になるので、それぞれ視点を変えて2バージョンのMVを撮ろうと思ったんですね。そうなると、男の声で歌う必要がある。“じゃあ、僕が歌っちゃおう”と、2バージョンを出すことになりました。

──相沢さんは、くじらさんとはどんな感じで仲良くなっていったんでしょう?

相沢:普段、マジで音楽の話をしてなくて、いつも恋バナばっかりしてるんですよ。前から「いつか一緒に曲をやりたいね」と言ってはいたものの、実際に「どういうことやろうか?」みたいな話は一度もしたことはなく。今回も「こういう曲書くわ」「じゃあ歌うわ」みたいな感じだったんです。ただただ、アホみたいな話をずっとしている学校の友達みたいな感じ。友達ですよね?

くじら:ですね(笑)。

相沢:音楽の人って感じがあんまりしなくて。楽器弾いてるところも、曲作ってるところも見たことがないしね。“本当にこの人は曲を書いている人なのか?”と思うくらい、ただの友達です。

──先ほど「似ている部分がある」と言っていましたが、それはどのあたりですか?

くじら:お互い、人間として、心の中のある部分が、同じような領域で腐っているんです(笑)。根底でそういうマイナスの部分がどこか似ているから、どれだけ表層的な話をしても話が合う。人間的にどうしようもないところが、かなり似ているんじゃないかなと思います。

相沢:特に今回はダメな感じの恋愛の曲なので。楽しい明るい恋バナだけじゃなく、そういう話もできるくらいの仲だという。いいところより、悪いところのほうが知っているかもしれない。

──共通して好きなものは?

くじら:たぶん、服とゴハンじゃないですかね。普段からかなり会ってるし、かなり喋っているんですけど、いつも服を見に行ってコーヒーを飲んで喋ったりしてるだけなんで。音楽とか映画とかの話よりも、学校の友達とする話の延長線上みたいな話が多いです。

相沢:ほんと、そんな感じ。

くじら:僕にとってはかなり特殊なタイプというか。イラストレーターさんとかだったら音楽と関係ない話もしたりしますけど、お互いに音楽をやっているのに音楽の話をしないというのは、かなり珍しいと思います。

■音楽家として、歌い手として、互いの魅力

──相沢さんは、くじらさんを音楽家として見て、どんなところが魅力だと思いますか?

相沢:うーん、なんだろう……。よくわからないけど、センスがある人だなって思います。

くじら:浅いなぁ(笑)。

相沢:音楽のこと、なかなか語れないなあ……。自分も一緒にやってるから言うのは恥ずかしいんだけど、くじらくんに関わった人がすごいことになっていったりもあるし、人を選ぶ目があるというか。“この人はこういう曲を歌ったらどうかな”ってプロデュースすることも多いし、そういう感度が高い。センスの人という感じ。普段音楽の話をしないから、その感覚をどう得ているのかはわからないんですが。

──逆に、くじらさんから見た相沢さんの歌い手としての魅力はどんなところですか?

くじら:抜群に歌がうまいところですね。

相沢:それも浅くない?(笑)

くじら:(笑)。どううまいかと言うと、言葉がひとつひとつ届きやすくて、耳に入ってきやすいんです。意味がイメージとして伝わるような感じがあるというか。歌声で圧倒されるというのより、ひとつひとつの言葉、メロディがしっくり身体に届いて、脳にイメージを描きやすい。で、ニュアンスも素晴らしい。そういう歌の技術がある。というのを要約すると“歌がうまい”ということになるんです。聴いていてそういう印象を受けますね。僕も歌のことは詳しくはわからないんですけど。

相沢:ありがとう。けど、なんかオモロいね(笑)。

──普段こういうお話はしないんですよね。

くじら:僕は普段から「相沢は本当に歌がうまい」ということは言っているので、それを細かく説明した感じですね。

■歌い手・相沢のターニングポイント

──改めて、相沢さんの歌い始めた経緯は?

相沢:私、インターネットのデビューが早くて、小学校5年生の頃だったんです。その頃から「歌ってみた」が盛り上がっていて、顔も出さずメディアにも出ない歌い手さんが界隈にはたくさんいたので、自分もそれをよく聴いていました。高校では部活が忙しくてネットからは離れてたんですけど、大学に入る頃に暇になってまたインターネットを見るようになって、自分もやりたいと思って。それまで趣味もなかったんですけど、通販で機材を買い揃えて始めました。

──改めて「歌ってみた」をやろうと思ったのはどういう理由だったんでしょう?

相沢:私、たぶん、歌うのが好きだなと思って。でも人前で歌うのは苦手だったので、インターネットに上げるという方法が良かったんだと思います。手軽にできるし、家で何回でもやり直して自分が満足いったものを上げられる。人に褒めてもらいたいとは思ってたけど、人前でやりたくないと思ってる自分にとって、うってつけでした。「歌ってみた」は、ボカロ曲をカバーしてる人が多かったからやってた、みたいな感じですね。カラオケのデータを上げてる人がボカロに多かった、だけの話だと思います。

──そこから活躍の場が広がっていったわけですが、相沢さんにとってのターニングポイントは?

相沢:私、すごくふんわりやっていて。こういうふうになりたいとかもないし、最近は歌も上げてなくて、ただのツイッタラーみたいになってるんですけど(笑)。もともと自主的に動くことはないんで、声をかけてもらったこと全部がターニングポイントですかね。くじらくんもそうですけど、「歌ってよ」と言ってくれる人が来て、私は歌えればなんでもいいので「じゃあ、やります」って。それをまた別の人が見つけてくれて、「これ聴いたんですけど、私とも一緒にやりましょう」って。そういうのが積み重なって、みんないい曲を書く人たちで…歌っていて楽しい曲を渡してくれる人が次々とやってくる感じです。

くじら:いいなぁ。

相沢:恵まれてますね、完全に。ありがたいです。私、頑張ったことがないので。むしろ頑張らないほどいいと思ってます。変な欲を出したら終わってしまう気がしてますね。

──くじらさんは、相沢さんの歌い手の活動はどんなふうに見てました?

くじら:精力的に何か計算してガツガツやっているというよりは、本人の人格のままインターネットをやっているんだなと、会ったことがないときから思ってました。で、実際に会ってみたら本当にそうだった。それで、こんなにたくさんの人に聴かれているって、ヤバくないか、とも思っています。いいなぁ、と。

相沢:あはは。なるほど。

くじら:僕はそういうふうにやると、だいたい失敗するんですよ。欲を出して、計算して、積み上がってきたものがこれなんで。そういう意味では対極のところにいるなと思います。

相沢:私の場合はゆるゆるやってるのが、いいんだと思います。可もなく不可もなくみたいなポジションでいれたらいいなと思っているんで。

■「悪者」制作の裏側

──「悪者」という曲は相沢さんの声をイメージしたということですが、実際に歌われることによってどういう雰囲気が引き出されたと思いますか?

くじら:もともと「相沢さんの声で歌を作るなら、詞の内容はこういうものにしよう」と思って、いちばん馴染むメロディを考えながら作っていった曲なんです。そうやって僕の頭の中で思い描いていたものが100点だとするならば、僕の頭で再現しきれていないところを相沢さんがレコーディングで出してくれて、120点、150点になった、という感覚です。

相沢:ふふふ。ありがたいです。いろんなところから依頼をもらうことがあるんですけど、私が歌うのを想定して書いてくれてるって、歌ってみるとわかるんです。スルスルって歌えるし、いろいろイメージしてくれたのがわかる。この曲もそうでした。すぐ覚えて、すぐ歌えたんで。歌いやすかったから、いろいろ考えてくれてたんだなあと思いました。即送ったよね?

くじら:そう。“はやっ!”と思いました。

──レコーディングはどういう感じだったんでしょうか?

くじら:まずは僕のほうでデモを作って、それを相沢さんに送って、ボーカルを録ってもらって。そのあと関口(シンゴ)さんが編曲したものをレコーディングして完成という感じでした。そのあとに歌を入れてもらえれば良かったんですけど、レコーディング前にボーカルデータが来たくらいの勢いだったので。

──関口シンゴさんの編曲で曲が出来上がって、くじらさんの最初のイメージからどんなふうに膨らみましたか?

くじら:関口シンゴさんがもともと好きだったんです。特にアイナ・ジ・エンドさんの「死にたい夜にかぎって」という曲が、音の感じも含めて全部がめちゃくちゃ好きで。その曲はあたたかくてまあるい音なんですけど、「悪者」もそういうあたたかい音にしたいなと思って。曲調としてはもう少しJ-ROCK、J-POP寄りな感じにしたいと相談して、ふたりで感覚の調整をしていきました。出来上がったものは非常に満足というか、“これこれ!”という感じです。

──くじらさんはこの曲を自分で歌うにあたってはどういうことを考えました? 

くじら:自分の言葉なので、全部が自分の口に馴染んでいるので、スムーズにいった感じです。さすがに相沢さんと並べられるのはきついけど、歌いたいなと思ったので、技術面では頑張ったというか、練習をしたところはありますね。

──くじらさん、歌がうまいと思いました。

くじら:ありがとうございます!

相沢:うまいですよ。さっき私に歌詞の意味が伝わりやすいと言っていたけど、くじらくんのバージョンのほうが喋る感じというか、語りに近い歌で。私も感情的にやったつもりなんだけど、感情的のジャンルが私とは違って男性っぽくていいなと思います。雰囲気は違うけど、各々の感情表現ができてて、差別化もできてていいと思います。

──曲を作っていくときのやりとりも、友達みたいな感じだったんでしょうか?

くじら:そうですね。普段の話のノリで「こないだやりたいって言ってた曲、出来たよ」、「はーい! いいねー。歌います!」で、出来ていったので。

相沢:あんな感じでデータ送ったのも初めてなんですよ。普段は「お疲れ様です、こちら収録データ完成いたしましたので、ご確認をお願いします」って感じで送ってるんですけど、「歌ったよ」「オッケー、うま!」みたいな感じでした。おかしいよね?(笑)

くじら:勢いというか。

相沢:カオスだね。

くじら:だから楽しかったけど。

相沢:うん。

■ふたりでは珍しい音楽談義!?

──普段はあまり音楽や創作についての話をしないということですが、これを機にお互い改めて聞いてみたいことはありますか?

相沢:私の場合、これだけ話したり会ったりして、中身を知っているから、私を想定して書きやすいとかはあると思うんだけど、他に曲を提供していたり、フィーチャリングをやるときは、ここまで友達ということはないと思うから、それはどうやって合わせにいってるの? 声とか、歌い方とかの情報だけで、あそこまで合わせにいくということなの?

くじら:そうだね。その人の投稿してるチャンネルとか、二次創作してるもの、オリジナルとして出してるもの、そこで選んでいるものから、こういう曲調が好きなんだろうなというのを掴んだりして。そこから自分が作ってる曲を歌ってもらったらきっとこういう感じになっていくんだろうなと考えて合わせていく。

相沢:なるほどね。会ったり話したりもしたことない人もいるってこと?

くじら:基本的に実際会ったことなく作ることのほうが多い。最近は関係上会って話すことが増えてきたけど。じゃあ、相沢さんは何を思って歌っているの?

相沢:いや、何も思ってない(笑)。

くじら:歌の技術については? 録っていくなかで、今の歌ができるようになったの? それとも、もとから?

相沢:えー!! 何も考えてないけど、絶対うまくなっている自覚はあって。なんだろう……嫌われそうだけど、練習もしないし。

くじら:次会ったときに一発殴ろうかな(笑)。

相沢:いやいや、ほんと、感覚派なんで、うまくいったものこそ「何も考えてないです」としか言えなくて。“ここに感情を込めて”とか“主人公の気持ちになって”とか、逆にいろいろ考えてるときはあまり調子がよくなくて。何も考えずに勝手にスラスラ進んでいくときのほうがいい。

くじら:相沢さんは天才ということでよろしいですか?(笑)

相沢:たぶん、考えてる時点でどうしたらいいのかわかってないということなのかもしれない。無理に試行錯誤してるのは、あとから聴くとキモかったりするし。そういう意味では「悪者」は、うまくいったから、何も考えてない。

くじら:めっちゃリテイクして、納得いくまで録り直したものなのかと思ってた。

相沢:いや、区切ってやったものほど、自然じゃなくなるから、あとあと聴いて違和感がある。だから“何も考えてません”は、“適当にやりました”ではないです。

くじら:なるほどね。すごく納得いった。


プロフィール

くじら
2019年4月1日に活動を開始。作詞・作曲・編曲すべてを務め、ボーカロイド作品や、yamaやAdoなどのボーカルフィーチャリング作品をはじめ、楽曲提供など精力的に創作活動を行う。2019年7月にボーカロイドアルバム『ねむるまち』、2020年10月にフィーチャリング&ボーカロイドアルバム『寝れない夜にカーテンをあけて』を発表。新世代クリエイターとして高い注目を集めている。

相沢
大学入学後、歌い手として「歌ってみた」への投稿を始める。その後、様々なアーティストの楽曲にフィーチャリング参加するなどコラボレーションも多数。近年は、コンピレーションアルバム『PALETTE3』への参加や、indigo la End「ラブfeat.pH-1」へのコーラス参加など活動の場を広げている。


リリース情報

2021.08.13 ON SALE
DIGITAL SINGLE「悪者」

2021.09.15 ON SALE
DIGITAL SINGLE「悪者 feat. 相沢」

2021.10.06 ON SALE
CD +カツセマサヒコ書下ろし小説「悪者」

完全生産限定盤

通常盤


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