THE F1RST TIMES

INTERVIEW

2022.06.24

三月のパンタシア、ロック色強いサウンドに、“四角関係”“運命”というテーマを重ね描いた切なさと葛藤

2022年3月に4thアルバム『邂逅少女』をリリース。東京、大阪でアルバムを引っ提げたワンマンライブを開催するなど、充実した活動を継続している三月のパンタシアから、ニューシングル「四角運命 / アイビーダンス」が届けられた。TVアニメ『カッコウの許嫁』エンディングテーマ「四角運命」、フレデリックとのコラボによるダンスチューン「アイビーダンス」を収めた本作について、みあ自身の言葉で語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 森朋之
PHOTO BY 大橋祐希

■“音楽で返したい”という気持ちが湧き出て

──まず、今年の春に東京、大阪で行われたライブについて聞かせてください。アルバム『邂逅少女』を携えたライブでしたが、みあさんにとってはどんなステージになりましたか?

“ライブは自分の居場所なんだな”と、より噛みしめられたツアーだったと思っています。当初は大阪から始まる予定だったんですが、公演の一週間前にコロナ陽性になってしまい、延期することになって。そのことに対して、すごく落ち込んじゃったんです。3月は私たちにとって特別な月なんですよ。しかもアルバムをリリースして、初めて大阪でライブできるというワクワクがたくさん詰まっていたのに、それが延期になってしまって…。“初めて‘三パシ’のライブに行ける!”と楽しみにしてくれていたファンの人たちのことを考えると、余計に自分がふがいなく感じてたんですよね。でも、みんなから「元気になって戻ってきて」「待ってる」という声をたくさんもらって、励まされて。そういう言葉に救われているなと実感しましたし、だからこそ、“今までよりも、もっと‘特別だ’と感じてもらえるライブを届けたい”という思いになったんです。東京公演は予定通りに行われたんですが、言葉がなくても通じ合えたと思ったし、“みあが帰ってきた!”というフロアのみんなの思いを受けて、“音楽で返したい”という気持ちが湧き出て。トラブルがあったからこそ、期せずして、深いつながりを感じることができたんじゃないかなと。

──いろんな感情が渦巻いていたんですね。

そうですね。ひとえに思うのは、“ライブという場所がいちばん好き”だったんですよね、やっぱり。来てくれる人がいないとやりたくてもできないし、歌う理由はここにあるんだなと改めて実感できました。

──貴重な経験になりましたね、本当に。では、ニューシングル「四角運命 / アイビーダンス」について。「四角運命」はTVアニメ「カッコウの許嫁」エンディングテーマ。楽曲の制作は、原作を読むところからですか?

そうですね。原作のコミックは王道のラブコメディのど真ん中という感じで。12巻まで出てるんですけど、“主人公の凪くんは、誰と結ばれるの?”“え、この子もありえる?”“この子とどうにかなっちゃうの??”ってドキドキしながら読んでます(笑)。実家にいた頃は、両親が買ってくる少年マガジン、少年ジャンプをよく読んでいて、ラブコメもずっと触れてきたジャンルなんです。主人公の男の子の視点になって、自分に置き換えて読むことが多かったですね(笑)。

■それぞれの切なさ、葛藤を同時に描くことはできないかな?と

──それ、男の子の目線ですね(笑)。歌詞についても、原作の“四角関係”にフォーカスしていた?

マンガを読んでいて、“四角関係”という面白い関係性と、“運命”という言葉の使い方が印象に残っていたので、そのふたつはキーワードとしてピックアップしたいなと。アニメのチームからは、「メインのヒロインであるエリカの心情を描いてもらえるとうれしい」というお話があったんですよ。でも、原作を読めば読むほど、エリカ、幸(さち)、ひろを含めた全員の心情が感じられて。立場はそれぞれ違うんですが、同じような切なさを抱えているんですよね。素直に言えない気持ちだったり、本当は気付きかけているけど、“気づきたくない”と思ってる複雑さだったり。“自分の思いを告げることで、4人の関係が変わってしまうのでは?”ということも含めて、それぞれの切なさ、葛藤を同時に描くことはできないかな?と考えながら歌詞を書きました。

──“運命”については?

「カッコウの許嫁」の登場人物たちは、まさに運命の歯車の中にいるんですよ。“取り違え子”という状況もそうだし、高校生同士の許嫁もかなり重たい運命じゃないですか。降りかかってくる運命を変えることができるのか、それとも運命に従った道を歩くことになるのか。それは一読者としても気になるところなんですよね。私自身も『邂逅少女』でも運命について語っていて。“運命は偶然か必然か”論もありますけど、自分の経験を振り返ってみると、偶然がどんどん積み重なって、“あのときの出会いが、今につながっている”と感じることも多いんですよね。

■三パシとしても、かなりロック色の強い曲

──みあさん自身の思いも重なっているんですね。エッジの効いたサウンド、高速のビートも刺激的でした。

サウンドなどに関しては、じつは三月のパンタシアのサイドから2曲ご提案したんです。1曲はまさにラブコメ系アニメのエンディングというか、ゆったりしたテンポの優しい曲調だったんですよ。もう1曲が「四角運命」だったんですけど、アニメのスタッフの方がそちらを選んでくださって。かなりソリッドなサウンドになったし、アニメ本編では表現されていないような胸の内が表現できたと思ってます。三パシとしても、かなりロック色の強い曲で。私としてもすごく好きだし、久々にロックでカッコいい姿を見せられたんじゃないかなって満足してます。

──ライブ映えしそうですよね。

大阪の公演で初めて披露したんですけど、歌もそうだし、バンドの皆さんも演奏がめっちゃ大変そうでした(笑)。“必死感”が楽曲に合ってると思うので、ぜひライブで聴いてほしいですね。

──そして「アイビーダンス」は、フレデリックの三原康司さんが作曲、フレデリックが編曲を担当。ライブ感たっぷりのダンスチューンですね。

先ほどもお話しましたが、私たちにとって3月は特別な時期で。“みんなに何かプレゼントできたらいいな”と思ったのがはじまりですね。3月は私たちにとって毎日がお祭りみたいなものだし、“お祭りと言えば、やっぱりライブだな”と。ライブでお客さんと一緒に心から楽しめる、遊べる楽曲を作りたいと思ったんですけど、まだまだ発声が厳しかったので、“声が出せないなら、踊ればいいじゃない”というところから、春のダンスチューンを作りたいなって。

──3月、お祭り、ライブ、ダンスチューンというつながりなんですね。

そうですね(笑)。これまでの三パシはボカロPと呼ばれるネット系のクリエイターとご一緒させていただくことが多くて。機械的なサウンドを活かしたダンスチューンを作られる方も多いですし、私自身も大好きなんですが、ライブではフルバンドを背負ってやってることもあって、今回はバンドサウンドがしっかり立ち上がる曲にしたかったんですよね。そこからさらにいろいろ考えるなかで、フレデリックさんにお声がけをさせてもらいました。私自身、フレデリックさんの音楽はずっと聴き続けているし、ぜひ一緒に作っていただきたいなって。

■総合芸術みたいなイメージがあって

──みあさん自身は、フレデリックのどういうところに惹かれていたんですか?

はじめはループするメロディラインだったり、頭に残るフレーズがきっかけで聴くようになったんですけど、今は“あらゆる角度から音楽を追求しているバンド”という印象が強いんですよね。楽曲はもちろん、アートワークを含めて、総合芸術みたいなイメージがあって。ライブも拝見したことがあるんですけど、お客さんの“楽しい”とかワクワク、高揚感をサウンドでしっかり引き出しているのがすごいなと。その光景を見たことも、今回の曲につながってますね。

──デモ音源を聴いたときは、どう感じました?

フレデリックだ!と思いました(笑)。イントロから“これこれ!”という感じだったし、まさにそういう楽曲がいいなと思っていたので、「このままいかせてください」とお伝えして。

──ゆけ!止まらない/今夜こそは/踊って飲み干してというフレーズもそうですが、まさにライブで歌ってる場面が浮かぶような歌詞ですね。

三パシは(みあが執筆した)小説をもとにして歌詞を書くことが多いんですが、「アイビーダンス」に関しては、ライブにおける私とファンの一対一の関係をそのまま描きたいと思って。1年10ヵ月もライブができなかったし、“本当は寂しかったんだよ”“退屈だったよね!”“今夜は距離を気にせず、踊り明かそう!”みたいな気持ちをストレートに歌ってます。これまでもファンに対する思いを歌った曲はいくつかありますけど、大変な状況を一緒に乗り越えきたという気持ちもあるし、初めてこの曲をライブで披露したときは、エモーショナルな気持ちになりました。

──ファンのみなさんの反応はどうでした?

何も説明しないで振り付けを披露したんですけど、みんなマネしてくれて、“こんな感じかな?”って身体を動かして。2週間後の大阪公演では完璧に振り付けを覚えてくれて、“私、視力が上がったのかな?”って思うくらい、フロアの光景がよく見えたんですよ。キラキラしていたし、みんなが楽しそうに盛り上がってくれたのもうれしかったです。

■“私と一緒に頑張ろう”という歌にしたかった

──3曲目には、書き下ろし小説『多分、私たちひとりじゃない』をもとにした「ユアソング」を収録。

曲のイメージが先にあって、そこから小説につながることもあれば、“こういう物語を書いてみたい”というところから曲が生まれることもあって。「ユアソング」は、曲のイメージが先行していたんです。思い浮かべていた季節は4月。いろんな人が新しい環境に飛び込んで、新生活が始まる時期だと思うんですけど、期待もたくさんあるし、同じくらい不安もあって。いろんな思いを抱えながら一歩を踏み出すというシチュエーションというのかな。“頑張りたい”“心細い”“さみしい”という気持ちになっている人に寄り添って、ただ応援するというより、“私と一緒に頑張ろう”という歌にしたかったんですよね。私も何度も挫けたし、そのたびに“君”がいるから頑張れる、歌い続けてこれたので。そういう断片的なイメージを曲にして、さらに小説につなげたという感じですね。

──みあさん自身のリアルな感情も重なっているんですね。

そうですね。私自身、夢を追って上京したんですけど、最初はすごく心細かったし、家族や友達が近くにいない状態で、ひとりで頑張らないといけなかったので。私は強がりなところがあって、自分の中で抱えたまま、気付いたら“もう頑張れない”みたいな状態になることもあったので…。今振り返ってみると、大学時代に本音で語り合える友人が出来て、寂しさや不安を吐き出せる存在がいてくれたのはありがたかったです。今も抱え込んじゃうことがありますが(笑)、以前よりは“自分は強くない”と認められるようになったし、少しは素直になれた気がします。上手に弱音を吐くって、ライフハックだなって思いますね。

──歌詞や小説を書くことも、自分を見つめ直すきっかけになりそうですね。

そうですね。書いたものを読み直して、“私、こういうことを考えていたんだな”と思うこともあるので。書くことって、自分を逸脱して、無意識の部分が出てくることもあって。そこが難しさでもあり、面白さでもあるんですよ。

■三月のパンタシアとしてチャレンジしたいことに向き合ってみたい

──2022年後半はどんな活動になりそうですか?

3月にアルバムをリリースして、新しいシングルも発売させてもらって。すごく充実しているんですけど、ちょっと一息ついて、今一度、三月のパンタシアとしてチャレンジしたいことに向き合ってみたいと考えているところです。制作のスタイルだったり、クリエイターの方々との作り方だったり。ここからまた新しいことがやれたらいいなと思っているし、すごく楽しい時期ですね。

──インプットも大事ですね。

はい。内省的な思いをそのまま作品として出力する場合もあるんですけど、外から得た刺激に感化されて出てくるものもたくさんあるので。インプットは常にやっているし、自分と近しい活動をしている方、いろいろな表現をされている方と話すことで、“頑張らないと”と思うこともあって。人と話すことって大事だなって、改めて感じてます。


リリース情報

2022.06.22 ON SALE
SINGLE「四角運命 / アイビーダンス」

初回生産限定盤

通常盤

期間生産限定盤 ©吉河美希・講談社/カッコウの許嫁製作委員会


プロフィール

三月のパンタシア
サンガツノパンタシア/“終わりと始まりの物語を空想する”ボーカリスト「みあ」による音楽ユニット。2016年6月1日にTVアニメ『キズナイーバー』のエンディングテーマ「はじまりの速度」でメジャーデビュー。2018年からは、みあ自らが書き下ろす小説を軸とし、“音楽×小説×イラスト”を連動させた自主企画『ガールズブルー』をWeb上で展開。2020年1月に開催した豊洲PITでのワンマンライブのチケットは即日SOLD OUTに。2022年3月には、みあ書き下ろし小説「再会」を軸とした4th Album『邂逅少女』をリリース。“音楽×小説×イラスト”の 世界を更新し続け、いま最も注目される音楽ユニットの一つになっている。


三月のパンタシア OFFICIAL SITE
https://www.phantasia.jp/