今年、デビュー40周年を迎えた久保田利伸。「Missing」「LA・LA・LA LOVE SONG」などの名曲解説をはじめ、時代を超えて愛され続けている代表曲・ヒット曲の紹介。さらに音楽性やライブパフォーマンスの特長など、“King of Japanese J-Soul“と称される久保田のキャリアと音楽的な魅力を紐解く。
■デビュー40周年イヤーを迎えた久保田利伸とは?

・出身:静岡県
・生年月日:7月24日
・星座:獅子座
・血液型:O型
・メジャーデビュー:「失意のダウンタウン」(1986年)
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◎日本の音楽界へ影響を与えたオリジネーター
R&B、ソウルミュージックに大きな影響を受けた久保田利伸は、学生時代から本格的な音楽活動をスタート。1985年に作曲家としてデビューし、田原俊彦、岩崎宏美、小泉今日子、鈴木雅之、荻野目洋子などに楽曲を提供。ブラックミュージックのテイストを反映させた作風で注目を集める。
そして1986年、シングル「失意のダウンタウン」でメジャーデビュー。「TIMEシャワーに射たれて…」のスマッシュヒットで知名度を高め、「You were mine」「GIVE YOU MY LOVE」など数々のヒットチューンを生み出す。音楽性、歌唱力、ファッションセンス、パフォーマンスを含め、80年代の音楽シーンに新鮮なインパクトを与えた久保田は、言うまでもなく、J-R&Bの潮流を作り出したオリジネイターだ。
▼失意のダウンタウン
▼TIMEシャワーに射たれて
▼You were mine
▼GIVE YOU MY LOVE
◎アメリカでの功績
88年以降は海外を見据えた活動へと移行。アメリカのR&Bシーンで活躍する気鋭のミュージシャンを起用し、自らのルーツをさらに発展させた。さらに「地球を相手に歌ってゆきたい。」という信念のもと、1993年からニューヨークに移住。1995年USコロンビア・レーベルから全世界リリースとなるアルバム『SUNSHINE, MOONLIGHT』を発表し、日本とアメリカを軸にした活動へと移行した。
◎祝デビュー40周年
久保田利伸の評価と人気を決定づけたのは、1996年リリースのシングル「LA・ LA・ LA LOVESONG」。200万枚を超えるセールスを記録したこの曲によって久保田は、日本を代表するアーティストへと駆け上がった。
▼久保田利伸 – LA・LA・LA LOVE SONG with NAOMI CAMPBELL [Official Video]
2000年代以降も精力的な活動を展開。KREVA、MISIA、AI、JUJU、三浦大知など様々なアーティストとのコラボレーションによってリスナーの幅を広げ、現在も多くのアーティストからのリスペクトを集め続けている。そして今年はデビュー40周年。ベストアルバム『THE BADDEST Ⅳ&Timeless Hits』がリリースされるなど、その存在に改めて注目が集まっている。
▼久保田利伸 meets KREVA – M☆A☆G☆I☆C [Official Video]
▼久保田利伸 feat. MISIA – FLYING EASY LOVING CRAZY [Official Video]
▼久保田利伸 – Soul 2 Soul feat. AI [Official Video]
▼JUJU 「Englishman In New York (Duet with 久保田利伸)」Recording Digest + Interview
■久保田利伸が支持されつづける理由
◎Japanese R&Bのパイオニア
スティービー・ワンダーから始まり、60年代以降のソウル、R&Bなどを10代の頃から愛聴していたという久保田利伸。ブラックミュージックの歴史などもしっかり学んだうえで生み出される彼の楽曲は、ルーツへのリスペクトと独自の表現が絡み合い、まさに唯一無二の音楽へと結実している。日本語の響きや音色を活かしたフロウ、解放感と奥深さを同時に奏でるボーカリゼーションを含め、80年代中盤から始まったJ-R&Bの流れは間違いなく、久保田利伸から始まっていると言っていいだろう。常にスクラップ&ビルドを続ける姿勢もまた、彼がリスペクトを集め続けている理由だ。
◎カリスマ性溢れるライブパフォーマンス
久保田利伸の本領が発揮されるのは、やはりステージだろう。圧倒的なボーカルのスキルはもちろんだが、リズムやグルーヴを可視化するような身体の動き、観る者をリラックスさせるユーモアに満ちたMCなど、一度でも彼のライブを体感した人は「こんなにすごくて楽しいんだ?!」という実感を得るはずだ。アリーナからジャズクラブまで、会場によって多彩なパフォーマンスを魅せているのも彼の特長。キャリアを通して積極的にライブやツアーを行ってきた久保田自身も、ステージの上こそが自分の表現の場だと感じているのではないだろうか。
◎ジャンルにとらわれず進化し続ける音楽
ネオソウル、オルタナR&B、さらにヒップホップにおけるトラップやジャージー・クラブなど。常に変化を続けるブラックミュージックをリアルタイムで吸収しながら、久保田自身もまた自らの音楽を進化させてきた。またKREVA、MISIA、三浦大知などルーツを同じくするアーティストはもちろん、2024年はWONKとのコラボ楽曲を発表、2025年の夏は音楽フェス『a−nation2025』でDa−iCEの大野雄大、花村想太と共演するなど、音楽的交流の範囲はきわめて広い。ジャンルの枠に捉われず、幅広いアーティストと互いのスキルやセンスを交歓し合う。そのスタンスもまた、久保田の大きな魅力なのだと思う。
■Z世代からも支持される名曲「Missing」とは?
久保田利伸「Missing」
・リリース:1986年
・作詞:久保田利伸
・作曲:久保田利伸
・収録作品:1stアルバム『SHAKE IT PARADISE』
「Missing」は1986年9月にリリースされた1stアルバム『SHAKE IT PARADISE』に収録されたバラードナンバー。シングル曲ではないものの、リリース後から徐々に注目を集め、現在では“久保田利伸のキャリアを代表する名曲”として広く知られている。
ホーリーな雰囲気のシンセの音色、R&Bのフレイバーを色濃く反映したメロディ、そして、ソウルフルとしか言いようがないボーカルが共鳴し合う「Missing」。
彼のルーツである、海外のブラックミュージックと日本語の響きを活かした歌詞のバランスの良さを含め、それまでの日本にはなかった新たなバラード曲のスタイルを提示したエポックメイキングな楽曲と言えるだろう。オーセンティックという形容が似合うこの曲は、音楽ファンのみならず、数多くのアーティストも魅了。米倉利紀、中島美嘉、槇原敬之、2AM、ボーイズ・トゥ・メンなど、国内外のアーティストにカバーされたことでも知られている。Z世代からの支持も強く、まさにタイムレスな魅力を放ち続けている名曲だ。
■歌詞あり:「Missing」の意味を紐解く
「Missing」
言葉にできるなら 少しはましさ
互いの胸の中は
手に取れるほどなのに震える瞳が 語りかけてた
出会いがもっと 早ければとI love you 叶わないものならば
いっそ忘れたいのに
忘れられない 全てが
I miss you 許されることならば
抱きしめていたいのさ
光の午後も星の夜も babyときめくだけの恋は
何度もあるけれど
こんなに切ないのは
きっと初めてなのさ染まりゆく 空に包まれて
永遠に語らう 夢をみたI love you 届かないものならば
見つめかえさないのに
瞳奪われて 動けない
I miss you 許されることならば
抱きしめていたいのさ
光の午後も星の夜も baby黄昏に精一杯の息を吸って
目を閉じるだけ ohI love you
僕だけの君ならば
この道をかけだして
逢いに行きたい 今すぐに
I miss you 許されることならば
抱きしめていたいのさ
光の午後も星の夜も babyMissing you
“Missing”とは“見つからない”“欠けている”という意味。本来あるべきはずのものがない、見つからないーー楽曲「Missing」で描かれているのは、自分(たち)ではどうしようもできない関係性だ。
《言葉にできるなら 少しはましさ》という歌う出しから、リスナーの心のなかに痛みにも似た切なさを与える「Missing」。《出会いがもっと早ければ》《僕だけの君ならば》といったフレーズは、“君”には既にパートナーがいることを示唆している。どんなに惹かれ合っていても、二人の距離が縮まることはない。簡単に諦めることはできないけれど、おそらくは永遠に重なることはない。そんな狂おしい状況を詩情豊かに、そして、ソフィスティケイトされた表現で映し出しているのだ。
リリースから40年近く(!)が経過しているが、「Missing」で描かれる“決して届かない愛”というテーマは今もまったく古びていない。その要因はおそらく、二人の情感をシンプルかつ普遍的な表現で綴っていること。男性と女性を入れ替えても成立するこの曲の歌詞は、現代のジェンダー観に照らしてもまったく違和感がなく、それも若い世代から支持を集め続けている理由なのだろう。
■これぞ時代を越える名曲!「LA・LA・LA LOVE SONG」
久保田利伸 with ナオミ・キャンベル「LA・LA・LA LOVE SONG」
・アーティスト:久保田利伸 with ナオミ・キャンベル
・リリース:1996年5月13日
・作詞:久保田利伸
・作曲:久保田利伸
・タイアップ情報:フジテレビ系ドラマ『ロングバケーション』主題歌
1996年5月にリリースされた「LA・LA・LA LOVE SONG」は久保田利伸の最大のヒット曲にして、90年代J-POPシーンを代表する屈指の名曲だ。
伝説的ファッションモデル、ナオミ・キャンベルとのコラボのきっかけは、両者が偶然にもニューヨークの同じマンションに住んでいて、意気投合したこと。久保田は、直接ナオミに交渉し、世紀のコラボレーションが実現した。
さらに、ヒットを後押ししたのが、ドラマ『ロングバケーション』の主題歌になったこと。木村拓哉、山口智子が主演、北川悦吏子が脚本を担当したこのドラマは、最高視聴率36.7%を記録。社会現象となった“ロンバケ”との相乗効果によって、「LA・LA・LA LOVE SONG」は200万枚を超えるビッグセールスを叩きだした。またアルバム『LA・LA・LA LOVE THANG』に収められた「LA・LA・LA LOVE SONG ~Midnight Piano Version」も人気を集めた。
▼LA・LA・LA LOVE SONG ~Midnight Piano Version
心地よいグルーヴとファンキーな歌声をポップに昇華したこの曲は、三浦大知、EXILE、Nissyなどによってカバーされ、さらに幅広い世代へと浸透。まさに、時代を超えた名曲として愛され続けている。
▼EXILE – LA・LA・LA LOVE SONG (EXILE LIVE TOUR 2011 TOWER OF WISH ~願いの塔~)
▼「LA・LA・LA LOVE SONG」-2018年 2nd LIVE ~FINAL~in TOKYO DOME-
■歌詞あり:思わず歌いたくなる!「LA・LA・LA LOVE SONG」の意味とは?
「LA・LA・LA LOVE SONG」
まわれ まわれ メリーゴーラウンド
もう決して止まらないように
動き出したメロディ
LA・LA・LA・LA・LA LOVE SONGWanna Make Love
Wanna Make Love Song, Hey Baby…ドシャ降りの午後を待って 街に飛び出そう
心に降る雨に 傘をくれた君と「まっぴら!」と横向いて 本音はウラハラ
でも そのままでいい お互いさまだからめぐり会えた奇跡が
You Make Me Feel Brand New
涙の色を変えた
And I Wanna Love That’s Brand New息が止まるくらいの 甘い口づけをしようよ
ひと言もいらないさ とびきりの今を
勇気をくれた君に 照れてる場合じゃないから
言葉よりも本気な LA・LA…LOVE SONGWanna Make Love
Wanna Make Love Song, Hey Baby…知らぬ間に落してた 小さなかけらを
隙間なく抱きよせ 肌でたしかめあう宇宙の見えない夜
You Are My Shinin’ Star
かまわない 君が見える
And I Wanna Be Your Shinin’ Starまわれ まわれ メリーゴーラウンド
もう決して止まらないように
動き出したメロディ LA・LA…LOVE SONG
とめどなく楽しくて やるせないほど切なくて
そんな朝に生まれる 僕なりのLOVE SONG溜息の前に ここにおいでよ
息が止まるくらいの 甘い口づけをしようよ
ひと言もいらないさ とびきりの今を
勇気をくれた君に 照れてる場合じゃないから
言葉よりも本気な LA・LA…LOVE SONGLA・LA・LA…
Wanna Make Love
Wanna Make Love Song, Hey Baby…
《まわれ まわれ メリーゴーランド》という冒頭のフレーズがとにかく秀逸。心地よいグルーヴを放つと同時に、恋愛に向かっていくときの多幸感がたっぷりと含まれていて、この楽曲のコンセプトを端的に表している。聴こえてきた瞬間に「LA・LA・LA LOVE SONG」だ!と一発でわかる強さが、この一節には確かに宿っているのだ。
奇跡のような出会い、なかなか素直になれない時期を経て、《息がとまるくらいの 甘い口づけをしよう》という情熱的なラインへと至るストーリー性も見事。この構成は、もちろんドラマ『ロングバーケーション』の世界観とリンクしているのだが、ドラマを知らない人でも“わかる!”と叫びたくなるような“恋に落ちるときの気持ちよさ”をダイレクトに表している。
さらに特筆すべきは、口ずさんだときの語感の良さ。気持ちよく跳ねるビートとともに音階を駆け上がっていく《LA・LA・LA・LA・LA LOVE SONG》というサビのフレーズを聴けば、誰もが“歌ってみたい”という欲望を覚えるはずだ。聴いてよし、歌ってよし。フィジカルな快楽へと誘われる感覚こそが、この楽曲のキモなのかもしれない。
■昭和から令和までの名曲揃い!聴くべき楽曲5選
「LOVE RAIN 〜恋の雨〜」
フジテレビ系月9ドラマ『月の恋人〜Moon Lovers』の主題歌として制作された35thシングル(2010年)。タイトにしてグルーヴィーなトラック、心地よく跳ねるようなメロディライン、解放感に溢れたサビのフレーズが見事に共存している。《止まらない雨》は、どんどん熱く盛り上がっていく恋愛のメタファー。ドラマのストーリーと重なりつつ、聴く者に恋愛のドキドキ感を疑似体験させてくれる。華やかさと軽やかさを併せ持ったボーカルも絶品だ。
「流星のサドル」
1stアルバム『SHAKE IT PARADISE』(1986年)の1曲目に収められたアッパーチューン。《夜を越えてゆくのさ 流星のサドルで》という最初のフレーズがとにかく鮮烈(作詞は80年代の久保田の楽曲を数多く手がけた川村真澄が担当)。アタック強めのドラムの打ち込み、アグレッシブなベースラインを含め、80年代の洋楽R&Bポップのエッセンスをしっかりと取り入れている。デビュー当初の瑞々しい勢いに溢れた歌声にも注目してほしい。
「AHHHHH!」
バラエティ番組『進ぬ!電波少年』の企画『電波少年的アフリカ・ヨーロッパ大陸縦断ヒッチハイクの旅』応援歌。ギター、DJなどはアメリカのトップミュージシャンが担当し、90年代半ばのUS・R&Bシーンと強くリンクした楽曲に仕上がっている。日本語をグルーヴさせるセンスと技術もさらに向上。メジャーデビューから10年が経ち、アーティストとしてのさらなる進化が感じ取れる。《You got to keep on movin》というフェイクも聴きどころだ。
「the Beat of Life」
約3年8か月のインターバルを経て届けられた配信シングル。どっしりとした手触りのビートとベースライン、シリアスにして力強いメロディラインが心に響くミディアムチューンに仕上がっている。《そう まったく悔いはない》という、堂々たる言葉ではじまる歌詞も素晴らしい。これまでの人生を振り返り、良いこと、良くないことのすべてを肯定したうえで、さらに前に進むーー。濃密なキャリアを送ってきた久保田にしか体現できない人生讃歌だ。
「諸行は無常」
デビュー40周年を迎えてリリースされた最新シングル。ニュース番組『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のエンディングテーマとして書き下ろされたこの曲で久保田は、すべてが変化し続ける無常の世界を見つめつつ、《マッチョな世界で しなやかにflow》と軽やかに歌い上げている。あらゆる場面で分断が進む現在において、“柔らかく、優しく立ち向かっていこう”というメッセージがはっきりと感じられるミディアムチューンだ。
■ベストアルバムにツアーと40周年も駆け抜ける久保田利伸をチェック!
2013年以降のヒット曲による『THE BADDEST IV』とオールタイムの名曲を収めた『Timeless Hits』の2枚組ベストアルバム『THE BADDEST Ⅳ&Timeless Hits』をリリース。さらに9/13からは40周年を記念したホールツアー(全国30か所全35本)『Big up!』、2026年3月、4月には東京、大阪、名古屋、静岡にてアリーナツアー『Big up! “Supreme”』も決定。アニバーサリーイヤーを迎え、“King of J-Soul”の輝きはさらに増していくことになりそうだ。
▼40th Anniversary Tour 2025-26「Big up!」
Arena Tour 2026「Big up! “Supreme”」
https://www.funkyjam.com/kubota/live/
TEXT BY 森 朋之
▼久保田利伸 最新情報はこちら
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/2707/
▼楽曲リンク:久保田利伸
https://tftimes.lnk.to/ToshinobuKubotaT1



