TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期エンディングテーマ「SKETCH」で注目を集めるアーティスト・秋山黄色。彼は一体何者なのか?
▼『僕のヒーローアカデミア』ヒロアカ6期ED映像(ノンクレジット)/EDテーマ「SKETCH」秋山黄色/MY HEROACADEMIA 6th season ED
プロフィールや音楽的な特徴、新曲「SKETCH」の聴きどころ、さらに彼を語るうえで知っておきたい人気曲に触れることで解明していく。
■秋山黄色(あきやまきいろ)プロフィール
・生年月日:1996年3月11日
・出身地:栃木県
・OFFICIAL SITE https://www.akiyamakiro.com/
・Twitter @ILikeAkairo
・TikTok akiyamakiro_official
・YouTube https://www.youtube.com/c/AkiyamaKiro
・Instagram(STAFF)akiyamakiro_stf_official
1996年3月11日生まれ、栃木県出身のソロアーティスト。
アーティスト名の“秋山”は母親の旧姓、“黄色”は小学校時代に黄色の車を敵視していたことから付けられたあだ名に由来する。
学生時代はゲーム実況やボーカロイド動画などにハマっていた“引きこもり”だったいう秋山は、中学生の時にTVアニメ『けいおん!』の音楽をきっかけにベースを弾き始めた。その後ギターを手にして、高校入学後に楽曲制作をスタート。YouTubeやSoundCloudなどネット上で楽曲を発表するようになった。
2017年末からは地元の宇都宮、東京を中心にライブ活動も開始。自らの姿や感情をリアルに投影した歌詞、鋭利なギターサウンドとポップなメロディを軸にした楽曲は徐々に注目を集め、2018年に発表した「やさぐれカイドー」「猿上がりシティーポップ」がSpotifyバイラルチャートの上位にランクイン。
▼秋山黄色「やさぐれカイドー」
▼秋山黄色「猿上がりシティーポップ」
翌2018年には『SUMMER SONIC』『ROCK IN JAPAN』などの大型フェスに出演。2020年3月にメジャー1stアルバム『From DROPOUT』をリリースした。
2021年にシングル「アイデンティティ」(アニメ『約束のネバーランド』Season 2オープニングテーマ)を含む2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』、2022年には3rdアルバム『ONE MORE SHABON』を発表。“一鬼一遊TOUR”と題したツアーを開催するなど、より精力的な活動を見せている。
▼秋山黄色 『アイデンティティ』 ≪秋山黄色「一鬼一遊TOUR Lv.2」 Zepp Tokyo~ 2021.03.10(Thu)~≫
引きこもり気味だった少年が、自宅録音で作った楽曲を発表し、メジャーシーンで輝く…秋山黄色の存在は、新世代のロックヒーローと呼べるだろう。
■すべてひとりで行う制作スタイル
作詞・作曲・演奏・歌唱・録音・ミックスなどをひとりで行う“自宅録音”で楽曲制作を始めた秋山黄色。そのこだわりはアートワークにもおよぶ。現在のスタイルに至ったきっかけは、スピッツの「チェリー」を弾き語りした際、メロディや歌詞をうろ覚えのまま歌ってみたら「意外と良いな」と思ったことだとか。
▼スピッツ / チェリー
初期は自分自身や友達のことを歌った“リズムネタ”のような楽曲が中心で、その後彼自身の音楽的なルーツであるギターロックのテイストを取り入れ、印象的なギターリフ、生々しいグルーヴ感をたたえたサウンドメイク、そしてキャッチーな歌のメロディなどを中心にした作風を作り上げていった。
基本的にひとりで完結する宅録でありながら、まるでバンドのような勢いや迫力が感じられるのも、彼の楽曲の特徴である。
その時期の自分の状況や感情をダイレクトに反映した歌詞も魅力的で、1stアルバム『From DROPOUT』では、ミュージシャンとして活動する前の引きこもりだった自分を赤裸々に表現。コロナ禍で制作した2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』では、サウンド的にはポップな方向に振りつつ、リスナーに対するメッセージを感じさせる楽曲を増加。つねにリアルであることが、秋山黄色が幅広い層のリスナーに支持される最大の理由だと言える。
また、SNSで楽曲が出来るまでの過程を公開することも。
一人でCaffeine pic.twitter.com/cwmumTk1HO
— 秋山黄色 (@ILikeAkairo) August 7, 2022
2022年10月19日には、Twitterで「ファイルまとめてて制作フォルダ開いたらSKETCHができるまで苦しんでた痕跡があった」と写真とともに投稿。ファンから「苦しんだぶん、、、 めちゃめちゃいい曲になってる」といったコメントが数多く寄せられた。
ファイルまとめてて制作フォルダ開いたらSKETCHができるまで苦しんでた痕跡があった pic.twitter.com/P1JEhutp1F
— 秋山黄色 (@ILikeAkairo) October 19, 2022
■最新曲「SKETCH」で描く“君”との約束
そんな秋山黄色が苦しんだ末にようやく完成させた「SKETCH」は、現在放送中のTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期エンディングテーマとして、音楽ファンのみならずアニメファンからも高い評価を得ている。
秋山自身、以前からヒロアカのファンで、同曲に対し「思わず手を握り締めてしまうような熱さの裏にある、ちっぽけだけど大切な“立ち止まる”という事を書きました。何度だって最高のスタートを切れるよう、この曲が流れる度に何かを思い返す時間がゆっくりと流れればいいなと思います」とコメントしている。
繊細なピアノのフレーズ、“久しぶりに君の笑った顔を見た気がした”という歌詞から始まるミディアムロックチューン。
「SKETCH」で描かれているのは、弱さや欠点を抱えながら必死で生きる“君”と“僕”の姿だ。お互いに強く求め合っているのに、本心を告げることができない葛藤。そして、ずっと一緒にいられないことはわかっていても、“本当はただ手を繋ぎたいだけ”という思いに捉われてしまう切なさ。特に“ああ 絵に描いて/渡すべきなんだよ/この僕の想いも 笑う前に”という純粋な願いには強く心を揺さぶられる。『僕のヒーローアカデミア』6期の物語、そして、秋山黄色自身の祈りがひとつになった名曲である。
生々しいバンドサウンドを軸に、ピアノ、ストリングスの音色などを取り入れたサウンドも、歌詞に込められた深いメッセージを際立たせている。曲の中心を担っているのはもちろん、秋山黄色のボーカル。一つひとつの言葉に強いエモーションを与える歌声からは、シンガーとしてのさらなる成長を感じ取ることができる。
「SKETCH」の制作においてはかなり思い悩んだようだが、多くの試行錯誤を経たことで、アーティストとしての向上に繋がったのは間違いないだろう。
歌詞に込めた思いも仕掛けも話が進む度にほどけていくので、みなさんたくさん辛くなって熱くなってください
)^o^( https://t.co/xTzZDH6mAR— 秋山黄色 (@ILikeAkairo) October 18, 2022
MVのテーマは輪廻転生。強く結ばれていながらも、別れざるを得ない男女のストーリーと歌詞のメッセージ性がリンクした映像に仕上がっている。
▼秋山黄色「SKETCH」
YouTubeのコメント欄には「SKETCHの深い部分が現されてるようなMVで感動してます。私の残りの人生できっと大切な1曲になると思います」「歌声も歌詞も映像も、全てが心に沁みる。 自分より他の人を守ってしまうような誰かを守れるような人になりたいなぁ」など、“自分の曲”として「SKETCH」を捉えている言葉が数多く寄せられている。
■秋山黄色にハマる!人気曲6選
「Caffeine」
1stアルバム『From DROPOUT』収録曲。YouTubeのMV再生数は1,700万回超え。18歳当時に制作された、秋山黄色初期の楽曲。アコギによる印象的なリフから始まり、ロック、R&B、ラテンなどが混ざり合うリズムのなかで、緊張感に溢れたメロディが駆け上がる。個性的なアイデアをポップに昇華するセンスは、まさに秋山黄色の真骨頂だ。カフェインを摂取しながら過ごすひとりきりの気だるい時間を描いた歌詞、音と意味をバランスよく共存させたフロウも素晴らしい。
声とクラシック楽器だけで向き合う『With ensemble(ウィズアンサンブル)』で披露した、アコースティックバージョンも必聴である。
▼秋山黄色 – Caffeine | With ensemble
「モノローグ」
1stアルバム『From DROPOUT』の先行配信曲として発表し、カンテレ・フジテレビ系新火曜ドラマ『10の秘密』主題歌としても話題を集めた同曲。
“僕の知らないその顔は/最初から隠していたの?”というフレーズで惹きつけた直後に、ハードロック調のギターサウンドがさく裂。心地よく跳ねるリズムのなかで奏でられるメロディはドラマチックに展開し、サビに入った瞬間に圧倒的な解放感が生まれる。
“秘密”をモチーフにした歌詞を含め、表現の幅を大きく広げるきっかけになった一曲。『THE FIRTST TAKE』でも披露している。
▼秋山黄色 – モノローグ / THE FIRST TAKE
「アイデンティティ」
2021年1月リリースの1stシングルで、フジテレビ“ノイタミナ”『約束のネバーランド』Season 2オープニングテーマ。
鋭利なギターを中心にしたサウンドは緻密にしてグルーヴィー。気持ちいい起伏を描く旋律、凛とした強さとたたえたボーカルも極めて魅力的だ。苦しさ、痛みから目をそらさず、“好きに生きていたい/選んだ未来なら笑えるなら”という決意を込めた歌詞は、“約ネバ”の物語ともリンクしている。原作への愛と自身の音楽性がたっぷり注がれた名曲。
「猿上がりシティーポップ」
2018年8月に配信された初期の代表曲。オルタナティブロックの影響が感じられる鋭いギターフレーズに攻撃的なベースライン、疾走感とダイナミズムを同時に放つドラムが加わり、高揚感に溢れたロックチューンに仕上がっている。
どこかにあるはずの自分の居場所を求めながら、“辛うじて息を吸って吐いている”という状況を描いた歌詞は、10代の頃の秋山黄色そのもの。性急で荒々しいボーカルからも初期衝動が伝わってくる。
▼秋山黄色 – 猿上がりシティーポップ / THE FIRST TAKE
「シャッターチャンス」
2022年3月リリースの3rdアルバム『ONE MORE SHABON』収録曲。
ファンク、ソウル、ジャズのテイストを感じさせるアレンジ、しなやかに律動するメロディラインを軸にした、秋山黄色流のダンスチューンだ。ラップを交えたボーカルも心地いいが、この曲の根底にあるのは、夜の終わりに感じる苦味や葛藤。“出口のない痛みに向き合い/藻掻いてしまう君が誇らしい”とリスナーの苦しみを肯定するようなフレーズも強く心に残る。
「見て呉れ」
2022年2月リリースのシングル。鞘のみで戦う男を主人公にしたABCテレビ・テレビ朝日ドラマ『封刃師』主題歌だが、特筆すべきはサウンドメイクの巧みさ。
精緻な構築美とユニークなアイデアを共存させたアレンジ、意外性に満ちた楽曲展開はキャッチ―にして独創的。ハイトーンを活かしたメロディ、あえてチープな音を挿入した構成など、リスナーをハッとさせる要素が散りばめられている。ギターロックを基調にした彼の音楽性は奔放に進化を続けているようだ。
こちらも『With ensemble(ウィズアンサンブル)』でアコースティックバージョンを披露。原曲がどのように変貌をとげているのか、その違いを楽しんでほしい。
▼秋山黄色 – 見て呉れ | With ensemble
■2023年以降も駆け抜けるであろう、新世代ロックヒーロー
新曲「SKETCH」でさらに注目度を高めている新世代ロックシーンのヒーロー・秋山黄色は、年末に『COUNTDOWN JAPAN』『RADIO CRAZY』に出演。
最新情報をチェックしつつ、2023年以降の一層の飛躍に期待したい。
TEXT BY 森 朋之
LIVE PHOTO BY Ayumu Kosugi
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