THE F1RST TIMES

INTERVIEW

2022.07.25

にしながニューアルバムのタイトルを“1999”にした、ふたつの理由

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之
PHOTO BY 東 京祐
HAIR & MAKE UP BY chisato kou
STYLING BY hao

■にしなニューアルバム『1999』インタビュー

2021年4月7日に1stアルバム『odds and ends』(読み:オッズ・アンド・エンズ)をリリースし、新世代音楽シーンを象徴するアーティストとして注目を集めている、にしなからニューアルバム『1999』(読み:ナインティーンナインティナイン)が届けられた。

「東京マーブル」(ドラマ『お耳に合いましたら。』エンディングテーマ)、「debbie」(読み:デビー/映画『ずっと独身でいるつもり?』主題歌)などの話題曲の他、にしなが音楽仲間と離れて自分の道を進むことを決意して作った「青藍遊泳」、デビュー前から弾き語り動画が注目を集めていた「ワンルーム」のROTH BART BARON(ロット・バルト・バロン)によるアレンジバージョンを収録。

生々しい感情の揺れを捉えた楽曲、ジャンルを超えた音楽性、表情豊かなボーカリゼーションなど、にしなのあらたな進化が感じられる作品に仕上がっている。

メジャーデビュー以降の変化、アルバムの制作プロセス、今後のビジョンなどについて、にしな本人の言葉で語ってもらった。

にしな『1999』インタビュー5 PHOTO BY 東 京祐

■デビューから約1年、同級生は新社会人に。変化する環境

──2ndアルバム『1999』が完成しました。前作『odds and ends』以上にバラエティに富んで、ポップな作品になりましたね。

にしな:まだ出来たばかりで、「こういうアルバムです」と言うのが難しいんですけど(笑)。たしかにバラエティに富んでいるし、いろいろな角度の“にしな”が詰まっているなとは思いますね。曲を作った時期もそれぞれ違っているので、いろんな曲が出来たのかなと。

やっていること自体は実はシンプルで、全部ギターを持って、曲を作るから始まっているんですね。結果的にいろんな音になってますけど、本人的には“いろんなことをやった”という感じはなくて。

前作と違うところは、ドラマや映画のタイアップのお話をいただいて、テーマありきで書くことが増えたことかな。そう考えると、幅は広がっているのかもしれません。

にしな『1999』インタビュー8 PHOTO BY 東 京祐

──メジャーデビューからの約1年、かなり変化もあったのでは?

にしな:最初は右も左もわからなくて、例えば曲のアレンジひとつとっても、アレンジャーの方やスタッフの皆さんとのやりとりに難しさを感じることがあったり…もちろん、自分以外の意見や考えを知る楽しさもありつつ、楽しいのと同じぶんだけ悩んだ時間も多かった気がします。

それだけ私もそうですが、私と同じように関わってくださる全員がにしなの音楽に真剣に向き合ってくれている結果でもあるのでありがたいですね。

あと、ちょうど年齢的に社会人になる歳で。大学の同級生は会社に入って、朝ちゃんと起きて、仕事をする…という生活になりましたが、私はそれとはまったく違うので、そのことにちょっと不安を覚えたり(笑)。環境もガラッと変わりましたからね。

■タイトル“1999”と名づけた理由

──なるほど。アルバムのタイトルを“1999”にしたのはどうしてですか?

にしな:「1999」という曲も入っているんですけど、アルバムタイトルにしたのは、ふたつ理由があって。ひとつ目は一枚目のアルバムから一年経って、デビューしてから1歳。なので、私は1998年生まれなので、1年足して“1999”にしました。

もうひとつは、これは曲のテーマでもあるんですが、1999年ってノストラダムスの大予言の年じゃないですか。私は当時1歳だったので覚えてないですけど、もしも今、地球が終わるってなったら、どうなるんだろう? …と考えたんですよ。

自分なりにいろいろ想像したんですけど、嫌いな人や憎んでいる人のことを考えて過ごすより、好きな人や好きなものに残りの時間を費やせたら良いなって。この時代からこそ、そういうことを考えたのかもしれないです。

──コロナ禍だったり、戦争が起きている時代ですからね。

にしな:そうなんですよね。何が本当で、何がウソかもわからないし、この先も何があるかわからないなと思うこともあるので。

にしな『1999』インタビュー6 PHOTO BY 東 京祐

──このメッセージは、同じ時代に生きている人々、同世代に向けているところも?

にしな:どうだろう? 同世代の方だけではなく、聴いてもらって、「好きだな」と思ってもらえたらナチュラルにうれしいですけどね。

──そうですよね(笑)。ちなみに、にしなさんはいわゆるZ世代ですが、そのことについてはどう感じていますか?

にしな:「え、私も入っていいんですか?」と。どこで聞いたか忘れてしまったので、信ぴょう性は高くない話ですが、2000年代以降に生まれた世代はポジティブで自己肯定感が高くて、その前はネガティブな人が多いらしく。なので、1998年生まれは、ギリ“ネガティブ世代”だなと(笑)。私自身、めっちゃ自己肯定感が強いわけではなく、落ちる時は落ちるタイプではあります。

■ノリの良さを重視した「アイニコイ」「FRIDAY KIDS CHINA TOWN」

──そういう感情の起伏は、楽曲にも反映されていると思います。では、収録曲についていくつか聞かせてください。1曲目の「アイニコイ」は、高揚感のあるギターロック系の楽曲。4月17日のワンマンライブ『虎虎』東京・中野サンプラザ公演でも披露してましたね。

にしな:やりました! 「アイニコイ」はノリが良くて、楽しくやれる曲にしたかったんです。キュッと、ワチャッとした感じというか(笑)。ライブも意識してましたね。

私、(ライブの)お客さんとしてはなかなか「イエーイ!」っていう目に見えて盛り上がることが難しいタイプなんですが、私のようなタイプの方でもみんな一緒になって楽しい時間を過ごせれば良いなと。

初披露の時は緊張感がありましたけど、会場の皆さんが優しく見守ってくれてうれしかったです。

にしな『1999』インタビュー7 PHOTO BY 東 京祐

──歌詞にはどんなテーマがあったんですか?

にしな:歌詞とメロディが同時に出てきたんですが、誰かに振り回されていて、それが心地よく感じてるというか。言葉遊びみたいな感じもあったし、そこまでしっかりテーマを決めてなかったかも。実際、結末や目的を決めずに、頭から書いていったんですよ。

あと、歌っていて楽しい! と思えるのもの作りたいという気持ちもあって、もしかしたらそこがいちばんのポイントだったかもしれません。

曲によって伝えたいメッセージが明確にあるもの、意味合いよりも音楽に乗れることを重視したり、いろんなパターンがあります。

──なるほど。「FRIDAY KIDS CHINA TOWN」も言葉のノリを重視して作ったのですか?

にしな:この楽曲は、“FRIDAY KIDS CHINA TOWNって歌いたい”というところから始めました。このワード自体、インパクトがありますが、(このワードから)見えてくる世界観があるなとも思ったので。

ノリが良い曲は、歌った時や聴く時の感覚を大事にしていて、後からバランスを取るというか。そういう作り方になることが多いかもしれないですね。

■自分が持つ感情を形にした「夜になって」

──逆に“歌いたいこと”から始まった曲もあるんですか?

にしな:「夜になって」はまさにそうです。自分が感じた感情を曲にしたいと思って作りました。人と会話していて、上手に自分の感情を伝えられなくて、もどかしく感じることがあって…。

曲を書くことで頭を整理したかったし、“本当はこう伝えたかった”ということを表現したかったというか。

──実際、曲を作ることで感情が整理されるものですか?

にしな:される気がします。ちょっと矛盾してるかもしれないけど、人と話していて、“私、こんなこと考えてたのか”と気づくことがあって。曲を書くことは、その感覚と似てるかもしれません。

■にしなが自問自答で導き出した多様性「U+」

──「U+」には、“何者になれずとも/もうきっと大丈夫”“誰もが幻を信じてやまない”という歌詞があります。アルバムタイトルのテーマとも繋がるフレーズですね。

にしな:「U+」は、CMのタイアップ曲(GMOクリック証券テレビCM『New Life is …』シリーズの第2弾「もうきっと大丈夫」篇CMソング)で、「にしなさんなりの多様性を描いてほしい」という依頼だったんですね。

自分にとって多様性って何だろう? と問いかけていくうちに、走り続けて、息が切れて、心臓が動いていることを実感した時に、それが“自分はここに存在する”ということを教えてくれる…と思ったんです。

──自分自身の“生”を実感し続けることが、多様性に繋がると。にしなさん、そういうことを大学で学んでいたんですよね?

にしな:そういった授業もありました。いちばんはジェンダーのことなんですけど、多様性というテーマも含まれていたので。

多様性っていろいろな捉え方ができる言葉ですが、私は元々“あなたはこう”と決められるのが好きじゃないし、違和感があって…。

にしな『1999』インタビュー4 PHOTO BY 東 京祐

──中野サンプラザのライブでも、「この広い宇宙の中を、私たちがどこまでも自由に泳いでいけることを願っています」と言ってましたよね。

にしな:決まった枠の中で生きていると、どうしても苦しくなると思うんですね。皆さんそれぞれ、にしなのイメージを持ってもらうのは良いと思うんですけど、自分では自分の枠を決めないようにしています。

■あの頃の自分に対する憧れがある「ワンルーム」

──「ワンルーム」についても聞かせてください。元々は2018年4月に弾き語りをYouTubeにアップした楽曲で、この曲でにしなさんのことを知った人も多いと思います。

にしな:4年以上前ですね。友達の恋の話を聞いて──まったく同じではないですけど──そこから物語を作って。その頃はMOROHAさんやMy Hair is Badさんをよく聴いていて、曲中に語りを入れたい! と思ったんですよね。

──「そういえば今朝実家からリンゴ届いてたよ」とセリフから始まる曲ですからね。アルバムに収録されているのは、三船雅也(ROTH BART BARON)によるアレンジバージョン。にしなさんにとっては、どんな曲ですか?

にしな:YouTubeに上がってる音源は、ちょっと恥ずかしくて最後まで聴けないんですよ(笑)。ただ、歌うぶんにはまったく恥ずかしさはなくて。あの頃の自分に対する憧れも少しあります。

──“そのときにしかできないこと”があった、と?

にしな:そうですね。アレンジもそうだし、歌い方も変わってる部分があるかもしれないけど、“曲の世界に連れていかれる”という感じは以前も今も変わらなくて。ライブもそうで、目の前にいる人数は違いますけど、曲の主人公に対する思いはまったく変わりませんね。

■架空のぬいぐるみを歌った「モモ」

──「モモ」も印象的でした。ぬいぐるみのモモをテーマにした弾き語りの曲ですが、こういう楽曲もにしなさん“らしさ”なのかなと。

にしな:弾き語りの曲も入れたかったんですよね。スタッフの方に「(ぬいぐるみをテーマに歌うという、人を限定するような)小さい世界を歌っているから、“みんなの曲”にはならないかもね」と言われて、「いや、そんなことはないぞ!」と、さらに愛着が増して(笑)。

──(笑)。やはりアコギの弾き語りは、にしなさんの原点ですか?

にしな:そうだと思います。先程も言いましたけど、ほとんどの曲は弾き語りから始まってるし、リズムやテンポを含めて、いちばん自由に歌える方法のひとつなので。

■前進あるのみ!大事な曲だと語る「青藍遊泳」

──そして「青藍遊泳」は、ドラマティックなメロディが心に残るナンバー。音源化を望まれていた曲ですね。

にしな:「青藍遊泳」は書いたきっかけが明確にある曲です。今はひとりで“にしな”として活動していて、音楽を始めた時から(ソロとしての)この形はずっとあったんですが、その途中にはグループを組んでいたこともあって。

グループを抜けて、「ここから先は、ずっと“にしな”としてやっていこう」と決めたタイミングがあったんです。グループとしてのラストライブをやったんですが、ライブが終わった後のBGMでスタッフの方がユニコーンの「すばらしい日々」(1993年にリリースされたバンド解散前の最後のシングル)をかけてくださって。

ライブ当日はいっぱいいっぱいで気づけなかったんですけど、後からこの曲を流してくれたことを知り、改めて歌詞を読みながら聴いたんですが、最後に“君は僕を忘れるから/そうすればもう すぐに君に会いに行ける”というフレーズがあって。

見送ってもらった身としては、「ここから先は、みんなのことを忘れるくらい、自分の音楽を夢中でやるべきだし、そうなれる人でいたい」と思ったんですよね。その思いのままに書いたのが「青藍遊泳」なんです。

──強く感情が動いた時に生まれた曲なんですね。にしなさんのキャリアにとっても大事な楽曲になっているんですか?

にしな:うん、そうですね。「大事な曲だな」という感覚はずっとあるし、自分自身、常に前に進んでいきたいという気持ちもあります。音源にしてアルバムに収録することで、改めて決意を示すことになるのかなと。

にしな『1999』インタビュー9 PHOTO BY 東 京祐

──ひとりで活動することを選んだことは正しかったと、証明できてる手ごたえもあるのでは?

にしな:そうだとうれしいんですけどね。グループには、それぞれ音楽をやっていた友達が集まっていたんですけど、みんなの背中を追いかけていたところもあって。みんなに対しては、今も「すごくキラキラしてるな。一生懸命に音楽をやっていて素敵だな」と思うと同時に、みんなにも(自分のことを)同じように感じてほしくて。「青藍遊泳」を書いた頃より、少しでも進んでいたらいいなって思っています。

──アルバム『1999』によって、にしなさんの活動自体も次のフェーズに進むと思います。

にしな:ライブを通して、このアルバムをたくさんの人に届けたいし、新しい人たちにも出会えたらいいなってナチュラルに思ってます。小さい時から「歌う人になれたらいいな」と思ってたし、今も歌うことがとにかく好きで。会場に来てくれた人たちの前で歌って、一緒に空間を作れたらうれしいです。音楽活動のなかで、いちばん好きなことかもしれないですね。

にしな『1999』インタビュー1 PHOTO BY 東 京祐

【衣装協力】
Fauvirame
https://fauvirame.com/

KAIKO
https://kaiko-official.com/

kudos
https://kudoskudoskudoskudos.com/

PERVERZE
https://perverze.jp/

SARARTH
https://www.sararth.com/

TAN
https://www.tantantantantan.com


リリース情報

2022.07.27 ON SALE
ALBUM『1999』


プロフィール

新時代、天性の歌声と共に現れた新星。ミュージシャン・にしな。Spotifyがその年に注目する、次世代アーティスト応援プログラム『RADAR:Early Noise』に選出。同年4月7日、1stアルバム『odds and ends』をリリース。6月25日にはZepp Tokyoにて自身初となるワンマンライブ『hatsu』を開催。2022年4月には、東京と大阪でのホールワンマンライブ『虎虎』を開催。そして、自身2作目となるアルバム『1999』(読み:ナインティーンナインティナイン)を7月27日にリリース。

にしな OFFICIAL SITE
https://nishina247.jp/