Suchmosがリスペクトするアーティストを招いて行う2マンツアー『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』全9都市の同公演レポートを『THE FIRST TIMES』独占で実施中。今回は6月25日、NIIGATA LOTS公演の1日目をレポートする。
■ロックスターとしてのチバに憧れた、YONCE少年時代
Suchmosが新潟でワンマンライブを行うのは、『Suchmos ARENA TOUR 2019』朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター公演以来、約7年ぶり。新潟のファンにとっては文字通り“待望”のライブで、フロアからは「おかえり」という声も飛び交った。
全9都市を巡る『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』の中でもっとも小さいキャパの箱が、ここNIIGATA LOTS。しかもゲストは、本ツアーでもっともベテランにあたるThe Birthdayだ。始まる前から特別な一夜になるだろうと思っていたが、その予感は間違っていなかった。
Suchmos・YONCE(Vo)にとってThe Birthdayやチバユウスケ(Vo)は、あまりに特別な存在だ。中学3年生の頃、音楽雑誌の中でThe Birthdayに出会い、高校1年で人生初めて組んだバンドでThe Birthday「アリシア」をカバーした。高校時代は、邦楽はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTしか聴いてないくらいに没入し、ロックスターとしてのチバに憧れた。Suchmosとしてデビューしてからは、『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO』での東京スカパラダイスオーケストラによるスペシャルステージや、2018年に開催した2マンツアー『Suchmos The Blow Your Mind TOUR』の山口・香川公演(The Birthdayをゲストに迎えた)にて、YONCEとチバはステージ上で並んだ。8年前のあの日は、The BirthdayにYONCEがジョインし「涙がこぼれそう」をともに歌っている。
2020年に予定されていた『Suchmos The Blow Your Mind TOUR』にて再び共演できるはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、惜しくもその機会は消えてしまった。2023年にチバがこの世を去ったあとは、各フェスでの追悼企画などでYONCEがボーカルをつとめ、The Birthday「ローリン」「プレスファクトリー」、ROSSO「1000のタンバリン」などの楽曲を歌い継いだ。
この6年でThe BirthdayとSuchmosは、あまりに早く訪れてしまった悲しみを乗り越えて新体制になった。6月25日、開演前から熱気に包まれていたパンパンのフロアを前に、The BirthdayもSuchmosも、エモーショナルなストーリーを語ろうと思えばいくらでも語れたはず。しかし、両者ともに音楽の中ですべてを見せるような姿勢を貫いた。自分の気持ちも生き様も、すべては音に出ているからと言わんばかりに。
■The Birthdayが築く音楽の美しさと力強さに涙腺が緩んだ
最初にステージへ上がったThe Birthdayは、「DISTORTION(インストver)」から始めた。フジイケンジ(Gu)、ヒライハルキ(Ba)、クハラカズユキ(Dr)の3つの音がものすごい破壊力でダイレクトに身体へと突き刺さり、腹の底から脳まで揺らしてくる。続いて、フジイがボーカルを取る「LOVE ROCKETS」。ギター、ベース、ドラム、それぞれがごまかしのない音。他の音じゃなくてこれしかない、というように鳴り響く音。要らぬものはすべて削ぎ落とした、“自分の答えは自分の中にある”という姿勢が乗った音。そんな音だけが、全力でぶつけられる。
「平均年齢を上げにきました」「呼んでくれて感謝しております」というクハラのシンプルな言葉を挟みながら、「愛でぬりつぶせ」ではヒライが、「情熱のブルーズ」ではクハラが、「月光」ではフジイがリードボーカルを取る。これぞ愛と情熱の本質を教えてくれる、チバユウスケが残したロックだ。
「月光」で《お前の想像力が現実をひっくり返すんだ》と歌うとウォー! と歓声が上がり、フジイがセンターに出てきて、ギターソロで魅せる。その位置は、3ピースバンド体制になってぽっかりと空いた場所だ。しかし、背負うとか、不在を埋めるとか、そんなことをあえて前面に出すことはない。“ただ自分たちがカッコ良いと思うことをやる、それだけだ”という生き様が、これほどまでにソリッドでまっすぐな音を生んでいるのだと感じた。
「月光」が終わると、「Suchmosに呼んでもらって本当に嬉しいです」というフジイの言葉から、「このバンド、20年くらいやってるの。でも、友達がいないんです。いないんだけどさ、大好きなボーカリストがいて、ふたりくらいいるうちのひとりを紹介する。YONCE!」と、ヒライがYONCEをステージに呼び込んだ。
The BirthdayのTシャツを着たYONCEは「お邪魔します」と登場し、「こんなことが8年前にもあった気がします。よろしくお願いします」と回顧。そして、なんと「SAKURA」を歌い始めた。自分がいなくなって“君”と会えなくなったときのことを想う「SAKURA」は、YONCEからチバへの弔意を表す歌のように聴こえた。フジイがギターソロを弾いているあいだは、ギターフレーズを口ずさみながら良い表情をしているYONCE。YONCEはチバから、ロックに愛と優しさを宿す表現を受け継いだのだと思わせる「SAKURA」だった。ステージを去ったあと、The Birthdayは「若い方に歌っていただいて嬉しい」なんて言葉をメンバー間で交わした。
そして兄貴たちからSuchmosとオーディエンスを優しく抱きしめて、同時に愛を持ってケツを蹴り上げてくれるような、「誰かが」と「COME TOGETHER」でThe Birthdayのステージは終了。その美しさと力強さに涙腺が緩んだのは、きっと私だけではないはず。
■この日は特にSuchmosのロックな面が出た構成に
『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』では、毎回Suchmosのセットリストが変わっているが、The Birthdayと演るこの日は特にSuchmosのロックな面が出る内容を組んできた。横に揺らした「Pacific」「MINT」からギアを上げて、「Alright」ではいつもYONCEが《1,2》というブレイクを《1,2,3,4》と刻んでメンバーを笑わせ、中盤にはThe BirthdayやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTからの影響をダイレクトに感じさせる「DUMBO」、ギターフレーズのリフレインに身を委ねていると昇天しそうになる「Stand by Mirror」、TAIKINGとOKのハモリも極上の「Marry」。
「6年越しのオファーに応えてくださったThe Birthdayをはじめとして、各都市のゲストアクトの皆さんに本当に感謝しています。いろんな6年があったと思います。我々の6年間があって、The Birthdayの6年間があって、今日ここに来てくださった皆さんの6年があって、それがどんなものだったか、良いものだったか悪いものだったか、僕らには知る由もないんですけど、ただ今日は関係ねえから踊ろうぜということでいっちょよろしくお願いします」というMCからは、腹の底から焚きつけるスタジアムロック「A.G.I.T.」、盆踊りのリズムから始まりマイクを横笛みたいに持つシーンもあった「STAY TUNE」、公演を重ねるごとにタイトさが増してストイックに熱を上げていく「GAGA」、そして最後は「明日朝8時、日本対スウェーデン、時間だけでも覚えて帰ってください」と始めたサッカーテーマソング「VOLT-AGE」。
雑誌『SWITCH』(2019年2月号)に掲載されたYONCEとチバの対談で、チバは「今は……たとえばライブに来てる連中の気持ちもちょっとは考えるというかさ。そいつらのことも受けとめられるようになってきたんじゃないかなと思うんだよね。でも、YONCEくんぐらいの歳の時はそんなこと考えないで、無茶苦茶やっていいんだよ」という言葉をYONCEに贈っていた。この日、「VOLT-AGE」前の「時間だけでも覚えて帰ってください」のあと、YONCEはイントロに乗せて「ちゃんと言います、Suchmosでした。ありがとう!」と付け加えた。さらに、毎回深みの利いた歌声でアドリブを乗せている「Life Easy」では、「いろんな顔を見せてくれてありがとう」というフレーズが出た。それらだけでなく、YONCEの歌に宿る温かさ、MCの言葉の端々や温度感、佇まいや目線などから、Suchmosの活動休止前と現在の大きな違いのひとつとして、フロントマンである彼の“ライブに来てる連中”の受け止め方というポイントが挙げられると私は感じている。
そして日を追うごとにブラッシュアップされているバンドの演奏はこの日、メンバーも認めるほど、本ツアーの中で最高の仕上がりだった。一音ごとにしっかりとグルーヴを作り上げてフロアを踊らせ、オーディエンスを音の快感ゾーンへと導いていく。YONCEはそのグルーヴに乗って、一言ごとに届けたい想いを込めるようにして歌っていて、各曲の、もっと言えば各行の、メッセージがいつも以上にじっくりと伝わってきた。
■ロックの要素も持ちながらカウンターカルチャーとしてシーンに挑む
アンコールは、TAIKINGが最初に飛び出してきて、センターで両手ピースを掲げたところから始まった。新潟まではTAIHEIが運転し、谷川岳を登っていたYONCEとKaiki Oharaをピックアップしてきた、というバンドの仲の良さがうかがえる話が繰り広げられた。さらに、YONCEは新潟に到着してから、父の日のプレゼントとして日本酒を見繕って実家へ送ったというエピソードも。その店の女将さんはVaundyのTシャツを着ていて、伝票に名前を書くとSuchmosのYONCEであることがバレたらしい。しかも女将さんがSuchmosのロゴを綺麗に模写した看板を用意してくれていたという、素敵なオチつき。
この日、ロックなSuchmosを目の当たりにして改めて思ったことがある。Suchmosは、ジャズ、アシッドジャズ、ソウルなどブラックミュージックの文脈にも接続しているが、ロックバンドとしてのサウンド、メンタリティ、チバユウスケから受け継いだ愛も情熱も己を曲げない生き方も兼ね備えているからこそ、2015年のデビュー以降、日本のロックシーンを変える存在になり得たということ。
今はロックバンドがブラックミュージックの要素を取り入れることは当たり前のことになっていて、ロックフェスに1日いれば多様なリズムが聴こえてくるが、当時のロックフェスは手を挙げて楽しむような縦ノリや、4つ打ちのリズムが占拠していた時代だった。Suchmosがそんな時代を塗り替えていなければ、次世代のバンドマンを志す人たちの耳にSuchmosの音楽が入っていなければ、きっと今のロックフェスで鳴るサウンドは違っただろう。
そもそもそれが成せたのは、Suchmosがロックの要素も持ちながらカウンターカルチャーとしてシーンに挑んだからだ。もし、YONCEが中学生の頃にThe Birthdayと出会ってなかったら…もしかしたら、今の日本のロックシーンは異なる状況になっていたかもしれない。ロックが秘める様々なロマンというやつを、SuchmosとThe Birthdayが教えてくれる夜だった。
TEXT BY 矢島由佳子
LIVE PHOTO BY 新保勇樹
■セットリスト
『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』
2026.06.25@新潟・NIIGATA LOTS
The Birthday セットリスト
01.DISTORTION
02.LOVE ROCKETS
03.愛でぬりつぶせ
04.情熱のブルーズ
05.月光
06.SAKURA(guest vocal:YONCE from Suchmos)
07.誰かが
08.COME TOGETHER
★Suchmosのセットリストは『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』全公演終了後に公開いたします。
The Blow Your Mind TOUR 2026
新潟LOTSバンドマンという生き方を美化するつもりはないけれど、この仕事でしか目にすることが出来ない瞬間や景色や表情がある。
わたしはロックのスターってやつがステージのど真ん中からどんなものを見てたのか知りたかったんです。… pic.twitter.com/UarQM59I0T
— Suchmos (@suchmoz) June 26, 2026
Suchmos"The Blow Your Mind TOUR 2026"
2026.06.25(Thu)
新潟LOTS Day 1#SCM_TBYM#Suchmos#TheBirthday@TBD_STAFF全国アリーナワンマンツアー
『Suchmos BAY SIDE TOUR 2027』開催https://t.co/8ab7sDcmSH pic.twitter.com/GNbckliSBD— Suchmos (@suchmoz) June 26, 2026
■ツアー情報
『Suchmos BAY SIDE TOUR 2027』
[2027年]
03/13(土)宮城・ゼビオアリーナ仙台
03/14(日)宮城・ゼビオアリーナ仙台
04/16(金)福岡・マリンメッセ福岡B館
04/17(土)福岡・マリンメッセ福岡B館
04/24(土)神奈川・Kアリーナ横浜
04/25(日)神奈川・Kアリーナ横浜
05/01(土)兵庫・GLION ARENA KOBE
05/02(日)兵庫・GLION ARENA KOBE
【チケット先行スケジュール】
オフィシャル二次(抽選)
受付期間:2026年6月1日(月)18:00〜6月30日(火)23:59
オフィシャル三次(抽選)
受付期間:2026年7月1日(水)18:00〜7月13日(月)23:59
https://w.pia.jp/t/suchmos-tour2027/
※お一人様4枚まで購入可能。
※小学生以上有料/未就学児童無料(保護者同伴の場合に限る)、大人1名につき子供1名まで膝上可。但し座席が必要な場合はチケット必要。
『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』
05/14(木)神奈川・KT Zepp Yokohama ゲスト:IO
05/15(金)神奈川・KT Zepp Yokohama ゲスト:IO
05/20(水)愛知・Zepp Nagoya ゲスト:GLIM SPANKY
05/21(木)愛知・Zepp Nagoya ゲスト:GLIM SPANKY
05/26(火)大阪・Zepp Osaka Bayside ゲスト:くるり
05/27(水)大阪・Zepp Osaka Bayside ゲスト:くるり
05/29(金)福岡・Zepp Fukuoka ゲスト:長岡亮介
05/30(土)福岡・Zepp Fukuoka ゲスト:長岡亮介
06/04(木)北海道・Zepp Sapporo ゲスト:cero
06/05(金)北海道・Zepp Sapporo ゲスト:cero
06/13(土)宮城・SENDAI GIGS ゲスト:ハナレグミ
06/14(日)宮城・SENDAI GIGS ゲスト:ハナレグミ
06/20(土)広島・BLUE LIVE HIROSHIMA ゲスト:GRAPEVINE
06/21(日)広島・BLUE LIVE HIROSHIMA ゲスト:GRAPEVINE
06/25(木)新潟・NIIGATA LOTS ゲスト:The Birthday
06/26(金)新潟・NIIGATA LOTS ゲスト:The Birthday
07/01(水)東京・Zepp Haneda ゲスト:Fujii Kaze
07/02(木)東京・Zepp Haneda ゲスト:Fujii Kaze
https://www.thefirsttimes.jp/keywords/15494/
■独占公開!『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』全都市レポート

- REPORT
- 【独占レポート】Suchmos×ハナレグミ、6年越しの共演が実現!“旅”で繋がり、悦びと生命力に満ちた『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』仙台公演


































