■初のソロアルバムを中心とした“歌もの”とSchroeder-Headzの楽曲を軸にしたインストを披露
渡辺シュンスケが自らの生誕50年(1975年1月7日生まれ)と、所属事務所SMAの50周年にちなんだイベント『シュンチャンショー deアイマショウ~渡辺シュンスケ & SMA 50th Anniversary~』を開催した。
毎年恒例のバースデー・イベント『シンシュンシュンチャンショー』のスペシャル版ともいえる公演に出演したのは、渡辺シュンスケ(Key,Vo/Schroeder-Headz、cafelon)、柏倉隆史(Dr/toe、the HIATUS、真船勝博(Ba)、藤田顕(Gt/PLECTRUM)。ライブは2部構成で行われ、<1stセット>は初のソロアルバム『MUSIC』-Most Unusual Songs In my Collection-を中心とした“歌もの”、<2ndセット>はSchroeder-Headzの楽曲を軸にしたインストを披露。渡辺の多彩にして奥深い音楽の世界をたっぷりと堪能できた。(ちなみに渡辺と藤田は、今年45周年を迎えた佐野元春のバンド“THE COYOTE BAND”のメンバーとしても活躍中です)
■朗読から始まった<1stセット>は、2月リリースの1stソロアルバムから選曲中心
<1stセット>のはじまりは、渡辺シュンスケの朗読から。題名は“あと何回”。“あと何回、満月が見られるだろう。あと何回、真っ赤な夕焼けが見られるだろう…”からはじまる詩で渡辺は、人生の短さと、残された時間に思いを馳せる。坂本龍一の著書「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」を想起させる文章は、決して悲しいものではなく、限りある時間をどう生きるか?というテーマにつながっている…みたいなことを考えていると、バンドメンバーがステージに現れ、Schroeder-Headzのデビューアルバム『NEWDAYS』からの表題曲「newdays」でライブは幕を開けた。
前半は、2月12日リリースの1stソロアルバム『MUSIC』の収録曲が中心。
まずは「背番号」、ホンキートンク~ブギ~ロックンロールが心地よく混ざるサウンドの中で、“ひまが忙しくて / 自由なんてさ どこにも見つからない”というフレーズが広がり、会場全体の空気がほどけていく。
「なんと今年50歳になりまして。ソロアルバムの曲だったり、Schroeder-Headzの曲もたくさんやるので、よろしくお願いします」というMCのあとは、レゲエ・ビートのなか渡辺が奏でるピアニカの旋律が溶け合う「コーヒー」、渡辺がオルタナティブなギターを演奏した(30代の頃、PUFFYの海外ツアーに参加したときに購入したギターだとか)「Baku-Note」を披露。シンガーソングライターとしての個性をダイレクトに表現してみせた。
続いては、「コロナのときに出来た曲です」という弾き語りの楽曲「夢の中のふたり(social distance)」。まさに夢の中にいるような浮遊感、ロマンティックで切ないメロディからは、印象派の影響を感じ取ることができた。
さらに「空飛び猫」(Schroeder-Headz feat.大貫妙子)、「samida-rain」(小泉今日子)のセルフカバーでは、歌い手としての個性──詩情豊かで、どこか飄々とした──をアピール。そして1stセットの最後はアルバム『MUSIC』から「Swallow Song」。立ち上がってイントロを弾き、疾走感に溢れたサウンド、“今はひたすら旅の途中”というラインが響き合い、観客を心地いい高揚感で包み込んだ。
■Schroeder-Headzの楽曲中心の<2ndセット>で四季の移り変わりを見事に表現
<2ndセット>は、Schroeder-Headzの楽曲が中心。最初に聴こえてきたのは、鈴虫の鳴き声。秋の気配が漂うなかで「Petal」が演奏され、“爽やかなメランコリック”と称すべき音像が生み出された。さらに吹雪のSEから「A Day of Snow」。そして鳥のさえずり、小川のせせらぎに導かれるように華やかな「ハルシュラ」、さらに雷、雨、蝉の音から「Rhapsody in summer」へと繋げ、四季の移り変わりを見事に表現してみせた。
卓越した技術と個性を併せ持った4人のインタープレイが炸裂した「Brand New Season」を放ったあと、渡辺は「渡辺シュンスケ、50歳です!」と改めて挨拶。
「Schroeder-Headzは季節をテーマにした曲が多くて。春夏秋冬をメドレーっぽくやってみましたが、どうだったでしょうか?」「ここからは新曲を聴いてもらおうかな」と、3曲の新曲を続けて演奏した。テーマ(主題)~ソロ演奏のジャズの定番フォーマットを踏襲しながら、随所にメロディメーカーとしてのセンスが光る「Bleu」。3拍子を基調としたリズムとオリエンタルな旋律が響き合う「Cocoon」、ミニマリズム的な音像からはじまり、曲の進行とともにドラマティックに盛り上がる「absence of absolutes」(途中でサティの楽曲を引用)。この3曲は、渡辺シュンスケの音楽が奔放に広がり続けている証左だと言っていいだろう。
「今年も頑張れる気がしてきました。どうもありがとうございます!」という言葉から、代表曲のひとつ「Blue Bird」へ。構築美と自由さを共存させた音楽を高らかに響かせ、ライブはクライマックスを迎えた。
鳴り止まない手拍子に導かれ、渡辺シュンスケ(“50”のハッピーバースデーメガネを着用)とバンドメンバーが再びステージへ。まずは「手紙が届けてくれたもの feat.坂本美雨」。歌メロを鍵盤ハーモニカで演奏し、ほっこりと優しい雰囲気が広がる。演奏しながら渡辺は客席へ降り、そのまま場内を一周。エンディングのフレーズを客席のど真ん中で披露し、ナチュラルな一体感を演出した。
■50代は“当たるけど砕けない”みたいな人になれたら
ここで藤田をきっかけにバンドメンバーによる“Happy Birthday to You”の演奏が始まり、ケーキが持ち込まれるサプライズ。渡辺はローソクの火を吹き消し、ちょっと照れた表情で「ありがとう」と感謝を言葉にした。
「50になっていろいろ考えたんですけど、20代のときは“当たって砕けろ”でやってきて、30代もそうかな。40代くらいから経験値も増えて、当たらないでやることも増えてきて。50代は“当たるけど砕けない”みたいな人になれたらいいと思って。年とか気にせず、いろいろ挑戦していこうと思ってます」
この先の音楽活動に対する思いを語ったあとは、アルバム『MUSIC』収録曲「ミラーボール」。70年代シカゴソウルを想起させるリズム、洗練とエモさを共存させたメロディライン、“まわり続けろミラーボール”という歌詞がゆったりと広がり、イベントは終了。煌びやかなミラーボールの光は、渡辺シュンスケの未来を美しく照らし出しているようだった。
TEXT BY 森朋之
PHOTO BY SHOTARO
『シュンチャンショー deアイマショウ』~渡辺シュンスケ & SMA 50th Anniversary~
2025年1月18日 I’M A SHOW
セットリスト
<1stセット>
1.newdays
2.背番号
3.コーヒー
4.Baku-Note
5.夢の中のふたり(social distance)
6.空飛び猫
7.samida-rain
8.Swallow Song
<2ndセット>
1.Petal
2.A Day of Snow
3.ハルシュラ
4.Rhapsody in Summer
5.Brand New Season
6.Bleu
7.Cocoon
8.absence of absolutes
9.Blue Bird
<アンコール>
EN1.手紙が届けてくれたもの
EN2.ミラーボール
リリース情報
2025.2.12 ON SALE
ALBUM『MUSIC』-Most Unusual Songs In my Collection-
Sony Music Artists 50th Anniversary 特設サイト
https://www.sma.co.jp/s/sma/page/50th?ima=0000#top