■増幅したバカバカしさ、面白さ、カッコよさ、エモさが大渋滞するステージ
グループ魂が9月10日、東京・Zepp Haneda(TOKYO)でワンマンライブ『羽田で単発のバイト』を開催した。
破壊(Vo/阿部サダヲ)、暴動(Gu/宮藤官九郎)、小園(Ba/小園竜一)、石鹸(Dr/三宅弘城)、遅刻(Gu/富澤タク)、港カヲル(46歳/皆川猿時)によるパンクコントバンド、グループ魂。約1年ぶりのワンマンとなった今回の公演には、遅番(Sax/少路勇介)のほか、“野村くん”ことシソンヌ・じろう、ニューロティカ・あっちゃん、“ケチケチ母ちゃん”こと宍戸美和公がゲスト出演。さらに増幅したバカバカしさ、面白さ、カッコよさ、エモさが大渋滞するモリモリのステージを繰り広げた。
開演直前、客席に叶姉妹の美香さんの姿が。気づいた観客から歓声が上り、笑顔で手を振る美香さん。グループ魂のライブとは思えない(?)ゴージャズな雰囲気になりかけた瞬間、照明が落とされ、港カヲルが「美香さん、俺より目立たないでよ!頼むよ!」と叫びながら登場。「女は〇〇である」から始まる口上、「こんばんは。夜の第一ターミナル、港カヲルです。待たせたな、1年ぶりのワンマン。略して“ぶりマン”!」という挨拶、「飛行機で来た〇〇はどれくらいいる?え、博多から来たの?」とお客さんをイジり、恒例の「おっぱい元気?」のコール&レスポンス、「あのね、30周年なんです。この数年は波乱続きでした」というMCから暴動、石鹸、小園、遅刻、そして、“野村くん”ことシソンヌ・じろうがステージへ。大歓声が沸き起こるなか、石鹸がビートを叩き始め、破壊が登場。「はいどうも、こんばんは!」という叫びから1曲目の「モテる努力をしないでモテたい節」を放ち、サビのフレーズで大合唱が生まれる。さらにカウパー腺の名称の由来になった偉い人をテーマにした「ウィリアム・カウパー」を挟み、大人気曲「チャーのフェンダー」では遅番こと少路勇介が出てきて、渋いサックスを響かせる。2日前にもライブがあったせいか(ニッポン放送プロデュースのイベント『未定 vol.1 グループ魂×THE KEBABS』でTHE KEBABSと対バン)、演奏のテンションも最高潮だ。
■客席で観覧する叶姉妹・叶美香の前で「来世は叶姉妹」を披露するレアシーン
この日のライブは1年前のワンマンと同じく、バイトの応募者の履歴書を紹介しながら進行。一番手は「中高年に混じって、中学生がいる!」と港にツッコまれたじろう扮する中学生の野村くんは、「あれ?阿部サダヲだ。サインください!」とキレ気味に要求…みたいなくだりがあって、“30分のつもりが30年寝ちゃって、気付いたら昭和から令和になってた”主婦を主人公にした「平成の記憶がない!」へ突入。そして「やばい、緊張してきた」と破壊がつぶやくなか、5年ぶりの新曲「来世は叶姉妹」。ラテン風味の爽やかなサウンドと“叶姉妹に入りたい”という切実な願いを込めた歌詞がひとつになった曲を美香さんの前で披露するレアすぎるシーンが実現した。ライブ前半のハイライトは、これも新曲の「介護ME!」。老いと戦い、向き合う姿を描いた“アイ・フォート・ザ・老(ロウ)”なパンクチューンはまさに今のメンバーのリアルだ。
「俺、言いたいことあったんだよな。」(破壊)から破壊・暴動・遅番によるネタを披露。(念のため説明しておくと、グループ魂はもともと漫談スタイルのコントグループから始まりました)
■グループ魂のライブでは常連のニューロティカのあっちゃん登場
女子高生姿になった港が客席前方にいる男子(11歳)と「ここまでどう?帰りたい?」とトークしたり、なぜかゆったりした時間を過ごしたあと、“女子高生に変身したおっさん”が出てくる「High School」、そして、ライブでは久しぶりに披露された「ラブラブ❤マンハッタン」(ドラマ「マンハッタンラブストーリー」主題歌)へ。ここでピエロメイクのニューロティカ・あっちゃんが登場し、フロアがさらに湧き立つ。グループ魂のライブでは常連だけあって、オーディエンスの反応も抜群だ。
あっちゃんの履歴書(実家は八王子の菓子問屋の「藤屋」)で盛り上がり、グループ魂の「I was PUNK!!~グループ魂にあっちゃん(NEW ROTE’KA)は?~」、ニューロティカの「DRINKIN’BOYS」を連発。やはりこのバンドには、オーセンティックなパンクロックが良く似合う。
ライブの雰囲気を一気に変えたのは、港がポリス姿に扮した「職務質問」。さらに“ケチケチ母ちゃん”(『痛快TV スカッとジャパン』で宍戸美和公が演じたキャラクター)も参加し、破壊、港、遅番、ケチケチ母ちゃんの4人でキレキレのパフォーマンスを披露。演奏のクオリティもめちゃくちゃ高く、“ファンキーなダンスチューン×職質をテーマにした歌詞”を軸にしたこの曲の面白さ、カッコ良さが存分に発揮されていた。
■多彩な音楽性、ライブバンドとしての実力。結成30周年は伊達じゃないグループ魂
「ケチくさいわね!」を連発するケチケチ母ちゃんの履歴書コーナー(得意技は詰め放題のビニール袋で、想定の2倍詰め込むこと)のあとは、万引きを疑われる奥さんを描いたダブ系のミディアムチューン「オクサーヌ」、暴動のギターカッティングがカッコいい「さかなクン」(“トビッコは歯に挟まるから嫌い。ギョッ!”というケチケチ母ちゃんのセリフがかわいい)を演奏。じつは多彩な音楽性をしっかりと見せつけ、オーディエンスの身体を揺らしまくる。ライブバンドとしての実力もここにきて着実にアップ。結成30周年は伊達じゃない。
続いては2022年の中野サンプラザ公演以来の“皆川スポーツ”(中学生に扮した港が記者としてメンバーを取材)。「暴動さん、どうですか最近、職質のほうは」「もう順調に。先日も品川駅で…」からはじまり、メンバーの近況をネタにまったりとした笑いを取ったあと、ここからライブは後半へ。《白衣 下ネタ ホワイトボード》のリフレインから始まる「ケーシー高峰」、ロックオペラ風のバンドサウンドが炸裂する「本田博太郎~magical mystery UPAAAAAAAAA!!!!!~」、そして「Over 30 do The 魂」では、あっちゃん、野村くん、ケチケチ母ちゃんが再び登場し、全員でシンガロング…と思ったら、なぜか《ふるさと納税♪》と歌ってるというお約束のネタで会場に笑顔が広がる。わかっていてもめっちゃ楽しい。
■50代以降のパンクバンドの在り方を示しながら本編ラストスパートへ
「君にジュースを買ってあげる❤」をみんなで元気に歌い上げ、ここからがグループ魂の本領。“死ぬまで生きよう!”と訴える「それでも生きなきゃ死んじゃう音頭」、“死ぬまでモテたい!”という強い願望を打ち鳴らす「モテる努力をしないとモテないゾーン」によって50代以降のパンクバンドの在り方をダイレクトに示したのだった。
アンコールは“中村屋”から。「我々、歌舞伎界も明るいニュースがたくさんあって。大ヒット映画…」「蓮舫!」「白鳳!」という破壊扮する歌舞伎俳優“中村屋華左右衛門“とのやり取りを挟みつつ、12月26日/LINE CUBE SHIBUYAでワンマンライブを行うことを発表。会場は大きな拍手と歓声で包まれた。
さらに“もう残された時間は少ない!”というメッセージをぶちまける「もうすっかりNO FUTURE!」、破壊、暴動の若かりし頃の姿を刻んだ「高田文夫」を放つ。上半身ハダカになった港と遅番の音頭で三三七拍子でライブは大団円。
ステージを去る港の後ろ姿はおしり丸見え。最後にBGMとして流された新曲「元気を出して声出して勇気を出してケツ出して」にもグッと来た。
結成30周年、なんだかんだとライブを重ね、ニューシングル「来世は叶姉妹」をリリースするなど充実した活動を行ってきたグループ魂。年末のライブでアニバーサリーイヤーはファイナルとなるが、気力と体力が続く限りやってほしいと願っているのは筆者だけではないだろう。何も考えずに笑いまくり、パンクロックで盛り上がれるこのバンドのステージが我々の人生にはどうしても必要だ。
TEXT BY 森朋之
PHOTO BY 広川智基
グループ魂『羽田で単発のバイト』
2025年9月10日 Zepp Haneda(TOKYO)
セットリスト
1.モテる努力をしないでモテたい節
2.ウィリアム・カウパー
3.チャーのフェンダー
4.平成の記憶がない!
5.来世は叶姉妹
6.介護ME!
7.High School
8.ラブラブ❤マンハッタン
9.I was PUNK!!~グループ魂にあっちゃん(NEW ROTE’KA)は?~
10.DRINKIN’BOYS/ニューロティカ
11.職務質問
12.オクサーヌ
13.さかなクン
14.ケーシー高峰
15.本田博太郎~magical mystery UPAAAAAAAAA!!!!!~
16.Over 30 do The 魂
17.君にジュースを買ってあげる❤
18.それでも生きなきゃ死んじゃう音頭
19.モテる努力をしないとモテないゾーン
20.もうすっかりNO FUTURE!
21.高田文夫
「羽田で単発のバイト」公式プレイリスト!
https://kmu.lnk.to/haneda
ライブ情報
12月26日(金)渋谷LINEキューブ!にてワンマンライブ
詳細情報は後日
グループ魂 OFFICIAL SITE
https://www.g-tamashii.com/

















