Suchmosがリスペクトするアーティストを招いて行う対バンツアー『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』全9都市の同公演レポートを『THE FIRST TIMES』独占で実施中。今回は5月26日、『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』3ヵ所目となる大阪・Zepp Osaka Bayside公演、初日をレポートする。
■キャリアが倍以上のくるりを前にSuchmosが見せた異なる表情
この日の大阪の最高気温は、まだ5月だというのに30度を超えた。ライブ中にYONCE(Vo)からは「今日は夏日でしたから、ここでたっぷり汗をかいておかないと外へ出たとき『アツ〜』となっちゃうと思うので、外が涼しく感じるくらい汗をかいていってください」という煽り文句が出た。
ここまでの神奈川、愛知公演は、IO、GLIM SPANKYと同世代のアーティストたちとの対バンだったが、大阪の相手は、今年結成30周年を迎えるくるり。愛知公演のレポートで「そもそもSuchmosは、その日その場の空気を感じ取ってパフォーマンスを変えていくライブバンドであり、このツアーでは、ゲストによってSuchmos自身のライブも変わっていく」と書いたが、今年結成13年目のSuchmosから見ればキャリアが倍以上ある先輩バンドを前に、やはりこれまでとは異なる表情を見せた。
Suchmosとくるりの関係性については、YONCEが、2016年に発表されたFM802のキャンペーンソング「Hello Radio」のことを振り返って語った。これは、くるりの岸田繁(Vo、Gu)が作詞作曲を手掛け、大橋卓弥(スキマスイッチ)、木村カエラ、KREVA、DEAN FUJIOKA、藤原さくらとともに、YONCEがボーカリストとして参加した楽曲だ。
「緊張感がありまして、尊敬しているシンガーソングライターの歌をうたうんだなあって。まだデビューして1、2年目の話だったので、光栄であると同時に、大丈夫かなあ、これでOKだったのかなあ、っていうことを思いながら。そもそも曲が最高に良かったというのがあって、曲の力のおかげでとっても素晴らしいキャンペーンソングになっていたかなと思うんですけど。あのときが、アマチュアとプロの狭間の時期だったのかもしれないですけど、今もあまり変わらないような気がします」
■くるりからSuchmosへと、音楽的な美学が受け継がれている歴史の流れ
対して岸田も、Suchmosへの愛を何度も伝えた。「Suchmos、めっちゃ良いバンドでずっと好きだったんです。呼んでくださってありがとうございます」と言葉にし、「『Suchmos聴いてます』って言ったんです。そしたら『新しいアルバム(『儚くも美しき12の変奏』)めっちゃ良かったです』って言ってくれて。ありがたいなあ。京都人ちゃうから、本音で言ってくれてると思う」と会場を笑わせる場面もあった。さらに言うと、この日はトム・ヨークがアイヴァー・ノヴェロ賞の受賞式で音楽業界のトップとストリーミングサービスを批判したスピーチがネット上で話題になったが、岸田は自身のnoteでその件に触れながら若いアーティストへ夢を与えることについて言及し、最後には「今日はSuchmosというバンドが私たちを2日間公演に呼んでくれた。とても嬉しい」と記していた。
先輩として後輩バンドを称えて夢を分け与えるためか、この日のくるりは「琥珀色の街、上海蟹の朝」から始まり、「The Veranda」「ばらの花」「虹」「東京」「ブレーメン」「ロックンロール」と続く、ベストヒット揃いの黄金セットリストを組んできた。30年間にわたる名曲たちは、くるりが自分たちの好きな音楽と、圧倒的な探究心を基盤に、実験性を携えた独自の音楽をメインストリームで鳴らしてきた存在であることを証明する。くるりからSuchmosへと、音楽的な美学が受け継がれている歴史の流れを見させてもらうようなセットリストでもあった。
■Suchmos「MINT」の一節をくるり仕様に!《冷えたジンジャエールでも飲んで》
Suchmosは前日、くるりに向けてこんな言葉をSNSで公開していた。
「日常に潜む幸せも悲しみも全部まとめて溶けちゃうような
真っ直ぐな音楽愛と遊び心に溢れ返る作品を聴いて
また前に一歩踏み出すキッカケをいただいたりしてました」
— Suchmos (@suchmoz) May 25, 2026
短いながらもくるりの音楽を的確に表している言葉だと思った。そもそもくるりは音像のダイナミクスをコントロールする達人のようなバンドで、曲の展開に合わせてじわじわとサウンドスケープを変えたり、熱量を高めたりして、音の渦を動かしていく。その中で聴き手は、気づけば我を忘れて自由に身体を揺らしていたり、曲が終わる頃には気分が変わっていたりするような、音楽ならではの特別な作用を受け取ることができる。
例えば「The Veranda」であれば、上記のSuchmosの言葉通り、別れも悲しみも言葉のない感情もすべて生活に溶け込んでいる瞬間や温度を歌にして、ゆっくり歩んだり、もしくは後ろを振り返ったりしながらも、一歩踏み出すための強さが少しずつ回復していくような人間の心のテンポを表現する。そして最後にはリズムが変わり、実際に一歩踏み出せそうな感覚を聴き手の心に残してくれる。「ロックンロール」では、足早にならず転がり続ける8ビートに乗せて、人は《天国のドアを叩く》まで幸せにも悲しみにも浸りながら一歩ずつ踏み締めて進んでいくしかないし、この世とあの世はドア1枚で繋がっているのだとも感じさせてくれる。
極めつけは、最後に演奏した「潮風のアリア」。大きな海が目の前に浮かび、夜中から朝にかけて太陽が昇っていくような情景が描かれる6分超えの曲。あの場にいた人たちはそれぞれの海を想像したことだと思うが、私の中では、茅ヶ崎にあるサザンビーチの絵が浮かんだ。夜が明けると、東を見れば太陽が上がり、西を見れば富士山がドシンとある。日本人の心に染みついている「何かいいことが起こりそう」と思えるあの感じを、くるりはライブの最後に残してくれた気がした。
「このあとSuchmos、楽しんで。楽しみます」という岸田の言葉でバトンを託し、それを受け取ったSuchmosは挨拶代わりに「MINT」の《気の抜けたコーラでも飲んで》(ライブでは《冷えたコカ・コーラでも飲んで》と歌う)を「ばらの花」の歌詞に合わせて《冷えたジンジャエールでも飲んで》と変えて会場を沸かせた。そして、1発目のMCで「めちゃくちゃカッコ良い先輩バンド、くるりと過ごす2日間、めちゃくちゃ楽しみにしていました。すでに楽しませてもらいました」と返した。
■それぞれが東京をテーマにした曲が交差した際の化学反応
くるりのデビュー曲「東京」と、Suchmosのブレイクのきっかけとなったヒット曲「STAY TUNE」、それぞれが東京をテーマにした曲が交差した際の化学反応についても書き残しておきたい。くるりは京都、Suchmosは神奈川の出身(TAIHEIは富山県、Ren Yamamotoはアメリカ出身で、神奈川の大学へ入学)で、両者にとって東京は「音楽を仕事にして、勝負の場に立たされる場所」だと言える。私は中学から大学までの学生生活を京都で送り(大学時代にはくるりが主催する『みやこ音楽祭』に携わり)、東京で社会人デビューし、今は茅ヶ崎に住んでいるゆえに、両者の縁ある土地と地方から見た東京について、少しばかり近い目線を持っている気がしている。
そのうえで思うことと、この日実感したことは──「東京は冷たい」という常套句があるが、一概にそうとは言えない。田舎の人の方が冷たいことを言ってくるなあと思う時もあるし、東京には人の痛みをわかっている人がいると思うこともある。“夢が破れる怖い街”なだけではなく、たくさんの人の“自分の人生じゃないみたいにキラキラしていた瞬間”が生まれる街でもある。季節に敏感でいないと、毎日のサイクルを必死に回していれば、あっという間に1年が過ぎる街。時間に追われて、大切なはずの君への電話も何かのついでになってしまう街。地元の友達と上手く話せなくなることもある街。《もうGood night》と流行り曲の歌詞をなんとなくだけ覚えて口ずさみながら、ブランドを着てマックに行くくらいの鈍感さがないと生きていけないくらい狂騒的な街。そういった東京の多面性が、「東京」と「STAY TUNE」がクロスオーバーすることで立体的に浮かび上がった。それが、この日の特別な瞬間のひとつだった。
やはり、Suchmosのライブは毎回変化する。前回の愛知公演はGLIM SPANKYと過ごした10代の頃のような勢いと自由さのある演奏だったが、この日はくるりの影響を受けてか、全曲を通してバンドのダイナミクスやグルーヴのコントロールがタイトに仕上がっている印象を受けた。また「Life Easy」のアウトロでは毎回アドリブが歌われているが、この日はくるりの“日常に潜む幸せも悲しみも全部まとめて溶けちゃう”音楽に触発されてか、こんな言葉を乗せていた。くるりに似た、生活に根ざした優しい温度感と余白のある言葉だと感じたため、最後にそれを書き残しておきたい。
《どこへ行こう 楽しいところへ行こうよ
知ってるよ 色々あること あることないこと
でもかまわないぜ 置いていこうぜ
楽しいところ
上も下もない 右も左もない
自分の真ん中はどこ?
なんでもいい気がする
今 美しいから 楽しいから 嬉しいから》
TEXT BY 矢島由佳子
LIVE PHOTO BY 渡邉一生
『The Blow Your Mind TOUR 2026』
全都市レポート掲載決定!
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/15494/
■セットリスト
『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』
2026.05.26@大阪・Zepp Osaka Bayside
くるり
01.琥珀色の街、上海蟹の朝
02.The Veranda
03.ばらの花
04.虹
05.東京
06.ブレーメン
07.ロックンロール
08.潮風のアリア
★Suchmosのセットリストは『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』全公演終了後に公開いたします。
■ツアー情報
『Suchmos BAY SIDE TOUR 2027』
[2027年]
03/13(土)宮城・ゼビオアリーナ仙台
03/14(日)宮城・ゼビオアリーナ仙台
04/16(金)福岡・マリンメッセ福岡B館
04/17(土)福岡・マリンメッセ福岡B館
04/24(土)神奈川・Kアリーナ横浜
04/25(日)神奈川・Kアリーナ横浜
05/01(土)兵庫・GLION ARENA KOBE
05/02(日)兵庫・GLION ARENA KOBE
【チケット先行スケジュール】
オフィシャル一次(抽選)
受付期間:2026年5月14日(木) 21:30~5月31日(日)23:59
オフィシャル二次(抽選)
受付期間:2026年6月1日(月)18:00〜6月30日(火)23:59
オフィシャル三次(抽選)
受付期間:2026年7月1日(水)18:00〜7月13日(月)23:59
https://w.pia.jp/t/suchmos-tour2027/
※お一人様4枚まで購入可能。
※小学生以上有料/未就学児童無料(保護者同伴の場合に限る)、大人1名につき子供1名まで膝上可。但し座席が必要な場合はチケット必要。
『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』
05/14(木)神奈川・KT Zepp Yokohama ゲスト:IO
05/15(金)神奈川・KT Zepp Yokohama ゲスト:IO
05/20(水)愛知・Zepp Nagoya ゲスト:GLIM SPANKY
05/21(木)愛知・Zepp Nagoya ゲスト:GLIM SPANKY
05/26(火)大阪・Zepp Osaka Bayside ゲスト:くるり
05/27(水)大阪・Zepp Osaka Bayside ゲスト:くるり
05/29(金)福岡・Zepp Fukuoka ゲスト:長岡亮介
05/30(土)福岡・Zepp Fukuoka ゲスト:長岡亮介
06/04(木)北海道・Zepp Sapporo ゲスト:cero
06/05(金)北海道・Zepp Sapporo ゲスト:cero
06/13(土)宮城・SENDAI GIGS ゲスト:ハナレグミ
06/14(日)宮城・SENDAI GIGS ゲスト:ハナレグミ
06/20(土)広島・BLUE LIVE HIROSHIMA ゲスト:GRAPEVINE
06/21(日)広島・BLUE LIVE HIROSHIMA ゲスト:GRAPEVINE
06/25(木)新潟・LOTS ゲスト:The Birthday
06/26(金)新潟・LOTS ゲスト:The Birthday
07/01(水)東京・Zepp Haneda ゲスト:Fujii Kaze
07/02(木)東京・Zepp Haneda ゲスト:Fujii Kaze




























