INTERVIEW 1

荒川 護
ぼっちぼろまる 担当A&R
ソニー・ミュージックエンタテインメント

チャイニーズガール爆増!?

2022年のヤバイ曲
「シン・タンタカタンタン
タンタンメン」。

TikTokで異例の2バズを
巻き起こした地球外生命体
アーティストぼっちぼろまるって、一体何者?

「シン・タンタカタンタンタンタンメン」と「おとせサンダー」の2曲が短期間のうちにTikTokでバズったことで注目を集めた、地球外生命体アーティストのぼっちぼろまる。

今回お話を伺ったA&Rの荒川護さんは、ソニーミュージックのSNS特化型レーベル「FUNSUI」からメジャーデビューしたぼっちぼろまるを担当しています。

メジャーデビュー曲「シン・タンタカタンタンタンタンメン」は、TikTokを通して世の中にチャイニーズガール旋風を巻き起こした原曲「タンタカタンタンタンタンメン」をリアレンジした楽曲。

キャッチーな世界観をはじめ、世間を巻き込むぼっちぼろまるの魅力とは何なのか。制作の裏側について、荒川さんにお話を伺いました。

「語尾にアルがつく女の子」
が2022年のTikTokで爆発

THE FIRST TIMES編集部員 (以下、TIMES編集部員)
  • 「おとせサンダー」に続く形で、チャイナ服で踊る「シン・タンタカタンタンタンタンメン」も注目されましたよね。現在MVの再生回数は200万回を突破しています。
  • 2曲バズを達成したこれらの曲を振り返って、荒川さんはどう思われますか。
荒川さん
  • まずは、どちらの曲もめっちゃ好きだなって思いました(笑)。「おとせサンダー」が2022年屈指の勢いあるバズり方をしていたので、「只者ではないぞ…!」と多くの人の注目を浴びたと思っています。
  • そのバズが継続している中で、同じアーティストの別の曲が同時並行でバズるって、これはすごく異例だなって思ったし、それで「ぼっちぼろまるってなんやねん!」「タンタカタンタンタンタンメンってなんやねん!」って思った人がめっちゃいただろうなとは思いました(笑)。
  • スピード感がありましたよね。
荒川さん
  • たった4ヶ月くらいの間にバーって燃え上がったんですよ。改めて、TikTokってスピード感がすごく速いなと思いました。
荒川さん
  • チャイニーズガールに対する説明が前にあることで、「あ、そういう子なんだ!」っていうイメージが具体的になりますよね。チャイニーズガールに対する描写としても秀逸だなっていうのは、めちゃくちゃ思いました。
  • 僕らが日本のいろんなコンテンツの中で見てきた、みんなの中にあるそれぞれのチャイニーズガール像がある中で、そこを切り取るのかと。これだけ聞けば「ああいう感じね!」っていうのがなんとなく分かるじゃないですか。その最初の一節で一気に楽曲の世界観に引き込まれてしまいますよね。

ぼっちぼろまるとファンを
繋ぎ続けてくれた思い出の曲

TIMES編集部員
  • ところで、TikTokでバズったのは「おとせサンダー」が先だったと思うんですが、あえて「シン・タンタカタンタンタンタンメン」をデビュー曲に選んだ理由を教えてください。
荒川さん
  • ぼっちぼろまるは今まで6年間活動しているんですが、一番最初に多くの人に知ってもらうきっかけになった曲が、今回のデビュー曲の前身となる「タンタカタンタンタンタンメン」だったんです。だから、この曲に何度も救われたとぼろまる君も言っていました。
  • その経緯もあり、「タンタカタンタンタンタンメン」のリアレンジバージョンをデビュー曲にしたいというぼろまる君の希望があって。今まで応援してくれた人への感謝とかいろんな気持ちがこもった希望だなと思って。
  • とても義理堅い宇宙人ですよね。めっちゃ好きになりました(笑)。
  • 思い入れのある曲なんですね。
荒川さん
  • ファンからの人気も高くて、ライブでも完全に定番曲になっていて。コロナ前とかはコールアンドレスポンスもしていたみたいなんですけど、コロナ禍では手拍子でリズムを刻んでみんなで一緒に盛り上がったりしています。
  • 合いの手も入れやすそうですね!
  • 旧バージョンの「タンタカタンタンタンタンメン」と「シン・タンタカタンタンタンタンメン」ではどのような違いがありますか。
荒川さん
  • コンセプトは“超進化”です(笑)。
  • なるほど(笑)。 具体的にはどういうことでしょうか?
荒川さん
  • ぼろまる君の中では前々から超進化構想があったようで、トラックを全部バンドで録り直したり、全体のキーを上げたり。聴き比べてみると分かるんですけど、力強い感じになってます。
  • そういうところでの超進化もあったし、最終的には話題になったMVに関しても、今までのリリックビデオではなく完全なアニメーションにしました。それがうまく形になって、多くの人に広がっていったかなと思います。

総勢26人のクリエイターで
制作した最高なMV。
ぼっちぼろまるに、魔法をかけられた。

TIMES編集部員
  • MVにもすごく力を入れていますよね。デビューのタイミングで集大成って言葉を使うのもちょっと違うかもしれないですが、それくらいの熱量がある気がします。
荒川さん
  • 「おとせサンダー」のMVはTikTokでもバズって、今は900万回以上再生されています。で、そのMVの中に出てくるぼろまる君を描いてくれたのが「まご山つく蔵」さんという方なんですが、その方の描く絵柄と、ぼろまる君の曲の相性がすごく良くて。
  • 「シン・タンタカタンタンタンタンメン」も、まご山さんにお願いしたいって話していました。それで打診したら、まご山さんも快諾してくれて。しかも「タンタカタンタンタンタンメン」が昔から好きで、すでに頭の中には絵コンテがあったって言うんです。
  • え、もうすでに構想があったんですか!?
荒川さん
  • そうなんです。でも、スケジュールがかなりタイトで。メジャーデビューのタイミングでリリースできるようにしなきゃっていうのもあって、正直なところ非現実的なスケジュールでした。
  • やりたいことと、できることのバランスが厳しかったんですね。
荒川さん
  • そんな中、まご山さんから上がってきた絵コンテを見たら、これは無理してでも作らないといけないものだってなりまして。それくらい素晴らしかったんです。
  • でも、納期が……。
荒川さん
  • そう。だからまご山さんがいろんな方々に声をかけて、仲間集めをしてくれたんです。そこで集まってくれたクリエイターさん達と協力して、カツカツのスケジュールの中でも最高のMVを作り切ることができました。
  • 背景にぼろまる君のサインが貼ってあったりとか、細かいところに小ネタが散りばめられていますよね。それを探すのもひとつの楽しみがあって面白いです。
荒川さん
  • 小ネタは随所に散りばめられているかも。担々麺屋さんのシーンでメニューが右から順番にタンタンメン、シンタンタンメンとなって、最終的に「シン・タンタカタンタンタンタンメン」になるとか。あと「おとせサンダー」のキャラクターが出てきてたりもします。何回も観たくなる要素がふんだんに盛り込まれていると思いますね。
  • また各カットを見てもらうと、それぞれのアニメーターさんの色もちゃんと出てる。商業アニメとは違うインディーアニメの良さが出ていると思います。各カットの中に担当クリエイターの個性が強く出てるんですよね。ぜひ各クリエイターさんのTwitterをチェックしてほしいです!
  • ちなみにこのMVって、総勢何人で制作したんですか?
荒川さん
  • 25人くらいです。インディーアニメ界隈では、こんな大人数でやることってほぼなくて。だからこそ、こんなに大人数が参加してくれたっていうのはやっぱり素晴らしいなと。まご山さんの人望でもあり、ぼろまる君の人望でもあり、本当に感謝しています。
  • 今回MV制作に関わってくれた方々は、本当にぼろまる君のことをすごく好きになってくださって。まだぼろまる君にも会ってないのに。
  • なんだか魔法にかけられてる感じがします(笑)。色んなクリエイターさんがぼろまるくんを好きになって味が出ているからこそ、このMVって全年齢対象感みたいな雰囲気がありますよね。ちょっとコミカルな感じで。
荒川さん
  • “全年齢対象感”って言葉、良いですね!「子どもから大人まで観られるコンテンツにしたい」という気持ちは、みんなの共通意識としてあったと思うのでイメージにピッタリです。
  • 今回、MV制作のメンバーでオンライン上に集まってプチ打ち上げをやったんですが、クリエイターのみなさんがその場でファンアートを描いて、それぞれTwitterでアップしてくださったんです。もうその絵が全部すごい良かったから、1枚残らず保存しちゃいました(笑)。
  • めちゃくちゃ愛されてる!
荒川さん
  • クリエイターさんに愛される力や巻きこみ力がすごいんです。こう言ったらアレですけど、このままいけば順番に世界中のみんなが好きになっていっちゃう気がするんですよね(笑)。

複数の顔をもつ新進気鋭の
アーティスト。
宇宙人ならではのセンスが光る

TIMES編集部員
  • ぼっちぼろまるさんと荒川さんは、次こうしようとか、戦略について話し合ったりするんですか?
荒川さん
  • もちろん話したりはしますけど、やっぱりぼろまる君がものすごくセンスがあるので。それに加えて楽曲制作能力も高いから、曲が良いし歌詞も良いし、全部がキャッチー。
  • インディーズ時代に6曲入りのミニアルバムを8枚発売して、かつアルバムを1枚出したりしてるんですけど、「この曲、マジで発見待ちだろ」みたいな曲がいっぱいあります。みんなで聴けるポップな曲をリリースし続けてきたっていうのは、本当にすごいなと思ってます。
  • 才能はもちろん、自分自身を打ち出すセンスもあるんですね。
荒川さん
  • どういう動画をどういう感じで打ち出すかみたいなのとかは、ぼろまる君が自分で考えて試行錯誤しながらやってきているので、宇宙人としての強みの出し方を理解しているというか(笑)。
  • TikTokでバズる前に長い活動期間があるので、その間にゆるキャラみたいな活動をしたり、VTuber的な活動をしたり、いろんなところで長らくぼっちぼろまるとして生きてきたからこそ、という点も大いにあると思います。
  • バンドマンであり、キャラクターであり、宇宙人であり……知れば知るほど、規格外な感じがしますね。
荒川さん
  • 僕も最初はちょっとイロモノというか、変わったアーティストみたいな認識だったんですけど、もう今や音楽業界のド真ん中にいるような気もします。ポップで、ロックで、ボカロPで、YouTuberで、VTuberで、インフルエンサーで。この時代に押さえておきたいことを全部押さえちゃってて。
  • これがメインストリーム的な?(笑)
荒川さん
  • うん、これがメインじゃなくてなんなのって(笑)。好きすぎて冷静な目で見れてないだけかもしれないですけど!
  • いや、分かります! でも、よく見ると曲のタイトルも歌詞のフレーズもけっこう秀逸じゃないですか。そもそも「シン・タンタカタンタンタンタンメン」って、なんで中華がテーマなんでしょうね。
荒川さん
  • 「タンタカタンタンタンタンメン」は、メジャーデビュー前の曲ということもあって詳しくは聞いてないんですが、ぼろまる君曰く、坦々麺屋さんで坦々麺を食べてたら“タンタカタン、タンタカタン、タンタカタンタンタンタンメン”って頭の中で流れはじめたから、すぐ家に帰って作ったって(笑)。
  • サビとかイントロとかからできそうなのに、間奏からできたっていうのは珍しいんじゃないですかね。
  • 間奏からできた曲!類を見ないですね。普通ならサビからできそうな感じですもんね。
荒川さん
  • あとは、漫画を描くような気持ちで曲を書いているっていうのはぼろまる君がよく言っていることですよね。
  • MVを公開したときに、いろんなとこから「あ、私の頭の中とおんなじだ!」っていうコメントが多くて。もちろん、まご山さんの絵コンテ力もあるんですが、MVが公開される前からあの曲を聴いただけで、みんなの頭の中に近い映像がもう既に出来上がってたっていうのはすごいなと。
  • まさに漫画を読ませているということですよね。
荒川さん
  • 普通、曲とか聴いてても、人によって思い浮かべてるものってなんとなく違うことが多いと思うんですけど、それが一致してる。そこが本当にすごい曲なんだと、世間の反応を見て思ったりしました。
  • あとは、BUMP OF CHICKENの曲にも強い影響を受けてるって言ってましたね。ストーリーのある曲作りという意味合いが強いと思うのですが、やろうと思っても簡単にできるものではないですからね。本当に宇宙人って凄いなと思います。
  • 最後に、今後のビジョンや抱負などはありますか。
荒川さん
  • “2度あることは3度ある”といいますし、まずは3回目のバズを起こしたいですね! あと、一ファンとして見たいという意味では、フェスとか大きなステージに立つ姿を見たいです。ぼろまる君のつぶらな瞳とロックなパフォーマンスを多くの人に見てもらいたいです!
  • 「ぼっちのうたI」収録楽曲はもちろんのこと、過去の楽曲も素晴らしいものばかりなので、多くの人にぼっちぼろまるの楽曲が届くよう頑張っていきたいです。
THE FIRST TIMES 編集後記
  • 「シン・タンタカタンタンタンタンメン」のインタビュー、とても新鮮でワクワクする内容でした。
  • TikTokの活用やぼっちぼろまるさんの宇宙人的センス、そしてアニメーターの個性が詰まったMV。
    チャイニーズガール旋風の裏側にはさまざまな想いがあり、何よりもスタッフも含めぼっちぼろまるさんに関わった全員が、音楽を楽しんで制作に向き合っているのが印象的でした。
  • 直近では「パカパカバカリ」という楽曲もTikTokで火がつき始めています。
    もしかすると、次にヤバイ魔法にかけられるのはあなたかも……。
    これからも、ぼっちぼろまるさんの地球侵略から目が離せません。
  • 次回もお楽しみに!

PROFILE

荒川 護
2019年ソニーミュージックグループ入社。音楽配信マーケティング業務などを経て、2022年よりソニーミュージックのSNS特化型レーベル「FUNSUI」に参加。現在はぼっちぼろまるのA&Rを担当。