5月14日から7月2日まで行われた2マンライブツアー『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』は、Suchmosにとって、非常に意義深いものになった。2025年6月の復活ライブからすでにSuchmosらしい素晴らしいライブパフォーマンスを繰り広げていたが、メンバーいわく、ここからがSuchmosの「グランドオープン」。
ここまで全都市計9公演のレポートを終演直後に書き残してきたが、最後にツアーレポートの総括として、「グランドオープン」という言葉が意味するものと、7都市目・広島にてライブリハーサルの合間にそれぞれから聞いた話(六者六様の考えで、これぞSuchmos、という感じもするし、とても重要な言葉がたくさん語られている)をお届けしたい。
『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』
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https://www.thefirsttimes.jp/keywords/15494/
■Suchmosのライブは、一瞬たりとも退屈を与えない
『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』は、神奈川公演にIO、愛知にGLIM SPANKY、大阪にくるり、福岡に長岡亮介、北海道にcero、宮城にハナレグミ、広島にGRAPEVINE、新潟にThe Birthday、そして東京にFujii Kazeを迎えて開催された。
Suchmosにとってゲストアクトを招いたツアーは8年ぶり。また今年2月にRen Yamamoto(Ba)の正式加入を発表してから、新体制Suchmosとしては初のツアーである。そういったスペシャルな要素と期待が乗っかって、約3万枚分の全18公演のチケットは即完を記録した。
そもそもこれは、2020年3〜4月に『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2020』として開催が予定されていたもの。2015年にデビューしたSuchmosが、怒涛の勢いでストリートからメインストリームまで駆け上がり、2019年9月に横浜スタジアムでライブを開催するという夢を叶えたあと、「ここからはどういうふうにバンドのキャリアを進めていこうか」といった悩みに直面したり、様々な場面で葛藤・違和感を抱いたり、燃え尽き症候群的な状態にもなっていたりしたところ、計画したのが自分たちのリスペクトするアーティストたちとの2マンツアー『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2020』だった。しかし、2020年3〜4月といえば、新型コロナウイルスのパンデミックにより「緊急事態宣言」「3密」「ソーシャルディスタンス」などの言葉が世の中に出始めた時期。ツアーは開催中止となり、翌年2021年2月にSuchmosは活動休止を発表した。
6年越しのリベンジプランは、活動再開に向けて話し合っていた段階から浮上していたという。そして6年前に開催予定だった場所と同会場を抑えて(Zepp Tokyoは2022年1月1日閉館のため、Zepp Hanedaに変更)、まずは当時共演予定だったゲストに声をかけた。6年もあればそれぞれのバンドの状況も音楽シーンの在り様も変わっているにも関わらず、同じメンツに声をかけたSuchmosの心意気には「すげえやつらだなと思いました。なんて粋なやつらなんだ」(亀本寛貴/GLIM SPANKY・Gu)、「約束を守る男たちです。そういうSuchmosにはリスペクトしかない」(髙城晶平/cero・Vo、Gu、Flute)など、本ツアー中に各ゲストから讃える言葉が贈られた。
結果的にIO、GLIM SPANKY、くるり、長岡亮介、cero、ハナレグミ、GRAPEVINE、The Birthday、Fujii Kazeというゲストが揃ったが、先輩から同世代、さらには下の世代まで、Suchmosが影響を受けた/与えた存在が並び、Suchmosを構成する音楽性の幅広さを示すラインナップになった。

- REPORT
- 【独占レポート】Suchmos×ハナレグミ、6年越しの共演が実現!“旅”で繋がり、悦びと生命力に満ちた『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』仙台公演
前回のレポートでも「アシッドジャズやネオソウル、さらにそれらのルーツを遡ったソウル、ジャズ、ヒップホップ、ファンク、R&Bなどブラックミュージックのグルーヴにロックや日本語の歌の要素を掛け合わせて、国内で大衆音楽化させた存在」と書いたが、それだけ言葉を尽くしても収まりきらないくらいの音楽的要素をかけ合わせて発明を生んだのが、Suchmosというバンドだ。
だからこそ、全国各地で毎週1〜2本のペースで、約1ヵ月半の間に計9回もSuchmosのライブを観ても、私はまったく飽きなかったのだ。Suchmosのライブは、一瞬たりとも退屈を与えない。一曲の中に、集中力が途切れる間もない。歌の隙間には必ずきらりと光る楽器のフレーズやKaiki Ohara(DJ)が鳴らす美味しいサンプリングが入り、すべての小節に流れやダイナミクスをコントロールする役目がしっかりとある。しかも公演を重ねるごとに、各曲の鳴り方が変わった。前回のレポートで「よく言う“バンドのグルーヴ”とは何なのか、本ツアーを通してSuchmosの中で何が変わっていったのか、このあたりは次の最後の記事で詳しく書きたいと思う」と書いたので、ここからはそれについて触れていきたいと思う。
■“続ける”ことの尊さを噛み締め、慈愛に満ちた感情を交換し合う
ツアー初日のあと、私はXに「修行を経て今が一番ライブの音がいい」とポストしたが、ファイナルを迎えた頃には、バンドのグルーヴ、音の迫力や重厚感が、まったく別次元に達していたのだ。
Suchmos対バンツアー初日@ Zepp横浜。Suchmosについてはいろんな角度から語ることができるし、人それぞれの思い入れがあると思うけれど(そしてそれも自由だと本人らが肯定しているバンドでもある)、シンプルなところを言うと、修行を経て今が一番ライブの音がいい。実は今回→ pic.twitter.com/WVQ2k7BF9A
— 矢島由佳子|音楽ジャーナリスト (@yukako210) May 14, 2026
「Alright」にテンポダウンのアレンジが加わったり、「STAY TUNE」が盆踊りのリズムから始まったりと、具体的な変化を挙げることもできるが、「譜面に起こせば同じ音でも、人間が鳴らせばその時々で別物のように聴こえる」という現象が起きるのがライブの面白さであり、“バンドのグルーヴ”の正体でもあるように思う。
特に象徴的だったのは「GAGA」。この曲のライブアレンジは昔から、1コーラスが終わるとHSUがベースソロでフロアを湧かし、トランスゾーンへと突入するのだが、その快楽度がライブを重ねるごとに増し、ファイナルではバンドとして完全なる新次元に達していた(OK [Dr] のカウントで「GAGA」に入る前、YONCE [Vo] が「DANCE YOUR DANCE!」とシャウトし、名古屋公演からは各所で言葉を変えて「ガキ! ジジイ! ババア! クズ! 優しいやつ! 貧乏人! 金持ち! 無職! フリーター! 聖職者! 偉いやつ! 専業主婦! シングルマザー! 搾取してるやつ! 搾取されてるやつ! 幸せ者! くたびれてるやつ! いいやつ! 悪いやつ! 右翼! 左翼! DANCE YOUR DANCE! 己の踊りを踊れ!」などとフロアに向けて全力で訴えていたのも、このツアーのハイライトのひとつだった──このあたりの真意については、YONCEのソロインタビューも併せて読んでほしい)。
名古屋公演のあと、TAIHEI(Key)が「メンバー全員がYONCEのファン」「YONCEにとって心地いい椅子をみんなで作っている感覚」という旨を話してくれた。そのとき私は、「Suchmosは、ひとつの丸いプレートに6つのメインディッシュが乗っているようなバンドだと思う」という言葉を返したのだが、このあとのインタビューでTAIHEIが語っているように、「5人でYONCEのための椅子」を作るところから「6人でひとつの円や球体みたいになっているグルーヴ」へとどんどんと変化していったのが、このツアーだったのだ。6人の音がばらばらに鳴ることなく、四方八方に散ることもなく、ひとつの球体として届いてくる。そのライブの音のクオリティは、はっきり言って、国内バンドシーンの中でもトップレベルだ。
グルーヴや音の鳴りが進化していったのは、6人と西川一三をはじめとするPAや楽器チームのプロフェッショナルな意識と知識、卓越したスキルによるものであることは言わずもがなだが、このツアーを通して、いくつもの共通認識をメンバー間で持てたことも大きかったのではないかと、全9公演を観ながら感じていた。
《調子はどうだい? 兄弟》と音と会話の中で互いに尋ね合って、「やっぱりSuchmosは楽しいよな」「このメンバーとスタッフがいればやれることがたくさんあるよな」という6人の目線が一致したこと。憑き物や迷いや遠慮が、全部削ぎ落ちたような爽快感。先輩から後輩まで、そして休止期間も待ってくれていた全国各地のファンから、こんなにも愛されているのだという自負と感謝。このあとのインタビューでYONCEが語ってくれたように「廃れないことをやっている」という自信。そして活動休止やHSUの喪失を乗り越えて、“続ける”ことの尊さを噛み締めながら、メンバー間で慈愛に満ちた感情を交換し合っていること。それらが、SuchmosのバンドとしてのグルーヴもYONCEの歌も、一段階も二段階も進化させているのではないかというふうに見えた。4年4ヵ月の空白を終えて《その苦労や苦悩をBlowして》ステージに立っているのが、今のSuchmosだ。
昨年の横浜アリーナ公演と『Suchmos Asia Tour Sunburst 2025』は、「ただいま」を告げる挨拶の場で、今回のツアーは6年前の約束を果たすものだった。いよいよ次の『Suchmos BAY SIDE TOUR 2027』が、「新生Suchmosは何をやるのか?」を真正面から体感できる機会になるだろう。ツアー初日には「John」「hi-liter」という2曲の新曲も披露された。「John」は『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2020』に出演予定だったMr.Childrenの系譜の連なりを感じる部分もある一曲で、「hi-liter」はベースラインが印象的で夜の気配が漂う80’sの帯びたサウンドだった。大阪公演以降、新曲がセットリストに入ってくることはなかったが、それら2曲が今後どうなっていくのか、そしてSuchmos自体がどういう方向へと向かっていくのか、非常に気になるところだ。
ということで、ここからはYONCE、Kaiki、Ren、TAIHEI、TAIKING、OKに、これからのSuchmosに対する思いと、このツアーについて振り返ってもらった言葉をお届けする。先述した通り、ライブのリハーサルの合間という短い時間の中でのソロインタビューとなったが、 そこで話してくれたことをほぼノーカットでまとめた。
『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』
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■YONCE「優しく溶け合うような2マンライブができた」
【INTERVIEW with YONCE(Vo)】
──『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』は、Suchmosにとって、またはYONCEさんにとって、どんな刺激や変化を得られたツアーでしたか?
YONCE:雰囲気、良い気がしますね。同世代とか先輩アーティストのライブを、我々はひとりのお客さんとしてステージ袖や2階席から観させてもらって。世の中には小難しいことがいろいろとあるし、笑い飛ばせないシリアスなことも今まさに起きていますが、純粋に「リズムがあるから踊れて楽しいね」「メロディが美しいからなんだか泣けちゃうね」みたいなことを感じさせてくれると言いますか。
自分たちだけでツアーをやっていたら、案外、作業的にやっちゃったりとか、ルーティーン化してしまうものなので、それは対バンというものが与えてくれる刺激ですね。
例えば永積(崇/ハナレグミ)さんの歌って本当にまくなく心に刺さってくるなあ、とか。そういう体験を普段してないとは言いませんけど、やっぱり自分たちも同じステージに立つ日に体験できるというのは、本当に贅沢なことでもあるなと思います。
ちょっと偉そうですけど、我々にとってだけではなく、出てくださったアーティストの人たちにとっても得るものがあったら良いなとはすごく思っていて。このツアーは6年前のコロナ禍でキャンセルになってしまったもので、今回あらたにお声がけしたアーティストの方も何組かいらっしゃるけど、基本的には6年前のメンツにお声がけさせてもらって。
ceroだったらceroの6年があっただろうし、GLIM SPANKYにも等しく6年があっただろうし、いろいろあったけど今やっているということに意味みたいなものがあるような気がしていて。
表現活動をする人たちの中には、この6年でメッセージが変わった人もいっぱいいると思うんですよね。それを観られたことが、単純にイチ音楽リスナーとして嬉しいし、それを自分たちのファンの人たちにも観てもらえたことが嬉しいです。
結局、何が言いたいかというと、ずっと廃れないことをやっているんだなということを改めて思えた、自信になったツアーですかね。“対バン”って“戦い”っぽくて、もうナウくないような表現な気がしますよね。でも今回はそうじゃない、高め合えるというか、優しく溶け合うような2マンライブができたような気がしていて、それはすごく我々らしいツアーだったのではなかろうかと思っています。
このツアーは、(Suchmosの)再開に向けて話し合っている段階から「あのツアーをもう一回やりたいよね」と話していたので、去年からの一連のムーブを含めて、これで「活動再開」が一旦完結するというか、ケリがついた感じがします。
来年のツアーもアナウンスされているので、そこからまた完全に新しい動きになるわけで──それが具体的にどういうものか、今決まっていることがあるわけではないですけど──それに向けてまた準備だなっていう感じですかね。
──Suchmosは廃れないことをやっているという自信を得たというのはすごく大事な言葉だなと思いましたし、Suchmos自身も、6年前とはメッセージが変わった部分がたくさんあると思うんです。Suchmosとしての自信も、9組からの刺激も得て、この先はどういうメッセージを発信していきたいか、どういうキャリアの積み方をしていきたいのか、今考えていることはありますか?
YONCE:MCでも言っていますけど、結局“DANCE YOUR DANCE”なのかもしれないなっていう気がしますね。脱線しちゃうけど──俺、SNSの時流に乗れなかったような人たちが、今もマメに更新しているブログをブラウザから見るのが好きなんですけど。例えば登山のブログだと「この山の、このコースが良い」みたいな、今の主流のメディアでは紹介されていないコースが書いてあったりして、そういうのを見るのが楽しいんです。
昨日、広島に前乗りして夜、ホテルでゴロゴロしながら映画評を読んでいて。でもその映画のことには最後まで全然触れなくて、「みんな地球を物体として捉えるけど、地球とか宇宙は常に踊り続けていて、我々もその中で踊っているだけに過ぎない」みたいなことが書いてあって、この人はすごく面白い文を書くなあと思ったんです。
結局“やめない”とか、止まってもいいけどあくまでそれも変化の途上である、ということを思う。お客さんたちにとってSuchmosが不変であるとか、決まったものを作り続けるというのは、たぶん意味がなくて。
俺らからのメッセージとしては“動き続ける”。それは活動的になるという意味じゃなくて、自分たちなりのやり方でアクションし続けるということ。俺は、黙ることも動きのひとつだと思うし。世の中に対してアジテートするとかしないとか、いろんな意見が飛び交っていてやかましいですが、でも俺は構わないと思うんですよね。そこに玉虫色の言葉があったって、それはその人のダンスだと俺は思うから。それこそが豊かな世の中なんじゃないかと思うので、結局、「全部OK」みたいなことを言っていたいかな。
■Kaiki Ohara「初めての経験を得たいという気持ちが、常にあります」
【INTERVIEW with Kaiki Ohara(DJ)】
──『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』は、Suchmosにとって、またはKaikiさんにとって、どんな刺激や変化を得られたツアーでしたか?
Kaiki Ohara:まずひとつは、バンドとしてまたマイルを稼いでいけていることに喜びを感じています。やっぱり、歩き始めないとわからなかったし。ツアーというのは全員で同じ疲れを共有して、しかも今回は先輩のリハやライブを観て学ぶべきものがあって。ツアーをやっていて、自分たちの今のマインドや日々向き合っていることが少しずつ音として出て、それがライブの反応として返ってきて、自分たちの満足感が変わっていることを実感します。
制作だったり、練習だったり、日々の行いだったりっていうのは、やっているときは返ってくるものがないから、とにかく淡々と毎日を過ごすという感じなんですけど、今は少しずつ自分のプレイやライブの完成度や満足度として返ってきて、それを確認しながら噛みしめているところですね。
──実際に外から観ていても、このツアー中にどんどんバンドとしての音や一体感が変わっていっているなと感じるんですけど、ツアー1本目と今では、ライブ自体の完成度や満足度が、具体的にどう変わった実感がありますか?
Kaiki Ohara:一発目は耳の鳴り方、聴こえ方だったり、自分のライブに臨むモチベーションが、まだフレッシュなんですよ。だからちょっと固いし、一周回って見ると、一発目で最高傑作を出そうとしているんです。毎回ツアーの一発目は、もうこれ以上はやることがないっていうくらいまで精神的に追い込んで、「さあ、あとはツアーが始まったら楽になろう」っていう気持ちで臨んでいるんですけど、ライブを経ていくごとに少しずつ角が丸くなっていくというか。
ライブを経ていくと──1曲目で俺らがステージに出ていって、お客さんの反応が返ってきて、アンコールが終わって、はけるところまでの時間の流れが、すごく緩やかになって、1巻の小説のようになっていくんですよね。今は、集中力が入ったり途切れたりということがなく、「このときはこういう集中力」「ここは楽になれる部分」みたいな、ひとつのライブの中の山と谷に身体が順応できていて。その中での、誰にもわからない一瞬のタイム感だったり、ニヤッとし合うみたいな、そういうものを楽しめる段階にやっと入ったのかなっていう感じです。
──活動再開から一年経って、このツアーでさらにパワーアップして、「ここから何をするんだ?」というのもまたみんな楽しみにしているところだと思いますが、この先はSuchmosでどんなことをやっていきたいですか? Kaikiさんの考えを聞かせてください。
Kaiki Ohara:初めての経験を得たいという気持ちが、常にあります。日本のバンドとして日本でやれることをやるというのは、ある種絶対に必要な部分ではあるんだけど、もっと知らない土地に行ったり、見たことのない景色を見たりしたい。このメンバーとチームだから恐れずに行けるし、やっぱりそれがバンドの強みだと思うので。例えば東南アジアの辺境の地だったり、インド、ヨーロッパ、アメリカもデカいからその中のいろんなところに行きたいし、南米の音楽とかも大好きだし。カルチャー濃いめの土地に行って、音楽でシェイクハンドしてみたいという気持ちがあるかな。
今の時代は、逆に海外から活動を始めるバンドもちょっとずつ増えているじゃないですか。だけど俺らは王道な、ライブハウス上がりの育ち方をしてきたので、現代的な音楽活動の仕方はやってきてなくて。自分たちの音楽に対して、もっといろんなカルチャー──サイケデリア、ニューエイジ、いろんなリズムとか──そういうものをどんどん吸収して、「なんか変なバンドになっちゃったな」って思いたいかな(笑)。
■Ren Yamamoto「『Renしか言えないことはあるから』みたいな話をするときもある」
【INTERVIEW with Ren Yamamoto(Ba)】
──『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』は、RenさんがSuchmosに正式加入してから初のツアーですが、サポートとしてプレイしていたときと今とで何か変化はありますか?
Ren Yamamoto:変化は…ないです。去年からやっていることの延長で、気持ち的な変化はまったくないです。
──「Suchmosのサポートをやってほしい」という誘いがきたときは一度断ったそうですけど、「正式メンバーになってほしい」という話のときは二つ返事でOKしたんですか?
Ren Yamamoto:一回、YONCEの家でバーベキューをやったんですよ。深夜までだらだら続いて、深夜2時くらいになったとき、いきなりYONCEから「てか、メンバーになってくんない?」みたいな(笑)。もちろんやりたい気持ちもあったし、もしかしたら入ったら入ったで大変な未来もあるかなとは想像したけど、一瞬でそこまで考える余裕はなかったから、とりあえず「OK」って(笑)。絶対に自分の人生の楽しい思い出のひとつになると思ったから、乗っかってみようと思いました。
──この質問はみんなに投げさせてもらっているんですけど、『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』はSuchmosにとって、またはRenさん自身にとって、どんな刺激を得られたツアーになっていますか?
Ren Yamamoto:僕、打ち上げを毎回ラストまで行っているんですよ。くるりの岸田(繁)さんとも、長岡(亮介)さんとも、明け方の4時くらいまで飲んで深い話がいっぱいできました。長岡さんで言ったら、東京事変はメンバー全員が曲を持ち寄っていく作曲スタイルだというのが、Suchmosと共通していて、「どんなふうにやってましたか?」とか、そのスタイルのコツを聞けたのが面白かったです。
具体的に言うと、曲を持ってきた人がアレンジ面を含めて最後までケツを持って作るスタイルだったらしくて。このバンド(Suchmos)は誰かが曲を作ってきたら、みんなでアレンジして完成まで持っていくスタイルで、それが上手くいくときもあれば、そうじゃないときも実際にあったりするから、作ってきた人がケツを持つスタイルは良いな、そういうふうにもやってみたいなって思いました。…できないかもしれないけど(笑)。
──くるり・岸田さんとはどんな話をして、どんな刺激を受けました?
Ren Yamamoto:岸田さんは僕らのライブを、すっごくちゃんと最初から最後まで観てくださっていたみたいで。「このバンドはこうやったらもうちょっと面白いことができそうだな」「ここは良いんだけど、ここの部分がちょっと足りないかも」とか、岸田さんなりに思うことがたくさんあったみたいで、一曲アレンジをやってみたいという話をしていました。僕もそれは面白そうだなと思って。これまで誰かがプロデュースした曲というのは(Suchmosに)なかったから、そういうことをやっても面白いかなとは思います。
──Suchmosに外部プロデューサーが入るというのは、めちゃくちゃ新鮮な発想ですよね。新しく入ったRenさんだからこそ、そうやってバンドに対して見えるものや斬新なアイデアが言えることもあるんじゃないかと思うんですけど、そういった実感はありますか?
Ren Yamamoto:知らないがゆえに、いろいろ言えるっていうのはあるかも。メンバー各々とふたりっきりでいるときに、「Renしか言えないことはあるから」みたいな話をするときもあったりはします。
──この先、Suchmosをどうしていきたいか、もしくはRenさん自身がSuchmosでどうなっていきたいかを聞かせてください。
Ren Yamamoto:僕がやりたいのは、良い曲を書きたい。それだけ。それがやりたくてSuchmosに入ったという感じです。めっちゃピュアですけど、本当にそこだけ。良い曲をバンバン作りたいです。
■TAIHEI「やっとプレオープンじゃなくてグランドオープンしたんじゃないかっていう感じ」
【INTERVIEW with TAIHEI(Key)】
──『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』は、Suchmosにとって、またはTAIHEIさんにとって、どんな刺激や変化を得られたツアーでしたか?
TAIHEI:今回のツアーは楽しいですねえ。ワンマンで回っているより数倍楽しいくらい(笑)。対バンの人たちがマジで全員最高すぎて、全員から違う刺激をもらうし、メンバーそれぞれが相手のリハや本番を見て違う種類のものを吸収している感じがするのもめっちゃ面白い。
あと、やっとSuchmosのリハビリ期間が終わったのかな。4年半休んだ期間があって、去年は横アリとZeppツアーがあって、今回のツアーからやっとプレオープンじゃなくてグランドオープンしたんじゃないかっていう感じがします。特に仙台の2日目のライブは、俺的には「グランドオープンしたな」っていう感じでした。
──去年の横アリもZeppツアーも素晴らしいライブでしたけど、自分たちでプレイしていて、「プレオープン」と「グランドオープン」の差はどこで感じるものですか?
TAIHEI:休止する前って、ライブにおいてのアレンジも演奏も「ぶちかますぞ」というテンションはありつつ、みんながめちゃくちゃ歌に対してアプローチしていて。Suchmosって、自分の音をどう引き算するかという考え方が、基本理念としてあったバンド。俺自身もそうで。
でも復活してからは、どちらかというと全員がフォワード。Ren含め、6人横並びでダーンっていってる感じ。「この曲のときは俺は一回引くわ」「ここで行ったらいいのに」みたいな音のキャッチボールをしているというよりは、ずっと全員がフォワードをやっていたのがこの一年間だった。
それが、円になってきた感じがする。全員がフォワードをやれるからこそ、行くところと抜くところが全員なんとなく交わってきた感じがして。
だからどんどんステージ上の中音の音量は下がっているし、力もどんどん抜けてきたし。無理せず、温かい音がする。でもフォワードをやるという経験も積んだからこそ、攻めっ気がある。だからたぶん、2018年より今の俺らのほうがサウンドとしては若いと思う。
曲の一部分だけとかじゃなくてライブ一本通して、若々しいんだけど、ひとつの円や球体みたいになっているグルーヴが、このツアーの途中くらいからちょっとずつ見えてきた気がします。今、もう一回バンドになったなっていう。巴戦じゃなくなってきた。
──初日の神奈川、2ヵ所目の名古屋は「勢い」や「自由」という言葉が似合うライブだったと思うんですけど、大阪から徐々にバンドとしてのダイナミクスコントロールが変わったなという印象がありました。そうやってグルーヴが変わっていったのは、先輩たちのライブを観て刺激を受けたところもありました?
TAIHEI:もちろんありました。IOくんから始まって、名古屋がGLIM SPANKYで、最初は同世代2組で、そのあと大阪のくるり、福岡の(長岡)亮介さん、北海道のcero、仙台のハナレグミさんときて──同世代とやっているときももちろんバチバチで最高だったんだけど、やっぱり先輩たちのサウンドに影響を受けていますね。
──このツアーで毎回、Suchmosが登場するときに流れるSEは、TAIHEIさんが作ったものですか?
TAIHEI:サチモの過去のSEはすべて俺が作って、録って、ミックス・マスタリングしているんですけど、今回はRenが作ったトラックを俺がアレンジしてミックス・マスタリングしました。今回の対バンツアーって、音源のリリースが伴っているわけでもないし、コロナで中止になっちゃったもののリベンジ編という目的がありつつも、言ってしまうと俺らがやりたかったっていう、ただそれだけの欲望に乗っかってやっているツアーだから、SEの方向性が難しくて。具体的なテーマがないから。
それでRenから、あの自然体でアンビエントみたいな感じのトラックが送られてきたときに、SEでリラックスするっていうのも良いなと思って。そこからガツンと行ってもいいし、ふわっとも行けるっていう、どういう曲に入ってもいいような器の広いSEになって良かったなと思っています。
──最後に、この先はSuchmosをどうしていきたいですか? TAIHEIさんの考えを聞かせてください。
TAIHEI:私はただただひたすら、このままみんなと仲良く続けていきたい。続ければ続けるほど、いっぱい曲を作れるし、いっぱいライブができるから。私は「続けていきたい」です。
■TAIKING「続けていくということが、いちばん凪に見えて、いちばん難しかったりする」
【INTERVIEW with TAIKING(Gu)】
──『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』は、Suchmosにとって、またはTAIKINGさんにとって、どんな刺激や変化を得られたツアーでしたか?
TAIKING:いつものツアーと圧倒的に違うのは、対バン相手がいること。対バンっていう、今(のSuchmosの規模感)となっては貴重な企画で、やっぱり相手によって影響されるものもありますし。あと大掛かりなアリーナや海外とかだと、いろんな制約があって当日に曲を変更できなかったりするんですよ。だから決め打ちでやっていたのが、今回はZeppという規模で動けているから、「セットリストを変えようか」っていうのがかなり柔軟にやれていて。だからまず、やっている身としては飽きないですね。
僕、SNSを拝見しているんですけど、お客さんも「セトリはこれだった」「うちらが行ったときとは違う」みたいなことを言っていて。大体みんなツアーって決め打ちでやるような気がするから「ネタバレが」とかってなるけど、どうせセットリストが変わるから、ネタがバレてもいいっていう。だから違う楽しみ方にもなっているのかなと思って、それが良いなと思いました。
──全都市を回らせてもらっている私としても、まったく飽きなかったです。各日のセットリストは、どのタイミングで誰が主導で決めているんですか?
TAIKING:誰が、とかじゃないかも。このツアーは、大体会場に入ってリハ前に「今日何やる?」っていう会話が自然と生まれるムーブになっていて。「『MINT』始まりをずっとやっていたから、今回はちょっと違うのにしてみよっか」という会話から、うちのバンドはチルいところから入ることが多かったから「Pacific」で入ってみたり、「なんかそれもね」「10年前くらいの初期にやっていた1、2曲目のセットを今やってみようよ」みたいな感じ…ノリですかね。30オーバーの人がノリとか言うと、ちょっと似合わないかもしんないけど(笑)。でもそういう感じでみんなでやってます。
あとはやっぱり対バン相手がいらっしゃるというのが大きいと思いますね。「この人たちだから、あえてこういう感じにしよう」とか。1日目は向こうのセトリを僕らもわからないので、「あ、こういう感じなんだ」「じゃあ明日はうちらもこうしてみよっか」とか、そういうことが生まれたりもするし。
あと、自分らとしても試していますね。「あえてこういうことをやってみる」「今までも実はこういうセットをやってみたかった」とか。「MINT」始まりとか、本当にそうで。「MINT」で始めることはほぼなかったんですけど、「『MINT』で始まるのは良いんじゃないかなって、昔にちょっと思ったんだよね」「じゃあ、やってみようよ」みたいな。
──先輩バンドのライブやリハを直近で観たり、それぞれとの会話を通して、学んだことや変わったことをRenさんやTAIHEIさんも話してくれていたんですけど、TAIKINGさんから見てそのあたりはどうでした?
TAIKING:続けているって、すごいなって。教えてもらうというよりかは、背中を見て感じ取るものがありましたね。続けていることのすごさが、素晴らしいなって思いました。
──この先はSuchmosをどうしていきたいですか? TAIKINGさんの考えを聞かせてください。
TAIKING:どうなんだろうね?(笑) でもやっぱり続けていくということが、いちばん凪に見えて、いちばん難しかったりするから。それは先輩方を見て感じ取ったことでもあるし、自分らも若い子たちからそう思われる世代になったような気もしていて。バンドを続けて、仲良くやれていれば、いいんじゃないかな。あと売れたいね、俺はね。
■OK「『自分たちはこうだ』とか、そういう次元からはもう抜けられた」
【INTERVIEW with OK(Dr)】
──『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』は、Suchmosにとって、またはOKさんにとって、どんな刺激や変化を得られたツアーでしたか?
OK:今会いたい人に会いに行けているツアーだなと思います。その中でいろんな人の今やっていることを見て「なるほど」って思ったりするけど、そこはあんまり関係なく、自分たちは自分たちでっていう感じで。シンプルにそういうのが面白いツアーかなって感じます。
──このツアーを通して、オンステージでもオフステージでも、自分たちの中で何か変わった実感はありますか?
OK:ベースのRenが入ってきて、良くも悪くも、今まであった自分たちの演奏のベーシックがなくなった感じがあって。だから昔のことを引きずるというよりは、関係ないっていうふうにやっている部分が個人的には大きくて。だからみんなと、演奏とかその後の会話も含めて、もっと時間をかけたいなと思っているところです。
──新体制になったことで自分たちのベーシックが一回なくなった、というような捉え方は、もしかしたらRenさんと一緒にリズム隊を組んでいるOKさんがいちばん感じ取ることなのかもしれないですね。もちろんHSUさんという存在は替えが効くものではなくて、Renさんが入ったことでバンド内で変わる部分はたくさんあると思うし、ファンの中にもいろんな受け止め方をしている方々がいらっしゃるとは思うんですけど、良い意味で、今までの延長線にいるように聴こえていると私は思っていて。でもOKさんの体感としてはどうなんだろうと思って。
OK:Renが入ってくれて、Suchmosに明るさと、しなやかさというか、良い意味で軽さをもたらしてくれたなと思っていて。まだまだ俺がRenから勉強したいこともあるし、逆にもっと俺に付き合ってほしいところもあるし。そういうことをやっているうちに、新しい展開が生まれたらいいなって思っています。
──このツアーを通して、だいぶバンドのグルーヴが変わりましたよね。その要因や要素を、それぞれの角度から語ってくれたのが面白かったんですけど、5人の後ろからドラムを叩いている実感としてはどうですか?
OK:ジャンルとか、「自分たちはこうだ」とか、そういう次元からはもう抜けられたかなっていう気持ちがあります。自分たちの人生に必要なことを学べる場所、それがSuchmos。今までのステージとは、ここに集まることの捉え方が変わっているような気がします。
──名言ですね。この先、OKさんとしては、Suchmosをどうしていきたいと思っていますか?
OK:どうしていきたいっていうのは、もう特になくて。自分たちが自分たちで自分たちにいちばんびっくりしたいから、あまり作為的にならず、次はどういうことをやってくるんだろうっていうことを楽しみにしたい。そうやって、ただ旅を楽しんでいきたいなって思います。また対バンツアーをやるときは、どんな人が来るんだろうとは思ったりするかな。
INTERVIEW & TEXT BY 矢島由佳子
LIVE PHOTO BY 川上智之、上山陽介
■ツアー情報
『Suchmos BAY SIDE TOUR 2027』
[2027年]
03/13(土)宮城・ゼビオアリーナ仙台
03/14(日)宮城・ゼビオアリーナ仙台
04/16(金)福岡・マリンメッセ福岡B館
04/17(土)福岡・マリンメッセ福岡B館
04/24(土)神奈川・Kアリーナ横浜
04/25(日)神奈川・Kアリーナ横浜
05/01(土)兵庫・GLION ARENA KOBE
05/02(日)兵庫・GLION ARENA KOBE
チケット購入&詳細はこちら
https://w.pia.jp/t/suchmos-tour2027/























